風景のある図鑑 25

風景のある図鑑


「 燐 : phosphoros 」


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燐は、原子番号15、化学式Pで表される元素です。

燐は錬金術の実験の副産物として発見されたと言われています。
錬金術は、金を作り出すための学問です。卑金属を金に変えるために黄色い色をつけるということを考え、人体から出る黄色いもの、尿について研究した錬金術師がいました。彼は大量の尿を蒸発させ、残留物から暗闇で青く光るものを見つけました、それが燐でした。

燐はギリシャ語でPhosphoros、光を運ぶものという意味があります。
黄燐は発火点が約60°C、空気中でも徐々に酸化し、青白い光を発するのです。


この燃えやすい性質から、燐はマッチの発火具として用いられてきました。
かつて人々は火打ち石や錘等で火をつけていましたが、燐の発見とマッチの発明により、火を制御できるようになったと言えるのです。

燐は発火しやすく有毒な物質ですが、有機生物の生存には欠かせないものです。
燐は、DNAの骨組みを構成し、細胞にエネルギーを供給するATPという化合物の構成要素です。
骨や歯を形作る重要な要素でもあります。
有毒で燃えやすく暗闇で光る「燐」がなければ、生物は内部から崩壊してしまうのです。








「 オイラーの多面体定理 : Euler’s polyhedron theorem 」


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オイラーの多面体定理は、多面体の面、辺、頂点が互いに関係し合っていることを表す定理です。
ある多面体の、面の数をF、辺の数をE、頂点の数をVで表した時、それぞれの個数が

F−E+V=2

という関係になります。
例えば、立方体の場合、6つの面、12の辺、8つの頂点を持ちます。そのため、

F−E+V = 6-12+8 = 2

となります。
これは正20面体でも、サッカーボールの切頂12面体でも、球体でも同じ「2」となります。
(計算してみてください)



では、この多面体定理は、どんな立体にも当てはまるのでしょうか?


ここで例えば、絵の額縁を考えてみましょう。
図右上のような立体は、F=16、E=32、V=16となり

F−E+V = 16-32+16 = 0

となります。2ではなく、0となってしまいました。
F−E+V は不変の関係ではないことがここでわかりました。
では、F−E+V の値が違うことにどのような意味があるのでしょうか?

それは、トポロジー的な違いです。
F−E+V=2となる立体は、立方体でもサッカーボールでも、単純化するとすべて球体にすることができます。トポロジー的に同じ図形であると言えるのです。しかし、F−E+V=0となる額縁は違います。これは単純化すると一つの穴の空いたドーナツのような、「トーラス」という図形になります。

この単純な公式から、普通の数式では表しきれない、穴があいていたり、ぐにゃぐにゃしている立体を、単純な数式で表現することができるようになったのです。立方体と額縁が「なんとなく違うもの」ではなく、「トポロジー的に違うもの」であることをはっきり表現できるのです。

そして、もっと複雑な図形、もっと複雑な結び目、などの分類を進めることができるようになってゆくのです。

(この F−E+V は、 eiπ +1=0 に次いで、2番目に美しい定理であると言われています。)