思春期の私は決して間違ってなかった

第23期(2015年10月-11月)

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初めまして。第23期土曜日を担当する画家の藤森詔子(ふじもりしょうこ)です。
この街で暮らして肌で感じたこと、人と関係を築き暮らしていくこと、なんかをテーマにしながら、油絵を描いています。

夏に開催した個展のがきっかけで、ここアパートで2ヶ月間日記を書くことになりました。

初回の今回は、自己紹介がてら少し私自身のことを書いてみようと思います。

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今でこそ絵で収入を得て暮らそうとしていますが、そもそも何でこうなったか思い返せば、きっかけは簡単な親子の会話なんですよね。

義務教育期間中から筋金入りにお勉強が苦手で、中3偏差値アンダー50で高校受験に挑もうとする私に、母親が「美術だったらがんばれるかい?」と聞いたので、私は「うん。」と答え、安々と推薦で美術コースの高校に進学しました。

まさかそのあと高校卒業前に北海道→東京に上京して2浪、26歳まで学生をやるなんて思わなかったし、単純に「勉強は頑張っても確実にトップ取れないけど、絵だったら頑張ればそこそこぐらいはイケるかなー」ぐらいのノリで。

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「かくかくしかじか」東村アキコ著 集英社

先週、東村アキコさん著の「かくかくしかじか」というマンガを読みました。2015年のマンガ大賞を受賞されているそうです。

著者の自伝の内容なんだけど、地方出身の東村さんが美大受験を目指し、恩師と出会い、学生モラトリアム・下積み時代を経て漫画家として大成するまでの葛藤や情景が描かれています。
私自身も経験した受験時代から現在の年齢を経て、未来まで。

私は、18で上京して絵を習い始めました。そこにたどり着くまでの間に、喧嘩して母親に箸を投げつける事態や、言い合いになってカーテンを引っ張ったらカーテンポールごと落ちてきたり(深夜に泣きながらこっそり+ドライバーで直した)、まあ、どこの家庭にもありそうな典型的な10代っぽいヤツが例外なく家にもあった訳なんだけど、結局は子供に対してかなり理解のある両親で、ホントに感謝してます(;;)

「かくかくしかじか」に登場する先生は、いつもどんな時でも主人公に「描け。」と言い続けます。それを読んだ時、ふと上京した時に習った先生が「ヤバいと思ったら止めるから、それまでは毎日ここに来て描けよ」と言っていたことを思い出しました。たった10年前のことです。

この「描け。」というたった3文字に集約された意味は、ものづくりをする人なら皆分かるんじゃないかなぁと思います。

ものをつくるということは、0“ゼロ”から1“イチ”を創り出す作業。何もない0から1を生み出して、そこに意味や価値を与える作業。もちろん美術史を勉強して文脈を理解し、様々な情報を取り込んで頭で考えることも大切です。が、それと等しいくらいに手を動かすこと、手を動かした痕跡の先に見えてくるものが、1を創り出すにはとても重要だなぁと。
「描け。」は、頭ではなく身体で理解する言葉なんだなと、このマンガを読んで改めて思いました。

元来、私はあまりマンガを多く読む方ではなく(後輩に「せっかく日本に生まれたのにもったいないですよ!?」と言われた。それでも子供の時はコロコロ→ジャンプ→マガジン→ヤンマガ辺りはたしなみ程度に読んでいた。おかげで新人グラビアアイドルとかには一瞬めっちゃ詳しくなったけど。何だろう、今思い返すとやっぱり当時から漫画よりもグラビアとか“本物の身体”の方が興味が強かったんだろうか、、、)、一番影響を受けたのは思春期ストライク14歳の時に読んだ丸尾末広さん著の「笑う吸血鬼」。

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「笑う吸血鬼」丸尾末広著 秋田書店

内容はざっくり言うと、思春期の14歳の主人公たちが、風紀の乱れた学校生活の中で、あるきっかけから異世界に迷い込んでしまう、というような話。
正統派系少年マンガからのもの凄いギャップにドキドキしながら、近所のイトーヨーカドーに4日くらい連続で通って最後まで立ち読みしたのを憶えてる。
結局、これは必ず買わなければいけないと思い(根拠はさっぱりわからないが確信はあった)、4日目に購入。1,600円。中2でマンガにこの値段は高かった。

それでも結果、今のアイデンティティ形成への影響は大きかったし、受験中も構図を真似してみたり参考にさせてもらったし、14歳の先攻投資としてはかなり成功だったんじゃないかと過去に戻ることが可能だったら当時の私に言ってあげたい。

今はその時の2倍生きた訳だけど、思春期の私は決して間違ってなかった。

2015,10,3 藤森詔子