掛け軸と私ができるまで

第23期(2015年10月-11月)

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「FUTURE SCOPE」2015 藤森詔子

 
    
今年の夏の個展に、手作りのある掛け軸を展示していました。

実はこの掛け軸、《手作り》って、絵と表装だけの話じゃないんです。年月を掛けて、和紙から手作りしているんです!
今回はこの掛け軸が出来上がるまでのことをお話したいと思います。

そもそもこのプロジェクトは、私の所属しているARTONE ART STUDIO(アートネ・アートスタジオ)で2011年から始まった「文間楮ー利根町で育てる紙ノ木ープロジェクト」というものです。
「千年先までもつ和紙を作りたい」というテーマのもと、和紙の原料である楮(こうぞ)を、自らの手で育て、和紙を生産するというもの。

現在、スタジオのメンバーを中心に、スタジオの庭で約180株の楮(こうぞ)を栽培しています。
 
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みんなで芽かき中。写真は、一つの芽だけに栄養がいって大きく育つように、枝別れした小さな芽を摘んでいるところ
可能性のある若い芽たちをブッチブチもぎ取っては地面にポイッ
 
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どんな小さな芽だって、デッサン力で鍛えられた千里眼で見逃しません
みんなでガンガン排除していきます
 
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そうするとほら、こんなに大きく成長しました!

 
その後、刈り取り、蒸し、皮剥ぎ、乾燥、の行程を経て新潟の越前門出和紙さん(久保田のお酒のラベルの和紙を作っているところです!)に紙漉きをお願いして、高級和紙にしていもらいます。
ちなみに、この和紙は育てたスタジオの地名を取って「文間(もんま)和紙」と呼んでいます。こうして完成した「文間和紙」を使って、描画、表装を行ったという訳です。

表装には、日本画出身の方や大学講師の方など、沢山の人達の力を借りて制作。軸先の陶器なんて、陶芸家の方に一つずつ手作りして焼いてもらったんです!

完成した掛け軸達は2014年6月に、新潟・越後門出和紙の生紙工房ギャラリーにて展示させて頂きました。

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「文間和紙に描く 20人の掛け軸展─和紙に向き合う・和紙を知る─」展示風景
2014.6/1~7/27 越後門出和紙高志の生紙工房ギャラリー

  
ここは、和紙工房の2階がギャラリーになっていて、壁紙、カーテンなど内装はもちろん、椅子から座布団から、ギャラリー内の全てのものが和紙で出来ていて、和紙で出来たスーツまで!すごい!
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和紙ってすぐ破れそうな弱いイメージがあるけど、収縮して日本の気候に柔軟だし、繊維が複雑に絡み合って形成されてるから、実際はとっても丈夫なんです。
驚いたのは、和紙を撚って作った糸で布を織り(紙布-しふ)、その布で作った法被があったこと。和紙って本当に自由自在なんですね〜。

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搬入の時は茅葺き屋根に泊まり、人生初めての囲炉裏。
囲炉裏の火付けには楮の要らない枝が最適で、煙が出にくくすぐ燃えるのだそうな。そして囲炉裏の煙は、ちゃんと天井から抜ける造りになっているという茅葺き屋根のお家。何と計算され尽くされた設計でしょう。
収穫したお米で餅を突き、食べきれない分は乾燥させて、翌朝に囲炉裏で焼いて朝ご飯。
作物・風土・気候、全てが上手く循環していて無駄が何一つない。和紙もしかる事ながら、日本の暮らしって本当に理にかなってるんですよね。

新興住宅街育ち都会っ子の私には、日本昔話の世界がそのまま残っているようでとても新鮮でした(この感想自体が稚拙っぽくてちょっと恥ずかしい;。。でも、これが今の時代の育てた若者の素直な感想だと思うんだよね)。

北海道と言えど、札幌は人口190万人以上だし、5大都市の一番下に一応ランクインしてるから結構都会。
屋根から雪にダイブもしないし、木彫りのカップでホワイトシチューも食べない。庭にキツネはたまに来るけど、エキノコックス感染の恐れがあるから絶対に接触しちゃダメって小学校の時から教育されてた。だから、北の国からの黒板さんの行為はとっても危険なんですよ。「トゥールルル」ってやつは実際やってもキツネ来ないそうです。
トイレにも暖房が付いてるってのはホント。

新潟と札幌、同じ雪国でも全然暮らしが違うんですね。北海道は開拓が確か明治入ってからだから、まだ歴史も浅いし、そういう理由もあるんだと思う。

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新潟県高柳町のこの上なく爽やかな景色

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久保田のお酒で新潟産コシヒカリのおむすびを頂くという贅沢。
日本人でヨカタ☆

掛け軸
この掛け軸の制作を通して、和紙や地域、日本の文化など、様々な事に触れることができました。
作品と一緒に私も育っているといいなぁ。

2015,10,10 藤森詔子