“杉守加奈子”とのやりとり。

長期滞在者

イガラシタカヒロ 以下、イ” 明日で展示終わりですね。
杉守加奈子 以下、杉” はやっ!寒かったのにね。
イ” あっという間ですね。
杉” どうでした?二週間。
イ” 楽しかった。
杉” 楽しかった?
イ” 楽しかったし色々、、ホントになんだろうなあ。自分が今までやってきたことってあるじゃないですか?それをここ一年くらいの間、嫌いになろうと思ってたんですよね。
杉” うんうん。
イ” ていうのは、私事がすごいじゃないですか?
杉” うん。
イ” それはそれでやってきたことだしいいんですけど、その反動なのかなんなのか、いままで自分に向かってた熱をそのまま他人に向けたいなっていう思いが強くなってきていて。で、この前も話したけど写真以外の表現にも、、残せないものっていうのに興味が湧いたりとか。まあとにかく、今まで自分がやってきたことを一度否定したかったんですよね。先に進むために。
杉” なるほどねー。
イ” で、今回の展示に向けて動いていくうちに否定しなくていいんだって、これはこれでよかったんだって心底素直に思えるようになったっていうか。これで無理なく次に進めるなって。そういうものになったんでホント良かったなって感じてるんですよね。
杉” ほー。でも、すっごく個人的なことを突き詰めに突き詰めると、、人間て変わらないから、、だって生まれて死ぬものだし、必ずお父さんとお母さんがいるし、どういう家族かっていうのはそれぞれ違っても一緒じゃん。同じ内臓でできてるし。
イ” つくりは一緒っすもんね。
杉” 胃が4つある人とかいないじゃん(笑 基本的に心はあるし、一緒だったりするから。すっごい個人的はことはすっごい普遍的なことで、確かにすごい私事なことではあるけど、それが突き詰められているから、結局は人間のことをやってると思うの。
イ” それは思います。
杉” で、こうじゃないの~ってかっこつけてやってるわけじゃないし。
イ” まあまあ。
杉” イガラシ君のやってることってそうするしかしょうがなかったんですみたいな、そういうことじゃんね?それがカッターの線に現れてたり、言葉に出てると思うから。あれはあれで否定しなくても既に過去になってるでしょ?
イ” そう。それに気がついた感じなんですよね、今回。
杉” ね。イガラシ君のいいところだと思うんだけど、さっぱりしたもんで、やりたくなかったらやらないじゃん?(笑 
イ” やらないですね(笑 
杉” 作家さんってそうもいかない人も多くて。褒められちゃうと自分で我慢して続けちゃう人とかいるわけ。あきちゃってるのに。でも絶対それは駄目だから
イ” しんどそうっすね。
杉” やめたほうがいい。仕事でお金をもらってるんだったらやらなきゃだめだけど、でもそういうことじゃないから、イガラシ君の場合は。
イ” そうですね。
杉” まあ確かにね、同じシリーズで個展をしようと思ったらイガラシ君は無理なんで(笑 
イ” ですよね(笑 
杉” まあね、だからそういうところは扱いづらい作家さんかもしれないけど(笑 
イ” (笑 
杉” でも、わたしはそこが潔くてとてもいいと思う。あと全部飾るとちょっと無理なくらい量がたくさんあるから。
イ” ごちゃごちゃになっちゃいますもんね。
杉” そうそう、だからあれくらいのボリュームがちょうどよかったんじゃないかなあって思うんだけどね。
イ” 今回、皆さん本当に褒めてくれて
杉” まあまあ腕!?(笑 
イ” やーさすが!加奈子さんの腕っすね!(笑 
杉” うそうそ(笑 

