ロンドンで見えた我が愛国心

第23期(2015年10月-11月)

IMG_9579のコピー

今年の夏、どうしても見たい展覧会があってロンドンに行った。
それは、Victoria & Albert Museumでやっていた「Alexander McQueen : Savage Beauty」

アレキサンダーマックイーンはロンドン出身のファッションデザイナー。
残念ながら2010年に40歳で亡くなっているんだけど、彼の作品はファッション以外の幅広い分野で指示されているとのこと。
森ビルにお店が入ってるから森美術館を見に行った時、通りががかりで何となく気になってたんだけど、調べてはじめてちゃんと知った時、思考がかなり現代美術寄りで、共感できる部分が多かった。

思うに、この対局にあるのがココ・シャネルの気がする。シャネルは第一次世界大戦中において、華美なドレスでギュウギュウに締め付けられていた不便で非経済的な女性達の身体を開放した。ジャージ素材の使用やリップクリームの発明など、実用性を重視して新しい時代を切り開いた。彼女自身も「私はブーム(流行)ではなくてスタイル(定番)を作った」と名言しているし。

まあ話は戻るが、マックイーンのファッションデザインを初めて見た時、ダミアン・ハーストにちょっと似てるなぁと思った。そしたら、やはりダミアン・ハーストの影響を強く受けているとのこと。しかも、2013年にハーストとのコラボストールまで出していて、うわぁー、こんなん買うしかないじゃん!なんて思っていたのです。
「FASHION HEADLINE:マックイーン×ダミアン・ハースト、蝶やスカルが舞う初のコラボスカーフ発売」

彼の洋服は、奇抜でありながらどうしようもなくエレガント。
そして、奇抜で斬新なデザインな一方で彼の発言を見ると「カッティングと仕立ての職人になりたい」と、技術面の事を言っていたりする。
なぜこんなアンビバレントな要素が絶妙なバランスで成立しているんだろう?どんな街で育ったんだろう?
気になる気持ちがどんどん大きくなる矢先、彼の故郷ロンドンで回顧展が開催されると知って、遠路遥々行ってみたというわけ。

美術館開館1時間前でこの行列…、前売り券買っといて(2ヶ月前)ほんとよかったわ..
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あいにく展覧会の中身は完全に撮影禁止。残念
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幾つかのテーマに分けて展示されている部屋は、壁面、照明、映像、音楽、匂いなどなど、インスタレーションとして世界観を完璧に作り込まれていて、圧倒されてしまった。
本当はコレクションの画像をここで紹介できたら良かったんだけど、著作権の関係もあるので画像貼りは控えておきます。

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結論から言うと、はじめてイギリスに行ってみて、なぜマックイーンのような作品が生まれたのかその理由がクリアになった。
この国では、伝統文化や形式を非常に重んじる。例えば、ロンドンバスのデザインは100年も変化はなく、建築法で古い建物を取り壊すことも禁止されているのだそう(内装を綺麗に直してずっと使っている)。また、バーバリーのコレクションを見ていたら、毎年同じようなデザインのものが少しだけ変わって発表されていて、ガラッと変わることはあまりないんだよね。ただ、質は一級品。イギリスって、新しいものに飛び付かず質の良いものを長くずっと使う文化が強く根付いてるんだ。

その一方で、反骨精神なのかパンク文化の発祥の地でもある。
そして1997年のマックイーンのインタビューを見ていたらこんなことを言っていた。
「ファッションは自分の経験からできている。ストリートのセックスやドラッグの経験からファッションを作ってる。」
彼は同性愛者でパートナーの男性と挙式を上げている。そんな感性も作品に影響を与えているんじゃないかな。
アレキサンダー・マックイーンのファッションやショップデザイン(建築)、展示方法に至るまで、そのバックグラウンドを覗いたことで全てが繋がった。彼は、母国や自分自身のアイデンティティをとても大切に扱っているんだ。

納得できた頃、疑問は自分に跳ね返ってきた。
じゃあ、私が日本人の女性として生まれて、大切にしたいアイデンティティって何だろう?私が大切に継承していきたいこの国の良さって何だろう。。

ただ言える事は、私は今暮らしているこの街が好きで、「いま」、「ここ」で感じた感触や気持ちを大切に絵を描きたい。
新宿や銀座の街並みを歩いている時、人に押されてぶつかっても、ナンパやキャッチや、雑然とした駅の改札もラッシュアワーも、下水の匂いも、思春期の若者や、訳ありそうなカップルや、公園の変質者や高架下の浮浪者、、、そんな景色も全部含めて、私は今暮らしているこの街のネオンや人々や雑踏が、大好きなんだ。

2015,10,24