“小柏 絵美”とのやりとり。

長期滞在者

小柏 絵美 以下、絵” お仕事はどんな感じ?
イガラシタカヒロ 以下、イ” さいきんお客さんがちょこっとずつ増えてきて
絵” うんうん。
イ” 利用者さんがきたら、「じゃあ、今日はどこいこっか?」みたいな感じで車に乗っかっていろんな所に遊びにいくって感じで、デイっていうより友だちみたいな感じ(笑 一緒に遊んでるみたいな。だからすごく楽しい。
絵” えーよかったね!
イ” 利用者さんも楽しんでくれてるしね。遊びがリハに繋がれはいいなって。まあ、これでもっと売上があがったらいうことないんだけどね(笑 
絵” 施設によって色があるし、来るお客さんによっても違うし、本当に手とり足とりケアが必要な人から、まだ機能が保たれてる人だったらそれをいかに維持できるかっていうところを考えながら一緒に過ごすっていうのが一番のケアだと思うんだ。
イ” そうだね。うちの地域ってリハ系のデイが多いのね、マシーンが入ってる感じのやつ。まあ、うちは貧乏経営者だからそういうのはないんだけど、でもやっぱ、外に遊びに出るっていうのがすごいリハになってるなっていう実感があって。あるおじいちゃんは最初来所したときは結構認知入ってるなっていう印象だったんだけど、最近は〝この人って認知症?〟って。すごく印象が変わったっていうか。
絵” へーおもしろいね。
イ” なんか活性化されてる感じがするんだよね。
絵” 外に出ること自体が刺激になるし、楽しみだし、昔を思い出す刺激があったり
イ” ちょー冗談とか言い合ってるからね(笑 
絵” そのやりとり聞きたい(笑 
イ” でかい所だと外出もなかなかできないじゃん?だからせっかくうちを選んでくれたんだから期待に応えないとって思うしね。いやしかし、この仕事は楽しいね。
絵” んー?
イ” これは前から感じてたんだけど、ひとつの人生の終わりの時期に関わらせてもらってるじゃん。亡くなってく人も何人もいるし。まあ、とくに前は認知症専門だったから、人生がぼろぼろ崩れ落ちてく状況を〝見ながら〟っていうほど客観的ではなくて、一緒にこう、、、実際俺たちになにができてるわけじゃないんだけど、でも一緒にそれを体験してる感覚はやっぱりあって、
絵” それは消耗したでしょ?
イ” まあ。
絵” 距離が近かったり、重ねてみちゃうと、、
イ” うん。明るい人もいれば、卑屈になっちゃう人もいるしね。で、その負の感情をもろに受けちゃうと、ケアする側が〝あの人のケアはしたくない〟ってなっちゃたりするんだよね。まあ俺の場合はそこが楽しめたというか、、
絵” 巻き込まれないでいられるように距離を置けたんじゃないかな?
イ” たぶん。自分は誰に対してもある程度距離があるような気がするんだよね。
絵” うん。
イ” そうなのかな?やっぱ(笑 それが俺的には悪いことだとは思わないんだけど。
絵” 人によっては居心地いいんじゃないかな。あまり侵入されない感じが。きっと親密になるのは彼女さんとかで、でもそれだとしても一個人としての距離は置いてるんじゃないかなって。
イ” それはあるかもね。それっていいのかね?
絵” 私的にはいいと思うし、逆にそれが同一化しちゃってもう大変なことになる人をよく見てるから。
イ” なるほどね(笑 
絵” 人を大事にできるのは、その人の力だと思うから。
イ” あと、距離はあるんだけど、その利用者さんたちの人生に多少なりとも関われてることが嬉しく思う気持ちもあるんだよね。光栄だなって。
絵” その感じわかる。
イ” それはおじいちゃんおばあちゃんだけじゃなくって友達とかにも同じように感じてるし。
絵” ちゃんとその人のいいところを見られる人だよね、タカヒロさんって。
イ” まあね~(笑 
絵” (笑 
イ” いや、わかんないけど(笑 
