夏の溶かし方

第10期(2013年8月-9月)

はい夏終わった! 秋だ! 絶対秋だ! だってもう9月も終わりだし! 
自分にそう言い聞かせて、無理矢理keisuke kandaのカーディガンを羽織る日々を過ごしています。

この原稿を書いている今となりで仕事をしている先輩は、夏が一番だって言う。1年中夏が良いって言う。彼のあらゆるところを尊敬しているけれど、どうしてもそこだけは共感することができない。私は寒いのが好きなんだもの。大きめのコートを着て厚手の靴下履いて、マフラーを鼻が隠れるくらいにぐるぐる巻きにする。衣類に全身を覆われているのを想像するだけで、とても愛おしい。寒い日の乾いた空気が好きだ。そこに熱い珈琲があれば尚良い。

ここ数年は9月の終わりまで暑くって、秋を体感しきらぬうちに冬になってしまう。日本にはせっかく四季(四季という字を見るたびに美しい字だなと思う)があるというのに、なんだかもったいないなと思う。
そんなことを考えているうちにどうしても夏をちゃんと終わらせたくなって、夏休みの最後に予定をひとつ、無理矢理入れようと思った。早速指を走らせる。

「夏を終わらせるために、ただの思い出づくりしませんか」

何の迷いもなく、同じ地元で育ったふたりの男子を誘った。どうしてもふたりがよかった。彼らも私と同じで20歳なのだけど、子どもっぽくて正直で瑞々しいから、「男子」という呼び方がよく似合う。

「うん、しよう」
「いつにする?」

ああ、最高だ。このテンポの良さ最高だ。ふたりを誘って良かった。
ひとりは大学の陸上部、もうひとりは料理人をしているため普段なかなか予定が合わないのだが、今回は奇跡的にばしっと合った。この時点で既に感動していたし、楽しくなる予感しかしなかった。
私はクラブイベントのような大人数でワイワイガヤガヤといった遊びが苦手だ。遊びは遊びでも、少人数でじっくりと遊ぶのが好きなのだ。その方がちゃんと会話ができるから。
過去を思い返せば、友人と外ではしゃぐという遊びをあまりしたことがない。なんだか急にそういう遊びをしたくなった。

「どこいこっか」
「山登ってみない?高尾山」
「いいね。でも俺らの場合登らずに麓で語り合ってたら一日が終わりそう」
「確かに」
「確かに」
「じゃあ川は?多摩川、行こうよ」
「それだ! 石投げて水切りとかしてさ」
「ソラニンごっことかしてさ」
「芽衣子さん役ハマるやついねぇよ」
「いやまず種田役でさえハマんねぇよ」
「だな」
「だな」
「レンタカーで行こうよ。ひさぼーのことトランクに突っ込んだりしてさ」
「うんちょっと待って」
「れんはアコギ持ってきてよ」
「えー重い」
「なんか言った?」
「持って行きます」
「かずへーは写真係な」
「良い感じに撮れよ〜」
「カメラ水没させることを目標にするね」
「最高! でも免許持ってんのれんだけだから運転手頼むことになるよ」
「となるとれんはお酒飲めないな」
「嫌だわ。おとなしく電車乗ろ。小田急って良いじゃん」
「うん」
「うん」

20歳の男子の会話って、だいたいこんな感じ。
それぞれの持ち物を決めて、多摩川で遊ぶことにした。夏を終わらせるための、ただの思い出づくりが始まる。

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予定日の前夜、3人とも逸る気持ちが押さえられなくなって、多摩川から近いひさぼーの家に集合した。
れんがギターを弾いて、ひさぼーが歌った。私は楽器を扱えないので、安い梅酒をちびちびと飲みながら静かに聴いた。良い歌だった。

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朝はゆっくりと目覚めた。家を出た瞬間から(というか家にいるときから)はしゃぎ、ゆっくりと多摩川へ向かう。途中寄った喫茶店で、今年初めてのかき氷を食べた。夏を終わらせるための日にふさわしい展開だなぁと思った。
和泉多摩川駅についたなら、コンビニへ直行する。たくさんのビールに息抜きのサワー、ここは子どもっぽくポテチを選んでみたり、少し背伸びをしてあたりめなんかもカゴに入れてみたりする。ブルーシート? そんなもの男子には必要ない。うんうん! いいね! この簡単さ。

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ここからは男子の豊かな遊びが始まる。テキストは必要ないと思う。

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当日のことは、「楽しかった」以外に上手く感想を述べられない。というか、正直あまり覚えていない。現像した写真を観て、「あぁこんなことしたっけな」の繰り返しだ。本当に楽しかった日っていつもこうで、それは感動したライブの感想を上手く言えないのとよく似ている。多分これはこれで合っているんだなとも思う。(とまぁそれっぽいことを言ってみたけれど、単純に語彙の欠如が問題だということはおおめにみてほしい)

こうしてようやく、夏と決着をつけることができた。ふたりのおかげで、シンプルでわかりやすい、良い儀式になったと思う。
これが私の、夏の溶かし方です。

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二ヶ月間の当番ノートも、今回が最終回となります。
誘ってくれた管理人の朝弘さんと、推薦してくれた方(観てくれてるかな)、そして読んでくださった方々にいっぱいの感謝です。皆さんにおいしいチョコレートを渡したい。

この当番ノートのおかげで、大学生の無駄に長い夏休みがキリッと引き締まったように感じます。苦手だった夏も、少しだけ好きになれました。そして、こんなにも緊張感のある水曜日を連続で味わえたのは初めてです。これでたるむことなく後期の授業を頑張れそう(今日の授業は、目が覚めたら教室に人がいませんでした)。

私はこの9つのコラムを通して、少し遠回しに自己紹介をしたのだなぁと、今になって気がつきました。
家族はこうだ、休日の過ごし方はこうだ、好きなものはこうだ——また自分の話かよ、と押し付けがましく感じた方もいることと思います。
20年ぽっちの人生じゃ、何かを批評できるほどのバックヤードが全くないし、遠い場所にあるものことや未来の話をするにはボキャブラリーが足りなすぎます。なので結局は思い出話。自分の引き出しを大きく開けてお見せすることしかできません。
だけれど、これらは今しか書けないものなんだなぁと思うと、それはそれで良しな気がしてきました。明日には考えが180度変わっているかもしれないし。そんなもんです。

「小春日和」は冬の季語だって教えてくれた先生のことを思い出しています。その先生は、「四季のなかで春が一番好き。でも春は寂しい」と言いました。
私も春が好きだけれど、ハッピーなものことに溢れたイメージを持っています。なのにその春が寂しいだなんて、素敵だと思いませんか。そして、冬に春という美しい文字を使えるだなんて、すっごく素敵だと思いませんか。こういうことをひとから聴くたびに、わくわくして仕方がありません。

ついつい長くなってしまいそうなので、このあたりで当番ノートを閉じるとします。続きは会って話しましょう。
あ! 最後にこれだけ。どっちがひさぼーでどっちがれんかは、想像にお任せします。(言いたかっただけ)
これからのアパートメントも、読者としてたっぷりと楽しませて頂きます。ありがとうございました。

木村和平