モ・クシュラの活動をふりかえる

第33期(2017年6月-7月)

これから個人出版社を始めようと思っている方に、アドバイスになるようなことはなにかあるだろうか。

事前に想像すべきことがあるとしたら、数千冊の本の嵩かもしれない。出版社で働いていたときにもその物量は見ていたが、いざ手元に本が納品されると、これはなかなかすごい量。個人出版社をしている皆さん、どうしているのでしょう。

私の場合は、オフィス利用している「さくらワークス〈関内〉」(横浜・関内)というシェアオフィスの一角を月1万円で倉庫借りした。ちなみにオフィス利用費が月25,000円なので、なんと月35,000円でオフィスと倉庫スペースを借りていたことになる(6月現在。来月、新しい事務所に引越し予定)。

さしたる計画性もなく個人出版社をつくろうという気にさせてくれたのは、「さくらワークス」というシェアオフィスに出会えたことが大きい。「さくらワークス〈関内〉」は、まちづくりをミッションに活動するNPO(横浜コミュニティデザイン・ラボ)が運営していて、強固な経済論理からすれば芽を出す前に紡がれてしまうような個々の想いを育んでくれるような場所だ。そしてこの場があるのは、「創造都市」を掲げる横浜が、まちの活性化を生み出すための文化助成をこの街に行っていることが下地にあり、二重、三重に誰かが用意してくれた受け皿に、思いがけず出会えたことは幸運だった。

さて、具体的に書籍をつくるとなると、編集は自分に支払う給料の中でやるとして、最低限かかるのコストとしては、装丁費、印刷費、原稿料。このうち原稿料は売り上げ印税(刊行後、売れた本の冊数分の印税を支払う)にしているので、前もって必要になるのは装丁費と印刷費となり、これは本の仕様や冊数によるが80~100万くらい。

この制作費、当初は自分の貯金を切り崩していたが、編集の仕事を受注できるようになったので、そのギャラをプールして自作の制作費に回している。やはりギャラが派生する仕事が入ると安心するし、刺激的な請負仕事も多く、ここしばらくモ・クシュラの活動は請負仕事にシフトしている。

しかし本来は、自社の本を出版し、その本の利益で新たな本をつくるというのが出版社の本来あるべき姿。事業計画として出版すべき年間点数を考えてみると、作る本の定価にもよるが、年に3冊、それぞれの本が2000人の読者に届けば、わたしひとりの生活は回りそうだ。

が、いま私の手元にある企画は遅々として進まず、振り返れば、最後に自社企画を出してから、もう1年半が経っている……

市場のスピードに惑わされずに、つくりたい本をつくりたいときにつくるというのが私の理想だが、それに安住しすぎかもしれない。

どなたかへのアドバイスになるようなことがあればと思って書き始めたが、自分を戒めるコラムになってしまった。