「目的のない場」を守っていくこと あるいは「アパートメント」修繕・改築の意気込みらしきもの

第38期(2018年4月-5月)

「なんかさ、目的的でない時間や営みって大事だと思うわけよ。暮らしって目的じゃないじゃん。続くものじゃん。目的や目標をカッチリ決めて、そこに向けて最短距離で進んでいくというのも、仕事とかでは大事なんだろうけど、それっていきすぎると…なんか『未来の奴隷』みたいだな感じがしてさ。」

「まぁ、それで言うと俺らが歓藍社でやってることは、さしずめ『現在の奴隷』みたいなもんだな。」
IMG_4594

朝7時、新宿駅のベルクでコーヒーをすすりながらぼんやりとそんな話をした。

この「アパートメント」にも書いてくれた、友人の佐藤研吾はしもとさゆり。二人は福島県の大玉村という小さな村に、継続的に通っていて、地元の人たちと友人たちと一緒に「歓藍社」という活動をやっている。

なぜベルクで集まったかって、そこで「歓藍社」の活動写真展をやるっていうので、そこで合流することにした。

彼が「現代の奴隷」とたとえた「歓藍社」の活動、それから大玉村に、まだ僕は行ったことはない。行ったことないっていうのもあるけど、これがどんな活動かというのは、なかなか説明が難しい。それは大きな勇ましい「目的」を掲げていないからかもしれない。

畑仕事や藍染めという、どうしたってその土地の風土と季節の巡り、それから地域の人々の暮らしに密着した活動をその中心に置いていて、それが不思議と、歓藍社のリズムや温度を作っているように思う。

何かの「目的」を持ってやっているかというより、なんだかわからないけど、続いている、営んでいるという感じ。

IMG_4592

IMG_4593

はしもとさゆり, お直しカフェ-お直しをする人の溜り場をつくる試み(6)建築家 佐藤研吾「歓藍社<=>お直し」

でさ、彼らとそういう話をしているとき、あぁこれ「アパートメント」もそうだなぁと改めて思ったのね。もう7年目にも入りまして、入居してくれた住人さんたちは総勢250名にもなり、これ別に目指してたわけじゃないんだけど、終わりもなくずっと続いてきてるのよ。

そういう、目的のない場を守っていくということが、やっぱりとっても大事だなって。で、ちゃんと続けていくための体制をいよいよ本腰入れてやらないとなって、今さらながら思いを強くしている、のだ。「未来の奴隷」は嫌だとかいってるけど、そうはいっても管理修繕、もろもろのお直しはやっていかないと、続けていくにも大変になってきているのでね…

そんなことを思いながら、いつも原稿の取り立てをしている管理人が、久しぶりにお部屋をもって当番ノート連載をはじめたわけ。はやくも公開当日の昼なんだけどさ、これ書いてるとき。

この連載では「アパートメント」を通してこれまで出会ってきた友人たちとのお話を紹介しながら、それにかこつけて「アパートメント」の修繕・改築計画、平たく言えばウェブリニューアルです、に向けた構想なんかも話しちゃって、自分のお尻を叩いていこうかな、なんて。どうぞお付き合いください。

このウェブマガジン「アパートメント」は、いま一緒に管理人をやっている朝弘佳央理が、友人たちとともに、震災後の2011年10月に立ち上げた。

「まだ電車が開通しないある日、会社にも稽古にも行けず誰にも会えずにいたある日、友人が自転車で私に会いにきてくれた。

ずいぶん長いこと話しながら、私は、こうして誰かと顔を合わせたかったんだな、味わったことや考えたことを伝えたかったし、聞きたかったんだな、という風にぼんやりと思いました。」

朝弘佳央理, 庭師通信1

大地が揺れて、電車がとまって、これからどうなるのか誰にもわからなかったあの頃。自転車で会いに来てくれた友人ととめどもないお話をしたかおりさん。

「ただあなたの話を聞ける」それだけの場が、あの頃には揺らぎ壊れかけていたし、だからこそ、その大切さが感じられたのだと思う。

そこから本当に、友人たちとのおしゃべりの延長で、でも本人はウェブサイトなんて作ったことなかったから、友人たちに声をかけて助けてもらって、そんな感じで、えっちらおっちら手作り手作業DIYではじまったのが、このアパートメント。

僕が入居したのは2013年の4月のこと。その時は海外にいて、読み返すとなんとも若々しい小説を書いたものだけど、それから帰国後、日本で働き出した頃に声をかけてもらって管理人になりました。その後もなんどか書いたりしましたが、だいたいは管理人として「人さらい」担当、ここで書いてくれる人を探して、お話をして、書いてもらって、とにかくそんな感じで、アパートメントにかかわり続けている。

「アパートメント」は、なんというかメディアとしての声高な主張はなんにもなくて、こういう価値観を世に提示していきたいんです!とかこんなふうな社会をつくりたいんです!とか、そういうことを言ったりしない。

でも、強いていうなら、「暮らし」を大事にしている。目的ではなく営みとして、暮らしのリズムのなかで、住人さんには書いてほしいし、ここを訪ねて読んでくれた人のなかから、そんな書き方もあるんだって楽しんでもらえたなら嬉しい。それぐらい。

アパートメントの編集は、「編集しない編集」だ。

ここはあなたの部屋だから、のびのび自由に書いてもらっていいですよって、お部屋に案内して鍵を渡す。それだけ。あとは2ヶ月間毎回、「書いて出し」。事前校閲・編集なし。

