終地点

第10期(2013年8月-9月)

31

「 あたしのこと 苦手になりました? 」

ひとりになるのと、ひとりにされるのはちがうこと。
あのこのことば。

目に見えないものを 信じすぎている。
目に見えないものに 夢をいだきすぎている。
感情は、痛みは、
悲しみは、よろこびは、
愛情や、絶望は、魂は、
どこからうまれ、どこへきえてゆくの?

すべてが愛ということばに落ちついてしまうのはなぜ?
キスのひとつで本当に物語はおわる?
世界が変わる?

思考は屁理屈になってしまうのだろうか。
甘えているだけになってしまうのだろうか。
遺伝子のひとつひとつ小さくしるされ、
体中にちりばめられた本能が、
唯一の答えになりえてしまうのだろうか。

だとしたら、あたしはいったいなんのためにあるのだろう。

触れてようやくわかる。目で見たってわからない。知った気になっているだけ。
本当が、自分のものになる。
温度がわかる。重みがわかる。
あたしの手のひらのなかでしなだれる魚いっぴきが、命であったことに気づいたように。
それを食べて生きていたのだと気づいたように。
知らぬ間にあたしの肉体をつくっていた小さなものと、あたしが選んで肉体としてきたものと、
意思と記憶と思考とが、まざってようやくあたしとなった。
目に見えないとおもっていたものが、急に、ぱっとあらわれたりする。

死へと向かう途中で、死んでいる途中で、
いつ光が見えなくなるとも分からないのに。
自分の重みだけを本当として生きている。

どこへいこうと、どこにいようと、あたしはひとりだ。
なんにもいらない。あたしだけだ。あたしだけ。あたしでしかない。もうそれでいい。
終わると思っていたけれど、変わると思っていたけれど、
それがうれしくったって、かなしくったって、
忘れたくないものを忘れないために 知りたいものを知るために、
きっと、さいごまで。