「ギャラリー・カラバコ」あとがき対談

ギャラリー・カラバコ

共通のタイトルだけを手がかりに、2人の作家が絵と小説を別々に制作し、掛け合わせていく企画「ギャラリー・カラバコ」。
(お題 : 鈴木悠平 絵 : 古林希望 200字小説 : カマウチヒデキ)

全10回の連載が終了しました。

01 桟橋
02 物差し
03 帯
04 時化
05 吃り
06 影絵
07 隠者
08 ウミネコ
09 うぶすな
10 蟹

今回は、「あとがき」と題して、連載を振り返っての対談をお届けします。

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カマ 20ヶ月(10回)にわたって続いたギャラリー・カラバコが終了しました。
これは、希望さんと話していて、何のきっかけだったか忘れましたが、2人で何かコラボできたら面白いなぁと。
僕は写真で希望さんは絵なので、写真と絵で何かするというのは難しいから、じゃあ僕は副業(笑)の「200字小説」でやろうと提案したら希望さんが乗ってくれて。
同じタイトルで200字小説と希望さんの絵を出そう、タイトルはどうしよう、アパートメント管理人の鈴木悠平君に頼んでみようか、とトントン話がまとまったんです。
悠平君には無茶ぶりしましたけど、まじめに考えてくれてありがとうございます。

希望 ありがとうございます!

悠平 外から来たタイトルに対してそれぞれどのようなプロセスで制作に取り掛かったか、教えてください。

希望 まずお題から連想する言葉をいくつか思い浮かべました。
そのあと辞書で意味を調べたりする事もありました。「吃り」「時化」「隠者」「うぶすな」あたり。
ただいつもあまり具体的に印象を固めて、という訳ではなくて。ふんわりとイメージを感じつつ描き始めていました。

カマ 悠平君にタイトルを考えてもらうってのはナイスアイデアだったと思うんです。2人で相談してたらやっぱり書きやすいもの選んじゃうし。悠平くんの選ぶタイトルがいい具合に斜め上から飛んで来るので、まずその言葉を自分の中に引きずり下ろしてこなきゃいけないし。

悠平 創作にあたってパートナーをそれぞれどの程度意識しました?

希望 カマウチさんの文章と私の絵の波長の相性はよい、と個人的にずっと思っていたので、カマウチさんはどんな文章を書くのだろうな、、、どうなるかな、楽しみだな、という
「期待」はしていました。
でも、あまり「意識」という点では、意識は、していなかったです

カマ 僕もはじめる前から相性はいいと思ってたし。最初の1~2回でこれは何書いても成立するなと確信持ったし、信頼してるので、別に意識してないです。

悠平 波長が最も合ったと思われる回は?

希望 おお、と思った回は半分位あるのですが、一番鳥肌が立ったのは「物差し」でした。
それまで私は鉛筆画を描く時に紙と鉛筆以外の道具を使ったこと無かったのですが、
それがその時はある程度描きあがった後で、ふと思いついて、初めて定規と消しゴム、コンパスを使うことにして、今までの作品で、描いたことのない白線、サークル、ドットといったような具象的なモチーフを加えました。
それが全て作用してカマウチさんの文章の幾つかのキーワード、全体に漂う「強迫的な刻み」みたいなものに、ぴったり嵌まったと思っています。

カマ 最初の「桟橋」から、打ち合わせないのに希望さんが泡っぽい図柄を描いてきて、うわ、いきなり僕の書いた蟹にシンクロしたーって楽しくなったんですが、僕は3回目の「帯」が、もう隣の机で描いただろ、ってくらいに共鳴してて、怖くなったくらい。「帯」は凄いなぁ。
2回目「物差し」もたしかに合ってる。
「時化」もいいな。
1~4回、全部波長合ってますね

悠平 逆に意外だった回はどれですか?

希望 意外、というか全く逆の視点で描いていて面白かったのは「隠者」です。
カマウチさんは隠者を「外」から見た世界、私は隠者から見た「内」の世界、
カマウチさんと鏡の向こうとこちら側で手を重ねた瞬間に、はっ、と相手側の世界を知った、みたいな気持ちになりました。
「隠者」を仕上げた時の独特の高揚感みたいなものは印象的だったなぁ。

カマ 5回目の「吃り」から、ちょっと変わってきた感じしますね。シンクロするばかりが醍醐味じゃない、みたいな考えが無意識に生まれてきたのかも。僕がちょっとひねくれ出したのかな。
ちょっとくらい無茶しても希望さんの度量で世界は揺るがない、みたいな安心感があったし。
「影絵」なんか僕、完全にエンターテインメント感捨ててますしね。
「隠者」で希望さんが言うみたいに裏表で合わさる、みたいになって、「ウミネコ」「うぶすな」はまたお互い好きなことに走った感じだし。この辺は全部、1~4回目までのシンクロ感にはこだわってないから、「意外」というんじゃなくて、単に自由でいいなぁと思ってました。

希望 で最後の「蟹」では後半で開いた自由を楽しみながらも、二人の無意識下の引力の均衡は、それ以上でもなくそれ以下もない、この上ない感じで発現したように思います。

悠平 連載を続けていく中でどんな変化がありました? 相手の創作に対する認識の変化、自分の創作過程や着想の変化みたいなもの。

希望 二回目の「物差し」をきっかけに、積極的に「挑戦」をするようになって、新しい表現方法を毎回試みたりと、たくさん発見がありました。
途中からなんか安心感というか、もう何やってもこのコンビは大丈夫、みたいな気持ちがむくむく盛り上がっていたので、毎回自由に描けていたと思います。
実際、作品自体にも次第に空間の広がりを感じられるようになったと思っています。