基本的にやっていることって、「あなたの文章が読みたい」って、書いてくれる人を誘っているだけ。ほんと、人さらい。以上、みたいな。

連絡をとって、メールやメッセンジャーで簡単にアパートメントのことを紹介して、僕がなぜあなたに興味をもったか、普段の作品や文章をみてどう思ったか、こういうことが素敵だと思った、そんなことを伝える。で、「うちの部屋で書いてみない?(何も決めてないんだけどさ)」、 みたいな。そんな感じ。

タイミングが合えば、連載前にカフェで落ち合ってお茶したりする。

これもほんと、打ち合わせと言えるものでもなくって、「最近どう?」「そうだねぇ」みたいな、お互いの身の上近況話なんかをしながら、方向性を決めるでもなく、でもなんとなく見えてきたかなー、まぁでも好きに書いてみてよ、せっかくだから みたいな感じでぼんやり解散する。

そんなわけだから、狙い通りというかなんというか、住人さんはみんな、てんでバラバラに好きな使い方をしてくれている。自分の人生を生き直す場として、今いる足元を見つめ直す場として、遠くの風景を眺めるための場として、「仕事」としてやっていることとは別の時間軸・空間軸で作品をのびのびとつくる場として…

でもなんだかんだ、なんとなーく、じんわりと、アパートメント「らしい」リズムや温度というのは、漂ってきた気はする。

編集しない編集、とは言うものの、お誘いするときには、なるべくその人の日常の歩行リズムのまま書いてもらえるようにーいや飛んでも走ったりしてもいいんだけど、まずその人の暮らしがあって、自分の暮らしを踏まえたうえで、あえて今書くならなんだろうっていうのを手触り感をもって、誰に急き立てられるでもなく、自由に考えて書いてほしいなってことを、そこはちゃんと伝えるようにしている(伝わってるよね?住人さん笑)。

このスタンスは、今後も大事にしていきたいよなって、思う。

でね、いきなり話飛ぶけど、急に「目的」的になるけど、このアパートメントをもうちょっといい感じにリニューアルしたいなって話をずーっとしていて。しかしながらいかんせん管理人たちぼんやりのんびりパーソンが集まっているものだから、ぼやぼや話しつつもなかなか進まなかったのね。それをがんばろうという話をしているので、この連載のなかで構想をみんなに分け合いながら進ませてくださいって話。

このアパートメント、見ればわかると思うが、もうほんとにまったく見事なぐらいに、儲かってない。

運営者(管理人)もライター(住人さん)完全無料でやっていて、なんだかんだと7年目。

こそっと設けている寄付窓口があるんですが、この場を気に入ってくださっている方々の篤志でサーバー代とドメイン代をまかないながら、ほそぼそと続けてきました(この場を借りて、ありがとうございます)。

それでも続けられたってこと、そんな一銭の得にもならないアパートに、わざわざ入居して「ここで書きたい」って言ってくれる住人さんたちが後を絶たないこと、最近では嬉しいことに、これまで連載してくれた住人さんが、新しい住人さん候補を紹介してくださるようにもなっていることは、やっぱりありがたいなって思うし、なおさら、ここには何かの意味があって、ちゃんと守らなきゃなって、思う。

小さな小さなサイトだけど、そこには住人さんが心を込めて書いてくれた文章がたくさんある。

それをこれからも大事に守っていきたいし、そこから世界が広がるようなきっかけを、もっと提供できたらと思う。

今後も別に、儲けるつもりは全くないのだけど、未来にわたってほそーくながーく続けられるだけの、スモールなお金の巡りをつくりたい。

このサイトを当時つくってくれたエンジニアがいるんですが、今はもう運営からは離れていて、そのまま現状維持でなんとか使っているのだけど、そもそも昨今のウェブ事情に合わせてもう少し読みやすさとか回遊性とか改善したいし、書いてくれる人、訪ねてきてくれた人にとって、より豊かな時間が流れる場所にしていきたいなって思う。

そして、目的のない「暮らし」の場だからこそ、「暮らし」にどこまでも近い場と体験を育みたい、のだ。

みんなの位置情報に応じて、夜だったら夜の背景、昼間だったら昼間の背景に変わるとか。

住人さんが選択式で「郵便受け」をオープンできるようにして、読んでくれたお客さんがお手紙を投函できるとか。

住人さんが展示やお食事会を開きたいってときは、組合費みたいな寄付を原資にして活動支援できるようにするとか。

スープが冷めない距離で、私たちはそれぞれの生活を営んでいるんだなぁってことが、住人さんにも、お客さんにも伝わるような、そういう場に変えていきたいですね。

そういう風に、ウェブサイトとコミュニティ機能の開発・改善と、その後もアパートメントという場を守り続けていくための管理運営費・事務員さん・清掃員さんの人件費ぐらいは賄えるような仕組みをつくりたいと思って、今年度から、いよいよ?ようやく?アパートメントのリニューアルに向けて動いていきたいと思います。

こうご期待!…というよりか、ほんと見ての通りの無計画無軌道っぷりなので、みんなにアイデアをもらったり、助けてもらったりしながら進めていきたいなって、そんなふうに思っています、よ。

ーーーーーーーーーーーーーー
こそっと控えめに…寄付の窓口はこちら
アパートメント「寄付について」
銀行名:ゆうちょ銀行
支店名:〇〇八店(ゼロゼロハチ)
口座種類:普通預金
口座番号:3728721
口座名義:アパートメント

フレンドファンディングアプリ「polca」でもカンパ受け付けています。
https://polca.jp/projects/MR3qQF5gxZX
いずれも、「アパートメント」のリニューアルに向けた企画・運営費用に使わせていただきます。
今後、本連載や、アパートメントのSNSで活動報告いたします。