田の草。

第15期(2014年6月-7月)

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六月の朝。 
田んぼで、蜻蛉が羽化する。

羽根に、朝露。

一秒一秒、スローモーションのように広がる、世にも美しい羽根。
細胞からしたたるような、まばゆい水滴が乾くまで、彼は飛び立たない。
稲の葉を宿り木に、ガラス細工みたいな羽根を広げ、数時間、待つ。

息を止めて そっと近づき、自然が生み出した ‘宝石’ のような生物に見惚れる。

雑草 7285
ちょうど、蜻蛉が生まれる頃、田に、草が生えてくる。

上の写真、手でつかんでいる植物が、雑草である稗(ヒエ)と、細いのは、赤玉。
それ以外は稲。

疑似疑態。
農家でさえ、見分けがつかないほど。
生きのびるため、植物が身につけた 知恵。

こうして、稲が吸うべき土の養分を奪いながら、雑草たちは賢く育つ。

雑草つかむ 7292
これが、雑草の根っこ。
たかだか一ヶ月で、この根張り。敵ながら、立派。
これぞ、生命力。

7513-1200 草とり宏
雑草の成長を、優しく見守るわけにはいかないので、草とりが始まる。
これは、田車(タグルマ)という、昔ながらの道具。

7514-1200 草とり機アップ
田車の歯の部分。
この鉄の歯で、草を、根っこから引きぬく。

そして、田の中に踏み込んで、緑肥(リョクヒ)にする。

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こうして、ちょっと離れてみると、稲だけしか見えないけれど、
田のなかに足を踏み入れると、そこは多種多様な生物の世界。

わたしたちも、ただの生きもの。
なにかを食べないと、生きていけない。

酸素と、ミジンコと、水。
それだけの栄養で生きていけたら、きっと、この世界はもっと美しいままだろう。

けれど、そうではない。
この稲に実る米を、食べる。
今、すくすく育っている 野菜も魚も豚も、食べる。
電気を使う。トイレも使う。車にも乗る。洗濯もする。

無数の連鎖のおかげで、生きていられる。
私たちが、命をつなぐために、いただいている命に、感謝するばかり。

無農薬が、なんでも素晴らしいわけじゃない。
うちのお米が、日本一おいしいわけじゃない。

育て方は、わたしたちの自己満足。
ただ、それだけのこと。

あなたが たべるもので、あなたの細胞は 形成されていく。

だから、
あなたと、あなたの大切なひとがたべるものに、もっと意識を向けてほしい。

よく食べ、よく生きる。

それは、量ではなくて、質のはなし。

あなたの選択肢が、あなたの生きる世界を作るから。