きもちわるい鳥の月曜日

第3期(2012年6月-7月)

石油王は、23歳のときに石油を掘ることをやめてしまいました。
鳥が好きだったからです。石油を掘っているときには感じられない心からの喜びを、鳥を観察しているときには感じられました。
だからこれからは、お金を儲けなくてもいいから、鳥を集めて暮らそうとおもって、「おいしい島」にやってきたのです。

石油王のおかあさんは、3代続く隣町の石油王の家から嫁いできた箱入り娘で、親戚縁者はすべて石油を掘っているので、息子の気持ちが理解できませんでした。
息子は頭がおかしくなってしまったのかもしれないと、占い師のところやお祈りをしてくれる人のところや、世界の高名な宗教家のところを訪ね歩きました。
最後には自宅から1万キロ以上はなれた日本の京都の瀬戸内寂聴さんの所にまで、訪ねていったほどなのです。
それでも、息子は鳥を集めるのをやめません。
「わたしは、お前みたいな息子を持ったことが一生の汚点なのですよ。おなかを痛めておまえを産んだのはおかあさんなのですよ。息子よ、少しおかあさんの言うことをきいたらどうですか」
おかあさんは、泣き出しました。
「そろそろくるぞ」と石油王は思いました。
おかあさんは、感極まってくると、石油王に必ずいうきめぜりふがあるのです。
それを聞くたびに石油王は嫌な気持ちになるのです。
石油王は、心の中で身構えました。
涙を流しているおかあさんは、石油王の顔をじっと見て、いいました。
「わたしはおまえを帝王切開で産んだから、おなかにざっくりついた傷跡のせいで、ビキニが着れなくなったし、おまえが鳥のせいで頭がおかしくなったから、おかあさんはあちこち高名な宗教家を訪ね歩いた結果、日本の京都で尼さんになりました。ブロンドの自慢の髪を切り落としてね。おまえのおかげで体に傷はついたし、宝物の髪の毛も失ったのよ。だから、息子よ、おまえもわたしのために自分の何かを一つぐらい犠牲にするべきでしょう」

目をつぶっておかあさんの言葉をやり過ごそうとしていた石油王は、いつまでたってもおかあさんの声が聞こえてこないので、うっすら目を開けました。
そのとき、石油王の目に飛び込んできたのは、きもちわるい鳥が、おかあさんの言葉を捕まえて口にいれ、ペッと吐き出しているところでした。
「あっ」
石油王はきもちわるい鳥のところに駆け寄り、地面に吐き出されたつばまみれのことばを広げてみてみました。
「やっぱり。鳥がたべたのは、わしが聞きたくないおかあさんのことばだ。鳥は、わしが家来を苦しめようとしたことばも、おかあさんがわしを苦しめようとしたことばも食べてくれるのか。でも、わしがきもちわるい鳥を焼いて食べるぞと言ったときの、わしそのことばを食べて、なかったことにしなかったのはなぜなんだろう……」
石油王は考えました。そしてはっとひらめきました。
「そうか、自分にむけられたいやなことばは、おいしくないことがわかっているから鳥は食べないのか。だから声を消すことができないのか。なんてかわいそうでかわいい鳥だろう」
石油王は鳥のことが好きになりました。そして、鳥を許してあげることにしました。
「仲直りのパーティをしよう」
と石油王はいいました。
自分の言うことを聞かないことにあきれたおかあさんは、UFOにのってかえっていきました。

ねこは、お祝いにおそばを打とうとおもいました。
「こう見えてぼくたち、東京ではちょっと知られたおそば屋さんなんです」
そういってねこは、お屋敷の中の未来的なキッチンの中に入っていきました。
必要な材料を、備え付けのスピーカーにむかって話すと、調理台の上に材料が現れるのです。
「そば粉と、ねぎと、わさびと、のりと、それから、だしをとる鰹節おねがいします」とねこはいいました。
調理台の上に、あっという間に材料が揃いました。
みんながテーブルについて待っているのですが、ねこはなかなかおそばを持って現れません。
「どうしたのだろう遅いなあ」と、鳥と石油王と家来たちはキッチンに様子を見に行きました。すると……。
ねこは、だしをとる鰹節をおなかいっぱいつまみぐいして、ぐっすり昼寝をしていましたとさ。

おしまい。