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ハガキ考

長期滞在者

5614AC77-2601-4B0B-9E5F-A3A1D8E6EC8Cうちで開催する写真展に合わせて、立派な本を出版される方は少なくありません。作品集が、全国の書店に並べられて、多くの人の目に触れ、人の手に渡っていくというのは、いまや幻想もいいところで、だからこそアートブックフェアへ参加したり、展覧会の会場で販売することで、ある程度の数の目処を立てたいのだろうと思います。

出版と展示を連動させて進めていくのは大変なことです。
どういう事情かわからないけれど、出版記念といいながら、本の制作が間に合わず、会場で予約だけ取るというケース、意外と多いです。 ぼくたちギャラリーは、展示の会期が決まったら、基本的に前後に日程をずらすというのは、考えられないことです。編集、印刷、製本のスケジュールが狂ってしまったなど 部外者のぼくからしたら、そんなの言い訳にならない、と思うのですが、こんなのは序の口でもっと酷い話も沢山あります。それこそみなさんがよくご存知の出版社が手がけたものであってもです。

造本を担当したデザイナーが、DMハガキのデザインまでやりたい、というケースもあります。きちんと打ち合わせの席に呼んでくだされば良いのですが、いつのまにか作り始めてしまうと、採用した写真に広報物としての訴求力がなかったり、デザインに凝りすぎて、何の展示会なのかよくわからないものになってしまったり、作品もどきみたいなDMが完成したりして、ああ勿体無いなぁ、と思うことが5割くらいの確率で起こります。

ハガキは、郵送されて直接個人の手元に届くこともあるけれど、印刷した枚数のほとんどは、ほかの会場をはじめとした興味を持ってくれそうな場所に並べられて、不特定多数の人に持ち帰られて始めて、広報としての用を為します。

沢山の広報物と一緒に並べられた時に、このハガキがどのように見えるのか、と少し考えると、図版の扱い方や、タイトル文字の被せ方など、方向性も定まってくると思うのですが、デザインの方向性としては、一冊のモノとしての魅力を高めていく仕事と、展覧会や出版物刊行の周知をするための仕事はゴールが違うので、その辺をもう少し理解してくれたら良かったのに、と思うことは良くあります。

1枚のハガキに、作家さんは色々な想いを載せて配ることと思います。想いを寄せている人が脚を運んでくれなかったとしても、記憶に残るハガキ、記憶にすら残らないハガキ、色々あります。展示に行ってみようと思うアクションを起こさせるのが一番とは思いますが、せめて他人の記憶に飛び込んでいくようなハガキくらいには、なって欲しいといつも考えています。

篠原 俊之

篠原 俊之

1972年東京生まれ 大阪芸術大学写真学科卒業 在学中から写真展を中心とした創作活動を行う。1996年〜2004年まで東京写真文化館の設立に参画しそのままディレクターとなる。2005年より、ルーニィ247フォトグラフィー設立 2011年 クロスロードギャラリー設立。国内外の著名作家から、新進の作家まで幅広く写真展をコーディネートする。

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