雑居アパートの耐震補強工事(の準備)

管理人の部屋

ここしばらく繁忙期が続いていて、シェアハウスの同居人に「久しぶりに会ったね」などと言われる始末ですが、深夜、帰りの電車に揺られながら「アパートメント」の記事をスマホで読むことは一服の清涼剤であり、訪問客たる読者のみなさんにおかれましても、ここを訪れることがひとときの安らぎや、何がしかの発見となっていたならとても嬉しいです。

さて、「アパートメント」の管理人であり発起人であるパリの踊り子・朝弘佳中理が書いた先月の「管理人だより」では、そもそも彼女が「アパートメント」を始めるにいたったきっかけについて綴りました。毎月、毎年、部屋とフロアを積み重ね、始めた当初から少しずつ形や雰囲気を変えながらも、そんなこんなで4年半以上も続いているこのアパート。

管理人3人が手弁当で続けるにもさすがに大変だなぁという規模にもなってきており、また、住人さんや読者のみなさんに新しい価値を提供し続けられるだけの工夫や進化も必要だと感じており、そのための資源(ヒト・モノ・カネ)調達も本腰入れて考えねばならんなということで、管理人3人で話し合っているところです。

要は、「アパートメント」を、設立・運営の想いや、住人・読者の自由度を担保しつつ、継続反復可能な”事業”として成り立たせるにはいかなる方法があるか、ということであるわけですが、そのためには私たちがこの場を通してどんな価値を生み出しているのかを今一度棚卸ししなければなりません。

以下は、これまで運営してきた手応えからの仮説・試論に過ぎず、今後きちんとアンケート・ヒアリング調査をできればとは思っていますが、記事を読んでくれている住人のみなさん、読者のみなさんも、よろしければご意見お聞かせください。

まずは住人のみなさんにとって。このアパートに入居して書く、ということはどういうことなのだろうか。

カネももらえないのに書く、なのか、あるいはタダで入居して書ける、なのか、価値付け意味付けは人によって若干の差があるかもしれないが、その中間の落とし所として、「自分で自由になんでも書ける」空間であるということは、ひとつの特徴であると言えるだろう。

そもそもどんな人にお声がけするか、お誘い時にこちらからどんなラブコールを送るか、連載開始前にどんなキャッチボールをするか、という点で住人・管理人間のやり取りは介在するが、いざ連載が開始すると、内容に関しては一切の”編集”をしていない、まったくの「書いて出し」スタイルである(あとからちょっと誤字脱字校正をすることは、ある、たまに) 。

発注者がいて、原稿料が発生し、記事の向こうに想定読者がいて…という「仕事」としてのライティングとは違って、住人=ライターは何を書いても自由である。普段は文章を全く書かない人、絵や舞踊や写真や工芸や食や…普段は別の表現方法をとっている人、あるいは、誰かにインタビューされてそれに答えるということの方が多い人。それがみんな同率に、自分の部屋を持って自分自身で書く。

「仕事」としてのハードルがない分、自由度がある。第20期の岡田育さんが「同人誌」に近いと称したのは、かなりの近似値だと思う(それ以上にお金が動いている気配がなくて少々不安になる、と言われたがそれもその通りである)。

「仕事」ではないからこそ、今までとは違う自由で新しい表現に挑戦する、という人もいるし、連載したことが、自分の表現や在り方の捉え直しの機会になった、と言ってくれた人もいた。

この自由さは、今後も可能な限り最大限担保し、住人のみなさんが伸び伸び過ごせる場を維持していきたいと考えている。

もう一つ、これは必ずしも全員が望んでいるのではないかもしれないし、望んでいる人にとってはその機能・効果は若干物足りないかもしれないが、ここでの連載を通して、住人さんが自分の新たな表現や仕事に繋がる機会を提供できたらとも思っている。

現在のレイアウト上、ちょっと見つかりにくいかもしれなくて申し訳ないのだが、トップページの右下から、住人さんが主催・参加する「イベント・展示」の情報を掲載しているのでぜひチェックしてみて欲しい。僕も住人さんの公演や展示に足を運んだり、出版・販売した作品を買うことがしばしばあるのだが、「アパートメント」経由でお客さんが来たという声を住人さんからいただいくこともある。

実装機能や提供資源において具体的なサポートはまだ何もできていないのだが、ここでの連載内容を書籍やCDとして出版・販売したという方もいたり、個別に声をかけ合って、住人さん同士が合同展示やライブペインティングといったコラボ企画を行ったこともある。

何を、どのような業態で、というのはまだまだ検討の余地があるのだが、望む住人がいればそうした「仕事」や「作品づくり」を実際にサポートできるようなキャパシティは増やしていきたいと思っている。

さて、それでは訪問客たる読者のみなさんにとってはどうか。

これはもしかしたら、上で住人さんに向けて書いたことの表裏一体であるかもしれない。

「アパートメント」の住人は、いわゆる「専業アーティスト」というか、当該表現行為だけで食ってる、という人ばかりではない。むしろそちらの方が少ないのではないだろうか。作家さんも人間である。制作行為は孤独なものであるが、その前後には普通に衣食住生活がある。SNSがこれだけ普及して、誰でも全世界に発信できるようになった今ではそこまで強調することではないかもしれないが、「アパートメント」を読んでくれているみなさんは、案外と「表現」が自由であること、誰にでも開かれていること、(時には跳躍こそが重要であるが)生活と地続きであること、を感じていただけたのではないだろうか。事実、住人勧誘はけっこう属人的に管理人や住人の知り合いづてで行われたりしていて、これを読んでいるあなたに私が明日、お誘いのメールをお送りすることも、あるかもしれない。

これまた岡田育さんの言葉を借りるが、“無から有を生み出すというだけなら、じつは誰でもできる。”(連載第5話)それ自体がお金になるか、食い扶持になるかどうかはまた別の段階ではあるが、「表現すること」自体は誰にだってできる。資格もいらない。そのことがこの媒体を通して読者のあなた伝えられたなら嬉しいというのも、管理人の願いのひとつである。

もう一つ、先に書いたことの裏返しとなるのは、「アパートメント」を通して、読者のみなさんが、いままで出会ったことなかった作家さんや作品と出会う、観る、買うきっかけとなればとも思っている。

各種表現ジャンルごとの業界専門誌ではないこの「アパートメント」は、表現と名づけて良いのならオールジャンルごった煮である。専門特化した批評や流通PRをできるわけではないが、その分、今までそのジャンルがすでに抱えているファン層とは違う人達が、作家さんや作品にふれるきっかけを作れるとは思う。

そんな「アパートメント」をあえて業として定義するとしたら、何だろう。

住人さんにとっては「表現・交流機会つきの場所貸し業」とでも言おうか。今後はその表現・交流の機会をどのように付加価値として増大させていくかが課題だと思う。読者にとってはやはり現状「ウェブマガジン」である。ただ、住人さんの人となりや暮らしが見えるというコンテンツ自体の特徴を発展させ、何がしかの具体的な接点・交流の場をつくっていく、という今後プラスアルファの発展可能性はあるとは思う。

考えるままにつらつらと書きましたが、とにもかくにも、住人さんと読者と、そして管理人自身にとっても、それぞれが健やかに伸び伸びと過ごせる空間と業態を模索していくのみです。

巷のニュースでは杭が足りない建築とかなんとかありましたが、そうはならないように基礎と柱をしっかり固めていく所存。