2/2 アパートメント1周年 はるえへ

管理人室の往復書簡

はるえ。

アパートメント1周年を迎えたね。
おめでとう。
そしてありがとう。

お便りではるえが書いてくれたようにはじめて逢ってからも1年が経ったね。
あの日はるえの顔を見て嬉しくて飛びついて、東京のどまんなかでがっしり抱き合ったの覚えてる。
1年前のことだなんてとても思えないな。2年か、もうちょっと前のことみたい。
1月16日に初めて逢ってアパートメントやろっか!と思い立って、それで2月からスタートしたなんて、私たちにしてはスピードのある行動だったよね。

オレンジの、はるえの携帯のカバーのことよく覚えてる。
パン屋さんから見える青い照明がきれいだったこととか、お互いわくわくしていたあの感じの高揚とか、はるえのバスの時間に追われている圧力とか。


今ね、アパートメントの改装のことを考えているよ。
当番ノートは毎日更新されるけど毎日消えてゆくところだから、せめてその日は日めくりカレンダーみたいに全面に押し出したいなあとか、長期滞在の住人のみなさんも管理人もそれぞれの個人が際立つようなお部屋をつくってそこから発信しているようにしたいなあとか、facebookとTwitterの差別化をどうするかとか。
それからやっぱり、ライターさんにいつか原稿料をお渡ししたいので、そんな仕組みのこととか。

アパートメントをはじめた頃、たくさん夢みたいなことを考えたよね。
わたしもはるえもwebに関しては素人だから良太くんにいっぱい無理で無駄なイメージばっかり投げかけたね。
アパートメントの住人さんはログインしていると窓に電気が点くようにしたい!とか、庭でそれぞれ植物も栽培したいとか、猫も飼いたいとか鳥も飼いたいとか・・
サイトにアクセスすると扉があって、入ると談話室があってギャラリーがあって、そうだ貸しギャラリーも経営しよう。横の管理人室でははるえと私がみかんを食べつつ出迎える。その外に伝言板がかかっててそこにみんな宣伝を打てるようにしたらいい。廊下は昔の3D迷路みたいになっててクリックすると歩いてゆけて、それぞれの部屋の扉を開けるとそのひとの部屋でコラムを読めるように、とかね。

アパートメントは文章や絵や写真や画像をひらひらしたただの閲覧物として重ねる場所じゃなくて、ちゃんとそこにひとがいる、立体の厚みと、同時進行の時間を持ったものでありたいなあと思う。
いつかほんとにインターネットを抜けだして顔を合わせて酒を呑む、みたいなことはもちろんしたいんだけど、インターネットの中にいる今現在も、そういうことを忘れずにいたい。そういうことを感じてもらえる場にしたい。
わたしたちが最初に笑いながら夢見たイメージは無理だったり無駄なものだったりしたかもしれないけれど、たいせつなことが含まれていて、改装のヒントになるだろうと思っている。
はるえが送ってくれた、ご近所の唐辛子の植わったアパートの写真のこともよく考える。あそこからもらった感触。
すべてはあそこからはじまっているから。

こんなふうに管理人が「これからアパートメントどうしよっか」みたいなことをここに書くの、いいと思うんだよね。
コラムはみなさんそれぞれが完成させたものを載せてくれている。それはそれぞれが完結した作品。だからそれとはまた別のこととしてね。
アパートメントはたくさんのひとが出たり入ったりして絶えず流動的だし、だから自在に変わってゆけばいいと思う。もちろん箱のシステムには一貫したものも必要だと思うけれど、ね。
アパートメントという生活の場、生きていく箱を、色々ができてゆくさまも読者のみなさまに楽しんでもらえたらいいんじゃないかなと思うのです。
蟻の観察箱みたいにね。

ほんとは2月1日にこのお便り届くように書きたかったのだけれど、昨日は長いドライブをして疲れちゃったのかいつのまにかことんと寝ていた。
自分が運転したわけでもないのにね。

白馬はやっぱり特別雪が降る場所みたいで、昨日は帰り道、トンネルを抜けて白馬に入った途端山が急に真っ白になって驚いた。
いい雪が降るよ、ここは。
夜はとても静かだ。
雪のしずけさって特別だね。
毎日雪のうえに動物の足あとを見る。ちょうどね、出勤の道とけものみちが交差しているの。
だから夜にひとりで煙草を吸いながら、その道の方向をよく見てる。
青い雪あかりのなかにすっと動物が現れないかって。

遠くから風が近寄ってくるのが聞こえる。
風がいまどのへんにいて、どんなルートで、どの枝の高さを震わせてこちらに到達するんだろうって思い描く。
遠くにからだの感覚を伸ばしている、そのやりかたが今までと少し違う。
だからなにかね、さまざまな感覚が、東京にいる頃とは変わってきたよ。
ことばにできることではないけれどもしかしたらがらりと。
仕組みの最初のぴんを引きぬいたから、組み換えが変わったんだろう。

はるえに逢いたいよ。
雪国に、あそびにおいで。

またお便りします。