イ” いやいや(笑 そういえば、加奈子さんって写真自体は撮ったりしてるんですか?
杉” あ、撮ってるよ。撮ってるけどわたしは作家になりたいと思ってるわけじゃないし、のんびり。
イ” なんかこう見せたくなったりとかはないんですか?
杉” あんまりないね。あんまりないけど、、なんだろね、わたしにとって写真って。
もともと美術全般興味があって観ることはとても好きだったんだけどね。うちの場合は観る人も来るけどやってる人もいっぱい来るから、、額装のご相談とか、今回みたいにディレクションしたりもするし。だから作家の気持ちがわかりたいなって思って、で、話をするには基礎の基礎の部分はわかってたいなって思ったから写真をはじめたんだけど。
イ” それってけっこー昔の話なんですか?
杉” ルーニィはじめてから。
イ” あー。
杉” 会ったくらいだよ。
イ” じゃあ同じくらいなんすかね?
杉” そう、同じくらい。うちでワークショップやってたから暗室に一緒に入らせてもらったりとか。ピンホールも。ピンホールってすごい基本で〝光がこう入って、これは感材で感材っていうのは光に反応してね〟みたいな、もうほんと物理と化学の
イ” そうですね。
杉” 焦点距離がこれだけだからこう写るんだとかっていうのはどんなカメラになっても同じじゃん?
イ” 応用が効く
杉” そう。応用が効くからと思ってピンホール撮ってみたりしてたんだけど、未だに続いてる。性にあったみたいで(笑 
イ” へーじゃあピンホールで撮ってるんですねー。
杉” そうそう。さいきん岡山と往復するとき飛行機からずっとピンホールで撮ってる。羽なめで雲をみるのが好きだったから、それを何年も撮ってるんだけど。
イ” へー。
杉” あとさいきんね、、
離陸するときに機体が上がっていくと自分がいたところとだんだん離れていくじゃん?その上がり下がりのときに気持ちの切り替えをしてる部分があって。地続きじゃないから、、そういうのがあって、、そのときに今回あったことめちゃくちゃ考える。反省したり、こう接したらよかったとか、なんでこんなこと言われるんだとか、そういうのをものすごい考えてるときの風景って同じ場所なのに見え方が違ったり。逆に東京に着くときに知ってるものが見えてくると気持ちがちょっと変わったりとか、ホッとしたりとか、今からでもいいから岡山帰りたいとか思ったりするわけ。
で、これを撮りたいなって。それはピンホールだと撮れないんだよね。場所が特定できない。ある程度開けておかなきゃいけないから。
イ” そうですよね。
杉” だから行き帰りは35で撮ることをはじめたんだけど。
イ” へー。
杉” でも基本、わたしが写真で撮りたいのって存在感、、なんか
イ” 存在感?
杉” この時間に起きてることは必ず過ぎてゆくことだから、その過ぎてゆく時間を撮りたい。さいきんすごくそう思うようになった。全然動いてていいし、人とか。むしろそういうもんだなっていうのを受け入れたいし。この場所だったり人だったりと一緒にいる時間を長く持ちたいって思うときはピンホールだし。行き帰りは35だし。そこになにかが写るんじゃないかなっていう期待があって。
イ” なるほどー。
杉” そんな感じかな。自分の気持ちがどう写るのかなっていうのを確かめたいっていうか。だから自分の気持ちの記録だよね。やってること一緒かもしれないね、イガラシ君と。
イ” 似てますよね、はなし聞いてると。
杉” 大変な時期は過ぎたんだ。受け入れがたいっていう時期は。前も言ったかもしれないけど、いまは歯磨きみたいに介護ってしないと無理だなってところにいて、ちょっと楽なんだけどそれでもやっぱり気持ちって動くじゃん?それを写真にしたらどうかなって、、実験みたいな感じ。作品にしたいって気持ちはまったくないんだけど、自分の気持ちの記録として残しておきたいなって。
イ” いいですねえ。
杉” いいのかな?
イ” わかんないですけど(笑
杉” それを残してなんになるんだろうって気持ちもちょっとあるんだけど(笑
イ” いや、でも、10年後とか見返したら絶対なんか感じると思いますよ。
杉” そうなのそうなのそうなんだよねー。

kanako