あの日からのカルチュラル・スタディーズ (2)

第13期(2014年2月-3月)

先週、久しぶりに東京を訪れた。幾つかの打ち合わせと取材の合間に、展覧会を観て周った。小さなギャラリーを中心に、新宿、六本木、銀座、渋谷と10程度の展覧会を観る事が出来た。(下記に展覧会のリストを記しておく。何かの参考になるだろうか。)こういう言い方は、出来れば使いたくないのだけれど、良いなと思った展覧会と、そうでなかった展覧会が半々と言った感じだろうか。しばらく良いと思った展覧会について考えてみる。それらの展覧会の何を見てどんな風に感じ、良いと判断したのだろうか。幾つかの良いと判断したそれらの物に共通項はあるだろうか。

表現方法について、色彩について、作品量について、素材について、作者について、などなど。色々と考えてみたけれど、なかなか共通項を見出せない。それならば、良いなと感じなかった展覧会についてはどうだろうか。これについては、割とすぐに共通項を挙げる事が出来た。また、あまり使いたくない言い方になってしまうのだけれど、良いと感じなかった展覧会は、観ながらどれも同じ様な事を考えていた。

「良く分からない。」

美術だって音楽だって、芸術は理解出来るとか出来ないとか、そういう物ではなく、ただ感じれば良い。感じて好きか、そうでないか、それで十分だ、と言われる事がある。僕も、その意見に何の反論もない。実際に、全く理解は出来ないけれど、その場を離れられなくなる様なとてつもないエネルギーを感じる作品に出会う事がある。そんな作品やそれを作った作者の前に、僕はただひれ伏して生きてきたと言えるかもしれない。

しかし大抵の場合は、エネルギーを感じる前に、「あぁ、良く分からないな。」それで終わってしまう。この作者が何故多大な労力と時間を費やし、これらの作品を作らねばならなかったのか。その強い衝動の根幹には何があるのか。僕は何にも触れることが出来ず、その場を去る。生まれたのは、決定的な断絶だけ。

東京を訪れた際にもう一つ感じた断絶。それは、原発を巡る考え方の違いを目の当たりにした時の事。両親が東京在住で、東京では彼らの家に滞在していた。そして、2日目の夜に原発の話になった。ここで詳しく書いている余裕は無いのだけれど、僕は基本的に原発の再稼働には反対、廃炉に全力を注ぐべきだと考えていて、うちの父親は、出来るだけ早くに安全な原発を再稼働し、代替エネルギーを確保していきながら、徐々に原発への依存度を下げていくべき、だと考えている。

話はどうどう巡りを続けた。僕達親子は、原発を動かすべきかどうかという問いを、それぞれに全く違った理念と基準で出来た天秤にかけていた。僕は、原発を動かすべきかどうかという問いに、生命倫理と哲学の測りでもって答えようとした。一方父親は、その問いに、経済と科学技術の測りでもって答えようとした。どちらが良いか悪いかをここでは論じないし、そんなに簡単な話でもない。しかし、そこには決定的な断絶があった。それだけは確かだ。

そもそも、人間一人ひとりは孤独な存在だという事を、僕は芸術を通して学んできた。絵を見た感覚、音楽を聴いた感覚を、どんなに言葉を尽くそうとも、それを自分以外の誰かと正確に共有する事は出来ない。ましてや作者と同じ感覚を持って作品に触れる事など到底出来ない。芸術の真髄に近づく道程は、孤独を極める事と似ているかもしれない。それでも、素晴らしい事に、絵や、音楽や、詩や、ダンスや、彫刻は太陽の暖かな光の様に、全ての人が等しく孤独であるという事を、優しく受け入れてくれる。

敬愛する作家のスーザン・ソンタグがあるシンポジウムの中でこんな事を語っている。

”「孤独は連帯を制限する。連帯は孤独を墜落させる」と言いました。ときによって、一方の必要が他方より強くなり、その入れ替わりが繰り返されるわけです。人間としての生き方を充分にするには、孤独も連帯も長い持続のなかでとらえるべきで、私的人間関係でも公的行動でも、それを可能にする方法を見つけなければなりません。”

その方法をスーザンは知っていたのだろうか。彼女が死んでしまった今となっては、それを聞く事は出来ない。ならば僕自身、彼女の問いに答えられるだろうか。例えば、絶望の孤独の中で生まれた芸術が、断絶された個々の間に連帯を生む事を保証してくれるだろうか。

ここまで考えてみて、ようやく一つ分かった事がある。恐らく僕はある程度の深さを持って、孤独を知っているし、受け入れる準備が出来ている。でも、連帯については考える事も、実践する事も足りていない。そこに何かしら壁の向こうへと進む、大きなヒントがある様に思った。

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UNDER THE BOX, BEYOND THE BOUNDS / さわ ひらき
東京オペラシティアートギャラリー

project N / 大田黒衣美
東京オペラシティアートギャラリー

風の演奏会 / 松本秋則
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Affinity / Wolfgang Tillmans
Wako Works of Art

Girl with Hands / Michael Borremans
Gallery Koyanagi

羽化 / 指田容史子
Oギャラリー

ROUND2014 / 久後育大, 渡辺愛子
GALLERY NATSUKA

王道か異端か。/ 重野克明, 山城有未, 小野耕石
養清堂画廊

Seleced Trees / Benjamin Butler
8/ART GALLERY/Tomio Koyama Gallery