ねえ,さいごに2回させて

第18期(2014年12月-2015年1月)

2014年12月22日『夜のみんなは』と,
2014年12月29日『とれた左手で腕枕』の,ふたりのおはなし
 
 
 
 
 
もうすぐ2月がやってくる
 
ほかの月よりも少しだけ短い月
 
気を抜いていると,うっかり春がやってきてしまう
 
 
そういうふうに,意識して時間においていかれないようにしたいのに
 
街にはイルミネーションがまだ,ちらほらと光っている
 
急ぎたいのかゆっくり進みたいのか,はっきりしてほしい
 
 
残された電球たちは,
 
給食たべるのおそい子みたい 私もそういう子どもだった
 
たいていの食べ終わった子どもたちが教室を走りまわる
 
男の子たちは,学級ボールをもって校庭に出て行く
 
いっそうホコリっぽくなった教室で,
 
目のやり場に困ったわたしは
 
給食と,にらめっこをして時間をつぶす
 
お皿のうえの料理は,少しも減らない
 
 
 
間引かれたあかりのなかをふたりで歩く,
 
さっき知り合ったばかりの男と歩いている
 
このまま歩いていけば,彼の家に着くのだという
 
それはそうだろうけど,どのくらいかかるのかと質問したら,
 
心配しなくても1月中には着くと言った
 
2月になればこの道も暗くなるけどね,終わっちゃうから、イルミネーション。と言った
 
付いていくことにした
 
 
 
夜に目が覚めた
 
すぐ隣には,男の顔があって
 
そのことは私にとって,よくも悪くもなかった
 
 
 
 
もう会わないんだろうなと思った
 
さっきLINEも交換したけれど、
 
味気ない儀式みたいなものだ
 
連絡をとるつもりもなかったから。きっと彼もおなじだろう
 
それよりもなんだかたのしかったのは、
 
朝。
 
わたしが彼の部屋を出て行くときにさ
 
ねえ、さいごに2回キスしようって言ってきたこと
 
なんで2回なんだよって言ったら
 
だって1回で済んだことないもんって言った
 
なんだかとても困っている顔をしていたのが可愛かった
 
 
 
でもさ,2回したら、3回めもしたくなるでしょう
 
ああ、ほんとうだ
 
だからする前に回数は決めないほうがいいんじゃないかな
 
そしたらきっと2回しちゃうもん
 
ふーん
 
こまったね
 
うん。そしたらまた今度会ったときにしようってことにしたら?
 
あ。それいいね。なんか急に楽になるそれ。
 
よかった。
 
うん、よかった。
 
 
 
 
ばいばい。
 
 
 
寒いのに、わざわざ玄関の前に出てきて手をふって私を見送る
 
ワックスつけたまま寝たからだろう。頭がぼさぼさの寝起きの男が
 
のんびり手をふっている。
 
その手とは対照的な、
 
ぶらんと垂れさがるあの左手は
 
まるで力がはいっていないように見えた
 
まだ、あの手は眠っているんだろうな
 
彼に背をむけ,歩きだした
 
よくわからない場所だったけど,そんなことどうでもよかった
 
1月中には自分の部屋につくだろうと考えて,おかしかった
 
 
キスをする約束をしたのは生まれてはじめてだった
 
もうしないとわかっていたけど,
 
そうなんだけどすごく安心した
 
あの男もそう思っているだろうか
 
 
なんとなく彼を振り帰る
 
 
 
両手で手を振っていた  笑っていた
 
 
 
わたしは何故だか立ち止まって、

彼に見入ってしまった

右手が二往復するうちに

左手はやっと一往復できるかどうか

それくらい、のんびり動いていた

その左手が

あの男そっくりに思えた

彼にむかって、つぶやいてみた

おはよう,左手

 
 
 
P4052562
 
 
 
 
 
 
-あとがき-
 
もうここに連載させてもらうの3回目になったかと思うけど、そろそろ前に書いたやつそっくりのを書いちゃってるんじゃないかっていう不安がでてきました。(酔っ払っておんなじ話を同じ人にまたしちゃうみたいな)結論からいうと、まあそれでもいいやってことになった。どうせ一言一句ぴったりってことはないだろうと思ったし、前のと今回ので様子がかわってたりしたらそれはそれで面白いと思ったし。今回から読んでくれた人もきっといるしねえ。はじめまして、つかにしです。
そりゃ一人でも多くの人に読んでもらいたいなって、やっぱなんとなくは思っていて。アパートメントに月曜に書いてるから読んでねって、いろんな女の子に言った。今回の連載では本当にたくさんたくさん言った。前から友達だった子とか、いっしょに遊んでた子とか、はじめて会った子とかほんとに僕にしては大勢の子に。どう思ったかねえ。あいつキモいとか思ったかなあ。男の人にはあんまり言わなかったけど、なんとなく。
今回は年越しで、12月と1月を担当しました。せっかくだし12月中に書いた5つのおはなしに出てきた人たちが、2015年をむかえてどんなふうになるかなってことで書いてみました。少し変わってたり別に変わらなかったりした。ぼく自身はいまのところ、ちっとも変わっていません。ぼくの場合、変わっていないってことは全面的に悪いことしかないと思うんだけど、まあたいして変わらないやつの変わらないおはなしをまた読んでくれたら嬉しいです。
だからまたアパートメントに誘ってよね、お願い。
今回はね、俳優さんが毎回レビューを書いてくださいました。平吹正名さんという方です。なんかこれすっごい面白かった。なんかね、恥ずかしい感じでニタニタしながら彼の書いてくれたレビューを読んでました。それもぼくのとっても好きな時間になりました。年末のぼくのお芝居もわざわざ観に来てくださって、すこしだけお喋りできたのも楽しかったし。彼のFacebookに行けば、毎回のレビューを読むことができます。読んでみてよ。みんなはどう思うだろう。
あとがき,長いよな。もうこんなとこまで読んでたら日が暮れてしまうだろうな。ここまで辿りついたひと少ないだろうなあきっと。どうせなら文頭にありがとう書いておけばよかった。でもいいや、しかたない。お待たせしました,いよいよ言います大切なやつ。せーのっ、

最後まで読んでくれてどうもありがとう。
それでは、また。
 
 
 
 
ppoi-っぽい-
つかにしゆうた