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3F/長期滞在者&more

六本木

長期滞在者

フォトマルシェ数年前から地方都市をこまめに回ることを意識してやっているので、例えば新幹線の「のぞみ」が停車する各都市と東京の違いを考えると、まず最初に目につくのは、街路を行き交う外車の多いこと。地方ではあまり見かけない名もわからないクルマや、単にガソリンを喰いまくる怪獣ではないか、と思わせる不思議なものをしばしば見かける。ぼくの仕事場の前は、貸駐車場で、月々の家賃は5万5千円だという。10年前ぼくがここに仕事場を構えた時は近くに住んでいるという塾の講師が乗っている真っ白いリンカーンが停まっていた。新宿あたりの車庫の家賃相場はこのくらいはザラで、つまり都内で車を所有するということは、それ相応の所得のある人に限られるのであるが、実際そんなわけのわからないお金を払ってまでもクルマに乗りたいと思う人は結構いて、ゆえにいかにも高そうな高級車が何台も狭い路地を行き交っています。
原宿・明治通り沿いの人通りの多い一角の家賃相場は1坪単価で8万円を超えるそうです。いったいどんな商売をすればいいのか、ぼくにはさっぱりわかりません。
都市生活というのも、ぼくにはぼくの暮らし方、都心をガソリン怪獣で走りまくる人々が交わる点はほぼないと思われ、いわば、生活の中にも様々なレイヤーが存在して、都市を上から俯瞰すると、その全てが一体になって見えるのではないかと最近思う。

東京都市圏とは約3700万人もの人が居住し23区内の昼間人口は1100万人だという。実際この場に身を置いているとピンとこないが、数字で見るとなんだかすごい。ぼくなどは、1年間にどのくらいの人々と言葉を交わし、コミュニケーションをとっているかといえば、本当に計測不能なくらいの微々たるもの。同時にぼくが身を置いている写真業界というのも、巨大な都市のレイヤーのひとつであって、だからこそ「写真ムラ」なんだろう、と感じることがある。
しかしながら、ギャラリーという場は、面白いもので、決して交わることがないはずの様々なレイヤーに属する人々が接点を結んでいるように見えることがあります。もちろん、それはとてもささやかな出来事ではあるのだけれども。これも写真表現をはじめとするアートの役目なのかなと思ったりします。

この記事が出る頃には終わっているのだが、11日〜14日まで六本木のアクシスギャラリーの「フォトマルシェ」というイベントに参加することになって、今その準備をしています。こじんまりしたアートフェアのようなもの、という認識で間違いないと思いますが、ぼくたちからすると、「出張ルーニィ」で六本木に出かける感覚で、日頃新宿〜四谷でのんびりやっているところを、意図的に普段とは違ったレイヤーに飛び込んでみるつもりで参加できればと思います。
それによってお互いに意識されていなかったものに気がつけたりできれば、レイヤーだと思っていたものが写真とかアートを通じて接点を見出すことができれば、もっともっと写真表現を取り巻く環境は良くなります。こういった試みを各所で重ねていくことで、せめてこの巨大都市の0.5パーセント程度の人々に、写真表現について身近に感じていただかないと、実際のところ視覚表現の効力は社会に通用していないにほぼ等しい。

篠原 俊之

篠原 俊之

1972年東京生まれ 大阪芸術大学写真学科卒業 在学中から写真展を中心とした創作活動を行う。1996年〜2004年まで東京写真文化館の設立に参画しそのままディレクターとなる。2005年より、ルーニィ247フォトグラフィー設立 2011年 クロスロードギャラリー設立。国内外の著名作家から、新進の作家まで幅広く写真展をコーディネートする。

Reviewed by
鈴木 悠平

ニューヨークに留学していた頃、ブルックリンからマンハッタンのアッパーウエストまで、1時間以上かけて通学する時期があったが、メトロが進むにつれて、客層が徐々に移り変わっていく様子が印象深かった。車内で多数派の肌の色や言語、服装や持ち物、乗ってくるストリートパフォーマーのジャンル…なるほどそれぞれ「別々のレイヤー」の人たちなのかと感じたものだった。

"都市生活というのも、ぼくにはぼくの暮らし方、都心をガソリン怪獣で走りまくる人々が交わる点はほぼないと思われ、いわば、生活の中にも様々なレイヤーが存在して、都市を上から俯瞰すると、その全てが一体になって見えるのではないかと最近思う。"(本文より)

都市生活者の多層性・併存性は、篠原さんがおっしゃるように東京においても当てはまり、打ち合わせに出かけたり知人と会うために東京の西へ東へと移動するたびその町域の空気の違いに気づかされる。

そんな、普段は交わらない人たちの出会いをもたらす場の一つがギャラリーであるという。展示会や、そのオープニングパーティーには主催者およびその友人づたい、あるいは全く彼らと接点がない人も、同じ空間に集ってくる。

知り合いづたいに約6人いれば米国大統領に繋がることができる、という「Six-degree理論」なんてものもあるが、点と点を結べば普段交わらない人への線が伸びていく。

よくよく考えれば人間はひとつのレイヤー、ひとつのコミュニティのみに属しているわけではないのであり、主たる生活交友圏の外にも複数の細いネットワークが伸びている。

一人ひとりがささやかなご縁を互いに持ち寄って、それが混ざり合うような空間は面白い。
そこで出会った人を通じて、新たな興味関心が開くことも決して少なくはない。

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