ひかりの採集 / 05.処方せん

第37期(2018年2月-3月)

幕をあげます。

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学生とはいえ成人して親元を離れて暮らしてひしひしと思うのが、自分の機嫌を取ることの重要さと難しさについてである。

大人だって不機嫌になる。子どもと同じだ。小学生のとき、担任の先生が授業中に泣いてしまったことがあって、そのときのマセガキ鮃ちゃんは「大人のくせに泣くのかよ」と意地悪く思ったりしたが、今では先生の気持ちがわかる。泣いちゃうよね。大人だって、フツーに泣くし、イライラするし、ムカつくこともあるし、傷つくし、悲しくなったりする。色々な感情が、大人だから許されない、なんてことはない。むしろ大人の世界は小学生の世界より広く、良くも悪くもドラマチックなので、泣くなというのは無理な話です。

でも大人になったら、自分の面倒は自分でみなきゃいけなくなって、お金のこと仕事のこともちろん感情のことも、当たり前に全部自分で処理することになる。その処理の仕方がわからないと、不機嫌を人に押し付けることになったり、かまって欲しいが為に人に迷惑をかけてしまったり、本人が病気になったりする。だから自分の機嫌を取れるスキル、ポジティブに習得したいと思う。

この間、とても久しぶりに機嫌を損ねたので、何も準備していなかった私は非常にうろたえた。まず、ショックなことがあると全然頭が回らなくなり、回復のために何をすれば良いのかわからなくなる。何が好きだったのか、何をしているとき機嫌がいいのか、全然思い出せないので、もう元の自分に戻れないかもしれない現状を嘆きながら、やるべきことをすべて放棄して朝から晩までフローリングに突っ伏して「もう全部どうでもいい」と言うしかなかった。

それからしばらく時間が経った。元の自分に戻ったし、軽口をたたきながらご飯を食べることだってできる。元気になったある日、ふと思い立った。あの惨憺たる何日かのことを教訓に、テロ的に自分の機嫌が悪くなったとしても、きちんとフォローできるような仕組みを作ろう。計画的自己治癒である。

【処方せん.featだいじょうぶ薬局】

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お薬袋には
「処方せん・おくすりについて・手紙・一万円」
が入っている。
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何より大事なのが、「おくすりについて」である。ここには、私の機嫌がよくなる可能性がある「おくすり」が整列している。私の場合、上から順に、「一万円、おてがみ、銭湯、ランニング、録音、友人に連絡、きれいな部屋、長く寝る、sns離脱、お茶の時間にしましょう」とある(二ページ目まで続く)。そのくすりの隣には、写真、用法、おくすりのはたらき、まで書いてあって、思考停止した私でも一つずつこなしていけば、少しは心のこわばりが取れるのではないかと思っている。これを救急箱のそこに入れておいて、いざという時のお守りとします。おくすりの一つ、「おてがみ」には過去の私からの松岡修造ばりの応援が綴られています。録音はすごくオススメしたい回復方法なのですが、寝ながらでいいのでボイスレコーダーに語りかけるのです。まだ友達に会えるぐらいの状態でない時にぽつぽつとでいいので思っている全てを言葉にすると、思考がまとまってくる。感情を持つことは悪いことじゃない。泣け。暴言を吐け。怒れ。悲しめ。回復の話はそれからだ。
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自分のことだけど、未来の自分はやっぱり他人だから、あくまで全てが推測である。「うるさいお前に何がわかるんだ」と処方せんをびりびりに破いて火にくべる姿も想像できる。こんなものあなたには役に立たないかもしれない。私はあなたが分からないしあなたに寄り添うことなんてできない。でも私は私をあなたを信用しているし、絶対最後はだいじょうぶになる自信がある。観覧車みたいに良いがあれば悪いがあるし、光には影があるし、トンネルには終わりがある。大丈夫。みんな大丈夫。癒え続けたらきっと大丈夫になる。