絵” そうじゃないと尊敬できるところを見つけられないと思う。その人をネガティブな目でみないようにするには、その人のいいところとかその人の背景とか、、興味がちゃんと持てるというか。
イ” 興味はあるね。あ、そう!前の職場がグループホームだったからなんだろうけど、入所されてる方たちはやっぱり認知症が重度だったんだなって実感してて。外で生活してる方は認知が入っててもある程度で止まってる人もたくさんいて、、で、この前ぶどう狩りに行ったのね。で、〝あのぶどう美味かったね〟っていうのを、次の週とかその次の週に話すことができる感動。〝覚えてる!〟っていう。思い出を分かち合える有り難みっていうのを今の職場で実感できたんだよね。なんていうか、、こんな嬉しいものなのかって思った。
絵” 確かに一緒に過ごした記憶の共有ができるのは嬉しいよね。
イ” そう、だから改めて記憶の重要さを知ったというか、認知症の切なさを改めて考えたというか。前は記憶がなくなることが前提の付き合いだったのね。だから、前の職場の利用者さんたちは俺のこと忘れてるし。中には思い出してくれる人もいるんだけど、9割はその場からいなくなったと同時に俺は存在しなくなってしまうから。なんかね、思い出を一緒にまた話できるっていうのはすごいことだなあって。
絵” そうだね、、そう思うと人と関わってそれを共有するってすごいことなんだよね。
イ” そう。
絵” ハッとした。私の仕事もそっかあって思って。私もカウンセリングしててその人の1時間の枠の中でその人の話を聞いて、っていうのを繰り返してて、また1週間後に来る人だったり、1ヶ月後に来る人だったりして。そこでちゃんと共有ができてないと信頼関係崩れるな、とか。
イ” 確かにそうだよね。
絵” やっぱりその人とどれだけ密な時間を一緒に過ごせたか、短い間でも記憶に残る時間を過ごせて、また振り返ることができるってすごいことだなって思う。真面目な話。
イ” 真面目な話(笑 
絵” こんな真面目な話するんだった?(笑 
イ” 真面目じゃない話でもいいよ(笑 でも、いま楽しいね、仕事。
絵” んーいいね。〝楽しい〟って言ってる人をみるのはすごく楽しい。今日来てよかったって。
イ” (笑 
絵” 〝辛い〟しか毎日聞いてないから。
イ” あ、そうだよね。
絵” この仕事してるとその人がいたっていう記憶をしっかり持てるっていうのはあるよね。
イ” そう、ここもうちょっと話したかったんだけど。認知症ってやっぱり忘れてっちゃうじゃんか?それでいったら死もそうなんだけど、まあ、死んだら無になる、、その人がいなくなっちゃうわけで。例えば寝たきりで意思の疎通がとれない状態になったとき、でもその人はきちんと存在、、するんだけど、、、でもなんなんだろうなっていう感情が生まれるだよね。なんて言ったらいいのか難しいんだけど。
絵” 記憶が上書きされないからその人ときちんと関われてるのかなとか、その人は自分というものがあるのかとか?
イ” うん。それを考え出すときりがないんだけど、、
絵” んー、なんていうんだろう。私の方の仕事でいうと、関わり方って昔がどうだった、これからがどうなるっていう話ももちろんするけど、一番大事にしてることは今ここでなにをしてるか、今ここでなにを話しているか、今ここでこの人とどういうふうに関わって、今どうなっているのかっていうのが大事で
イ” 今、、
絵” 特に今。今をちゃんと関われてるからって次はわからないし、そのときはまた今をちゃんと関われるように、、それの積み重ねでいいんじゃないのかなあって
イ” うん。
絵” って思ったりするけどなあ。
イ” 確かに実際やってることはそれなんだよね。それ以外しようがないし。
絵” うんうん。相手は忘れちゃうかもしれないけど、今を関わってきたタカヒロさんの人生が積み重なっていくわけだし、それでいいんじゃないのかなあって。
イ” 自分の中にってことね。
絵” うん。

emi