縁のはなし。

長期滞在者

 
ぼくは認知症専門の介護施設で働いている。
入居者さまのなかに
支援するたび
「こんなところであなたのお世話になるなんて夢にも思わなかったわ。これもなにかのご縁だわね。」
そう言って、あははと笑う方がいらっしゃる。
もちろんぼくがどこのだれなのか認知しているわけではないし、決していつも笑顔を向けてくれるわけではない。だけども普通なら交わることのないこのめぐりあわせを、可笑しく、そして嬉しく思う。

*

ぼくはルーニィ247フォトグラフィーというギャラリーではじめて展示らしい展示をした。
友人との2人展だった。
ご来場いただいた方々の中に、写真を撮っているという2人組の青年がいた。ひとりは黙ったままぐるりとギャラリーを2周して、友人の猫のモノクロ写真を指差し片言の日本語で「これ、面白いね。」と言って頷き、先にギャラリーを出た。もうひとりは写真やぼくたちの活動について熱心に尋ね、彼自身のことも話をしてくれた。熱のこもった瞳が印象的で、最後に握手をしたような気がするが、定かではない。
なにごともなく、月日が流れ、6年が過ぎた。
今年の2月、ヒトソラで、熱のこもった瞳が印象的な彼と再会を果たした。
2時間ほど写真のはなしをして
ぼくはアジアンフォトアーツをひとつの活動の場にすることにした。

ヒトソラとは高円寺にあるカフェギャラリー。ぼくはそこで3回の個展をした。オーナーの陽さんをはじめ、たくさんの出会いがあった。ヒトソラは4年前にやはり高円寺でカフェギャラリーを営む百音のあづみさんから紹介していただいた。そして、その百音を紹介してくれたのはルーニィの加奈子さんだった。

そんなこんなでちょこちょことルーニィに顔を出すようになる。
ある日、何気なく立ち寄ると、
気さくに話しかけてくる口が達者な男性と、お淑やかそうな女性がにっこりと在廊していた。
コンセプトが素敵なグループ展だった。
後に開催される2人展にもお邪魔した。
ぼくの個展の設営作業を、偶然居合わせた2人に手伝ってもらったりした。
それ以上でもそれ以下でもなく、ただそれだけだった。
にも関わらず、ずっと気になる存在だった。

今年の2月、町田のSIGHT BOX Galleryで、にっこりと在廊していたあの女性が2人展をするというDMが届いていた。
気がつけば観にゆくことのできる余裕のある日はその日しか残っておらず、でも仕事で疲れていたし、少し遠いし、予定もつまっていたし、様々な理由で行くのをためらっていたのをおぼえている。
結果、小田急線に乗っていた。
来てよかったと思える素敵な展示だった。
それから数ヵ月後
ぼくはアパートメントでコラムを書くことになった。

数年前に友人たちと企てて頓挫した写真雑誌の名前が奇しくもフォト・アパートメント。

点が線になってゆく。
つながりは思い通りに広がってゆくわけではないし、途切れたり、時には意図しないところで歪な形として現れることもある。
良いも悪いも含めて、
無数の奇跡が世界を形成しているような気がしてわくわくする。

実際のことはわからない。
だけど、ぼくは信じることにしている。

「これもなにかのご縁だわね。」と、あははと笑う、あの笑顔を。