カマ さっき言ったみたいに、希望さんの絵で、十分「質」は担保される確信があるから、後半は完全に遊ばせてもらったというか。「影絵」みたいな地味な話を書いても大丈夫だな、って。
そしたら希望さんが「影絵」の僕の文章すごく好きだと言ってくれたから、あはは、こんなに地味に走っても許されるのか、って。免罪符もらった感じで(笑)。
「ウミネコ」も陰気な話だし。「うぶすな」なんかどこまで理解されるかわかんないくらいひねくれてるし。
でも希望さんいるから大丈夫、許される、的な。勝手ですけど。

悠平 第三者の出したお題に対してせーのでアウトプットを出し繋げる今回のスタイルは普段の創作プロセスに比べてどのような感覚だったんですか?

希望 私は普段、絵を描き上げてからタイトルを決めているので、今回のようにまずタイトルが決まっていて作品を描くことが、まず新鮮でした。
それに第三者が出したタイトルでもって全くのすり合わせなく制作を行う、というアイデアも本当に面白かった。
楽しくて楽しくて終わってしまうのがとてもさみしかったです。だから形を変えてまたやります。ね、カマウチさん。

カマ 僕、本業は写真の人ですから、200字小説ってのは自分のブログでせこせこ「趣味」で書いてるだけだったんです。まぁ好きで書いてるだけですが希望さんと一緒にやる前に10本くらいは書いてて、我ながら面白いなぁって自賛してたんです(苦笑)。でも自賛とか暗いこと言わずに、もっと外に向けて腕試しというか。
僕、どれくらい書けるんだろ、って試したかったんです。
敬愛する希望さんとコラボにしたら、まさか手を抜けないし、下手なの載せられないし。
さらにタイトルを他の人に決めてもらうっていう、ハードル上げる感じ? ほんとに腕試しですよね。
毎回スリリングでほんとに楽しかったし、希望さんとは何らかの形で共作は続けたいです。

悠平 振り返った時に通底するテーマへ共通点は感じられましたか? 逆に通して眺めた時に思わぬテーマが浮かび上がったりしました?

希望 うまく言えないのですが、「間(ま)の際(きわ)」を垣間見た世界、ものがたり、のような。
最終回が第一回に繋がった時には「うわわ、きた、きたよ、これだ、これ」ってもうぞわぞわ、ざわざわして居ても立っても居られずカマウチさんにすぐにメッセージを入れました。「すごい!意識していたの!?」って。
ここのところはぜひカマウチさんに語って頂きたいと思っています。

カマ 最初は手探りだから、共通テーマとか特に決めないほうが面白いと思ってたし。でも相手あることだから、勝手にでも引力は働きます。
そういうことは特に話したことないですけど、きっと元から2人、とっても似てるんですよ。日頃から考えてる世界が。
希望さんが「間の際」って言ってるのは、たぶんすごく皮膚感覚的な部分もあって、自分の感覚の境目っていうか、そもそも皮膚の外はどうして自分じゃないのか。本当に自分じゃないのか。分けるものって何? ていう疑問。
僕は自分っていうものがたかだか皮一枚の中にぷよぷよ収まってるだけ、っていうことに対する違和感みたいなのが、考えの根底にあるんです。たった皮一枚って、ほんとかよ、って。

希望さんの絵を、連載始める前から好きなんですけど、もちろん好きだからコンビ組むわけですが。
やっぱりそういうことを、この人も「ほんとかよ」って思ってるよ絶対、ていう確信があるから。そういう共有感が最初からあるので、勝手にテーマは収斂されると思ってました。

で、ちゃんと成功した気がするし。

成功してるかどうかなんて僕らが決める話ではないですが、でも偉そうに言いますが、少なくとも失敗はしてない(断言 笑)。
第1回「桟橋」の末尾を破って「一字欠」にしたのは、結論書いちゃったら話が閉じちゃう、第1回目から断定的な話にしたら息苦しいかな、みたいな考えだったんですけど、連載途中から、あの「一字欠」を埋める話をラストに持ってこよう、と思いつきました。
悠平君の考えたタイトルに「蟹」っていうのがちゃんとあったので、ラッキーだったし。
ラスト2回で「うぶすな」と「蟹」が残ってたので、どっち先にする? って希望さんに聞かれて、こっちは「蟹」を残さなきゃいけないので、即答で「うぶすな」って(笑)。

希望 なんと、そんな思惑が。 ひと泡吹かされました。(笑)

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お二人にタイトル案を提案する上では、
なるべく幅を持たせて、二人の自由度が担保されるよう、
それでいて何か予期せぬハプニング、化学反応が起きたらいいなぁという遊び心もいだきながら、
直感・語感重視で頭に浮かんできたものを、ポンポンポーンと投げました。

連載が始まってみたら毎回おもしろい作品が上がってきて、
あとは管理人とは名ばかり、ほとんどギャラリーのお客さん目線で楽しく眺めていました。

表現のきっかけは、外からやってくることもしばしば。
お二人にとっての良い外部刺激になれたなら嬉しいです。

「アパートメント」管理人 鈴木悠平

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「ギャラリー・カラバコ」
01 桟橋
02 物差し
03 帯
04 時化
05 吃り
06 影絵
07 隠者
08 ウミネコ
09 うぶすな
10 蟹