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3F/長期滞在者&more

植物の秋。

長期滞在者

夏休み明けから、あれこれ整理をつけようと、
部屋の模様替えをやったり、ヨガと瞑想を再開したり、
日記やメモを今まで以上に詳細につけることにしたり、
アイロン台を買ってきてもっとアイロンがけに時間を費やすことにしたり、
と手を替え品を替え思いつくものは手当たり次第にやっているところなんだけど、
その過程でなぜか、植物との関わりをもっと増やすと良いに違いない、
という確信めいたものが降ってきて、にわかに植物ブームが始まった。

とりあえずまずは観葉植物を導入することにして、近所の店でカルテナ・オルターナをゲット。
なかなか存在感が華やかで良い。
というか、やはり生き物なので、部屋の隅に置いておくだけで部屋の様子がすっかり変わる。
名前をつけようかとも思っているのだけど、なかなかしっくりくるのが思い浮かばない。
最近自分の部屋に出没するようになったイエグモの場合はすぐに
「フジオくん」という名前をすぐにつけられたのだが、
このカルテナちゃんはいつまでたってもカルテナちゃんのままなので、
早くなんとかしたいものだと思っている。

このカルテナちゃんに味をしめたものの、やたらに買い込んで枯らすのも嫌なので、
手入れが割と簡単な多肉植物の導入も決め、
アエオニウムやリトープスなど4種類を試験的に飼い始めた。
プラスティックの鉢に入っていたので余っていた器に植え替えてみたがなかなか見栄えが良い。
というか、本当に手間いらずっぽいので拍子抜けしていたりする。

そして当然、読書もまた植物フェア開催中である。
青空文庫から牧野富太郎の著作をダウンロードし
(今読んでいるのは『植物一日一題』。面白い。)、
キンドルの読み放題で多肉植物と雑草に関する本にザーッと目を通しながら、
そういえばウチには植物に関する本ってないなぁ、
と思っていたら、一冊だけあるのを思い出した。
一年ほど前にブリュッセルの蚤の市で見つけて買っておいた
『薬になる植物』という本だ。
保育社から出ていた「カラーブックス」という文庫本サイズのシリーズの
238番目に出たものらしい。初版は昭和47年1月5日となっている。
子供の頃によく見かけていた野草の効能がわかって、
自然物の有用さ、無駄のなさを思い知らされるようで面白い。
ツユクサは腎臓炎用の利尿剤になるとか、
ホオズキの根は堕胎薬に使われたとか、
オオバコが虫刺されになったり、咳止めにも使われるとかとか。
IMG_1470
薬になる植物 p30-31

その中でも石鹸の代用品になるというサイカチが気になって、
ブリュッセルにもないものかと探してみたら、
なんとなく似てなくもないようなのが、まず近所の公園にあった。
サイカチには長くてねじれた鞘付きの豆がなり
(この鞘を水につけると泡立つのだそうだ)、
幹には大きな棘があちこちにあるのだけど、
ぼくが見つけたその木は鞘付き豆は付くものの、
サイズが小さくねじれてもいない。
そして枝の所々に薔薇と同じような形状の棘が、
まばらについてはいるけど、本物のサイカチの棘と同一視するにはちょっと無理がある。
(サイカチの棘ははっきりととんがっていて釘っぽい。)
あからさまに違う種類の木だとは思ったものの、
もしかしたら、と思い、その茶色くなった鞘豆をポケットいっぱいに詰め込んで、
うちに帰って熱湯を注いでみた。

しかし、しばらくおいておいてもぐるぐるかき混ぜてみても、泡が立つ気配は全くなく、
残念でした、と思って、茶色くなったお湯を流し捨てようと思ったところ、
その液体からなにやら嗅ぎ覚えのある匂いがするので味見してみたところ、
なんと昆布だしの味がする。まじか、と疑いながら何度味見しても、
薄味ではあるけど、確かに昆布だしっぽい味がする。
そしてちょっと塩を混ぜてみたら、それっぽくなってきた。
とはいえ、かなり薄味だし、よく調べたわけでもないので、
ちょっと不安にもなってきて、それ以上の実験は後日に延期することにしたのだけど、
今年の冬は美味しい鍋が食べられるかもしれないとちょっと期待している。
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その後、最近足繁く通っている植物園の売店で見つけた
『Field guide to the wild plants of Benelux』(『ベネルクスの野草ガイド』)
という(かなりニッチな)本で調べたらすぐにこの昆布だしツリーの正体がわかった。
False Acacia つまりニセアカシアもしくはハリエンジュ(針槐)。
サイカチとは全く関係ないらしいw 
ネット検索したら、その蕾を乾燥して子宮出血や切り傷のための薬にするらしく、
豆鞘を昆布だしの代用品にするとはどこにも書いていない。
まあ、毒性のあるものではなさそうなので、まずは味噌汁でも作ってみるとする。

で、実はそのベネルクス本を買った植物園を後日うろうろしていたら、
かなり日本のサイカチに近いアメリカサイカチというのを見つけた。
ニセアカシアとは比べ物にならないくらい大きな豆鞘
(皀莢・そうきょう、というらしい)がなっていたけど、
まだ青々しくて収穫時期ではなさそうだった。
(というか植物園のものを勝手に収穫してもいいのかとも思うが、
ちょっとくらいいいだろう。後学のため、許してもらおう。)
でもあと一月くらいすれば、石鹸の代用品が試してみれそうだ。
実は意外と肌が弱いので、使い物になりそうなら助かる。楽しみ。
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これが石鹸の代用品になる。かも。

これが石鹸の代用品になる。かも。


痛そう。が、この部分が解毒薬になるらしい。

痛そう。が、この部分が解毒薬になるらしい。


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ひだま こーし

ひだま こーし

岡山市出身。ブリュッセルに在住カレコレ24年。
ふと気がついたらやきもの屋になってたw

Reviewed by
カマウチヒデキ

植物そのものには僕は興味が無いんだけれど、『牧野日本植物図鑑』など古書店にあれば手にとってしまうし、いずれは手元にほしいものだと思っている。植物興味ではなく、図鑑興味なのだが。
牧野富太郎といえば図鑑の人、という印象しかなかったのだが、ひだまさんの文中に出て来る『植物一日一題』とか読んでみたくなった。
(とはいえ高野文子『『ドミトリーともきんす』すら中途で投げ出しているのですが)

もうひとつ文中に出て来る保育社のカラーブックス。なつかしい。
こないだ行きつけの古書店で数冊出ているのを見つけてひゃぁ! と声を上げたところだったが、今調べてみたらなんとまだ刊行されてるのですね! 『薬になる植物』も新刊で手に入るのかー。

ひだまさん、「意外と肌が弱いので」から「使い物になりそうなら助かる」の流れが素敵。
意外と肌が弱いなら、普通は試さない、と考えちゃう僕は文明に毒されているなぁ。

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