宇宙を見る「目」について

長期滞在者

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1800年、ウィリアム・ハーシェルは、太陽の光をプリズムに通し(100年前にニュートンが行った実験と同じように)七色のスペクトルに分けました。そして、七色それぞれの温度を測ってみました。紫、青、緑、と徐々に温度が上がり、一番端の赤色の光が最も高い温度を示しました。ハーシェルは、なんとなしに赤色のさらに外側、目に見える光のない部分の温度を測ってみました。なんと、その場所は目に見えるどの色の光よりも高い温度をもっていたのです。目には見えないけれど、光と似た性質を持つなにかがある。これが赤外線の発見でした。

さらに、紫の外側の紫外線、その先のX線、ガンマ線、赤外線の先にあるマイクロ波、FM、AM電波が発見されます。可視光スペクトルと、その外側に広がる目に見えない何か。その正体は電磁波でした。これら波長の違う電磁波に、根本的、構造的な違いはありません。電子が振動しながら光の速さで進んでいくもので、その振動の大きさ(波長)によって様々な性質を示します。様々な波長の電磁波が存在するなかで、380nmから750nmの波長を持つ電磁波が網膜に衝突した場合のみ、私たちはそれを光として認識することできるのです。




かつて人間は、380nmから750nmの電磁波のみで宇宙を観察してきました。17世紀の天文学者ケプラーも、ティコ・ブラーエの天文台から目に見える光を観察し、それを元に膨大な計算をすることで惑星運動の法則を発見しました。

そして、可視光外の様々な波長をもつ電磁波が宇宙から降ってくると分かってからは、目に見えない光を「見る」ための装置が次々に開発されてきました。しかし、地上に設置された装置では「見る」ことに限界がありました。地球を覆う大気圏は、可視光外の電磁波、主に短波(紫外線とその先にあるX線、ガンマ線)を巧妙に遮断してしまうのです。そのため、短波を観測するための装置を大気圏外に打ち上げることまでしました。

このように人間は、地上から星を眺めることとは全く違う「目」を持つことができたのです。




私たちが目にするものは全て、ほんの少しだけ過去です。

電磁波がその源から私たちの目に届くまでに、距離/秒速30万kmの時間がかかるためです。

人類が新たに手に入れた性能の良い「目」を使えば、非常に遠くまで見ることができます。そうしてさらに遠く見るほど、見えるのはさらに古い過去の出来事です。過去から送られてくる電波から、この宇宙のはじまりについてある程度予想することができていますが、不思議なことに、未来からの電磁波を受け取ることは決してできないのです。

私たちは、未来へと向かって進んでいるはずなのに、目にするものは全てが過去です。それはまるで、進行方向に背を向けてボートに乗り、オールを漕ぎながら時間の流れを進んでいくようです。



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今月の絵は、有名な「目」のひとつ、ハッブル宇宙望遠鏡です。
ハッブルは、地上約600km上空の軌道上を周回する、長さ13.1メートル、重さ11トンの大きな筒です。内側に反射望遠鏡が収まっています。観察できるのは可視光とその近くの紫外線、近赤外線のみですが、多くの美しい写真を残し、新しい発見を手助けしてきました。ハップルは打ち上げられて25年になり、稼働の限界が近づいてきています。徐々に高度が落ちており、大気圏に突入してしまうのは2016年-2021年と考えられています。