終わらない物語

第9期(2013年6月-7月)

突然不可解な音に目が覚め起き上がった。
部屋は明るい。けれど外はまだ暗いみたいだ。
どうやら机の上のケータイが鳴っていたらしい。

光っているケータイを見る。

「メール1件」

しかしなぜだかメールを開くことができない。
なんでだろう。どうやらバグってしまったようだ。

ふと気になり
部屋の時計を確認する。

「午前4時04分」

まだ3時間しか寝ていないらしい。
ついさっきまで寝ていたというのに
頭が覚醒してもう一度寝れるような雰囲気ではない。

しかし電気も付けっぱなしで寝てしまっていたとは、
着ていた服はベットの脇で無造作に脱ぎ捨てられている。

昨日の出来事を手繰り寄せる。

確か昨日は2人でお酒を飲んでいた。
そして満員の終電に乗って家に帰ってきた。

誰と飲んでいたか
どこで飲んでいたか
どうやって帰ってきたか
しっかりとした足取りで帰っている自分
ちゃんと覚えているのにその断片の記憶が曖昧だ。

どうやら自分が思っていた以上に酔っぱらっていたようだ。

でも最後に行ったカラオケはとても楽しかったな。

自分が歌った曲は覚えているのに
歌っていた曲は覚えていない。

ただ一曲、最後に聞いたあの曲を除いて…。

昨日の楽しかった記憶と
今の気分のギャップが大き過ぎて少し戸惑う。

横になっても寝れそうにないので
僕は諦めてベットから出てベランダでタバコを吸うことにした。

——最後、
なんであんなことを言ってしまったのだろう。

全く意識はしていなかったのに
最後に聴いたあの曲で

僕は気持ちがいっぱいになり、
つい「好きだ」と告白をしてしまった。

お酒が入っていたにせよ、
よくあんなことを言えたものだと
冷静になった自分が振り返っても思う。

結局、返事は聞けなかったな。
また明日、そのことは聞いてみよう。

ぼーっとベランダから外を眺めていると
ふとなにか違和感を感じた。

なにかが違う——。

見ている景色はなにも変わっていない。
しかし、なにも音が聴こえない。
自分の耳を疑い声を発してみる。
大丈夫だ。自分の声は聴こえる。

なのに

それ以外の音はなにひとつなかった。

怖くなって部屋に戻るとケータイの画面が光っていた。
そこには先ほど開けなかったメールの画面が映し出されていた。
そこに書かれていたものは日本語でもなければ外国語でもない見た事のない文字。

一体どうしてしまったんだ。
なにかが変わってしまった。

もと居た世界とは違う世界。
きっと夢に違いない。朝起きればきっと——。
そう思いながら僕は再びベットに就くことにした。