ぼくが生まれ育った村は12軒しか家がなかった

第2期(2012年4月-5月)

 
雪が降り積もった白銀の山々が
月明かりに照らされて
まるで昼間のように遠くまで見える
雪に光が反射して空もまた明るい
とても幻想的な風景だった
煙草と冷たい空気を吸いながら、いつも窓から眺めていた

同じくらい好きな初夏の緑
陽射しにキラキラと揺れる木々はとても美しく
上京してからの数年間
山が恋しくて仕方なかった

村の特長は自然が溢れかえっていることと、人の少なさだ

ぼくが生まれた村は当然ながら子供も少なく
いつも一人遊びをしていた
キン肉マン消しゴムで正義軍団と悪者軍団をつくり空想遊びをしたり
自分で宝を隠し自分で宝の地図を書き自分で宝探しをしたり
お手製ロールプレイングゲームをノートで作ったり
数少ない近所の友だちとは
木登りをしたり
秘密基地を作ったり
ママゴトしたりとそれらにまつわる様々なエピソードが思い浮かぶ

ただ、不思議と村の大人たちの思い出は
薄暗い靄がかかった悪い夢のようなものが多く
いま考えると大変な生活をしていた人もいたんだと思う

なんだか
ぼくにとって
家族の思い出と村の思い出は、別もののように思えてくる

数年前、まだ祖母がぼくを覚えていた頃
写真展のために家族写真を撮った
テーマは故郷
ぼくは場所ではなく家族のいる空間こそが故郷であるとした

両親が村を離れ少し栄えた町に越してから、ぼくが村に訪れることはない

今は数軒しか家はないらしく
村の名前もなくなってしまった

なぜか近ごろ村の風景が頭に浮かぶ
山の中に点在する小屋のようなひっそりとした家
昔話に登場しそうなやせ細った老人
細く曲がりくねった坂道
生い茂った草木
ちろちろと流れる小川
鳥たちの囀り
山の音、山の匂い
脳裏にちらつくのは子供のぼくが見た風景

無性に撮りたいと思う