七色の消失点

第8期(2013年4月-5月)

 親から子へ、親から子へ、また親から子へと、その逃れがたい性質は、一族につらなる者たちの血潮の中に受け継がれ、ついには歴史の最後の一瞬にたどりつく。

 誇りをいだく美徳もあれば、捨て去りたい呪縛もあった。激情と孤独にからめとられやすい血に翻弄されながら、その業を次の世代ですこしでも減じようと、もっとも傷つき、痛みを負ったものについて、それぞれが手と心を尽くしてそれを昇華しようとした。

 祖母は夫婦の不仲という業を断ち切るために力を尽くしたが、その代償として娘ふたりの心をつぶし、親子の不理解という業を残した。

 母は親子の業を繰り返すまいという誓いを立てて子を救ったが、自分の妹が母親につぶされるのを助けず、母の妹もまた姉がつぶされるのを助けなかったため、兄弟姉妹の無関心という業を生んだ。

 もっとも若い世代であるふたりの孫にとって、互いの存在は、人の心をつぶしにかかる祖母と戦う共闘者だった。母の世代でありえたはずの道、しかしそうはならなかった道を、孫たちは選んだ。

 彼らは休日の朝に、庭の手入れについて話すかのように、われわれの代でこの業を解消しよう、と話し合う。

 おそらく彼らも、なにかを代償にするだろう。眠っていた業がふたたび目をさますかもしれないが、それは続く者にゆずるしかない。ひとつの世代ができることは、限られている。

 そうしていつか、記憶を刻んだ羊皮紙が歴史の強風に吹き飛ばされ、七つの色をした憎しみと嘆きと愛が、消失点のむこうへあとかたもなく消えるときを待っている。
 


 観測しうる世界の周縁を、衛星のように回る人びとのことを書きたいと思った。たいていのことは本当で、たいていのことは架空である。

 最後に、一族の歴史と業にまつわる物語を集めた。とくに気にいった作品には*印をつけている。それではまた、どこかの空白で。

・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』*
・トーマス・ベルンハルト『消去』*
・ウィリアム・フォークナー『アブサロム、アブサロム!』*
・鄭義『神樹』
・中上健次『枯木灘』
・シェイクスピア『リア王』
・ソポクレス『オイディプス王』
・アレグザンダー・ウォー『ウィトゲンシュタイン家の人びと』