「この世界で起きている事実と、未来への希望を音楽で伝えていくことは、必ず明日へ光をもたらすことでしょう。」【MIYAVI「Long Nights」(2016年8月31日リリース)】

長期滞在者

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世界は平和じゃない。

さっきまでSkypeで話していた国でクーデターが起こった。
ほんの数分前まで楽しく会話をしていた、大好きな彼女が住む国での異変を伝えるBBCの速報に、私は青ざめた。

「今日の様子は?」
「大丈夫よ。私たちは変わることを願っている。」
「あなたの国が平和であることを祈っているわ。」

クーデターが起こってから。
私と彼女は連日この会話を繰り返した。

2017年11月20日。
「今日のあなたの予定は?」
「今日はね、日本のミュージシャンが、日本人初となるUNHCR親善大使に任命される日なの。
私はその任命式の後に、Facebook Liveでインタビューをするためにこれから記者会見の会場に行きます。」
「その生中継、私も見るわ!」
「本当に? すごく嬉しい、ありがとう。行ってくるね。」

ジンバブエに住むジンバブエ人の彼女とは英語の勉強で日々話している。
彼女とのSkypeを切った後、私は日本記者クラブへ向かった。

日本から遠く離れた国で見守ってくれている彼女に、私は何を伝えることができるだろう?
明日がどうなるかわからない国で生きている人に、力が湧いてくるような生中継を届けたい。
そして、日本人として初のUNHCR親善大使の誕生をきっかけに、これまで難民問題に関心がなかった人にも伝わるように、
今日に至るまでに私が身に付けてきたことで、全力を尽くそう。
私はこの日、そんな想いを抱いていた。

任命式を終えた直後、Facebook Liveが始まり、最初に今の想いを尋ねた時にこんな言葉が返ってきた。

「本当に光栄に思っています。よくおめでとうございますと言われるんですけど、
実際はめでたくない世界なので、僕たちのような役割が必要であって、
本当にいつか僕たちがいらなくなる日まで、自分にできることを全力で全うしていきたいと思います。」

そう、世界は平和じゃない。
だからこそ、伝えていかなくてはいけない。

「世界は本当に平和になったね」と、微笑み合える日まで。

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ヨルダンで出会ったシリア難民の人たちの話をする時には、
一緒に行ったフォトジャーナリストの佐藤慧が撮ったこの写真を必ず使っている。
アズラック難民キャンプで出会ったこのおじいさんは、「日本のことは知っているよ!」と言ってくれた。
私はこの写真を見せながら、「では、このおじいさんは日本の何を知っていたのでしょうか?」と、
私の話を聞いてくれている人たちに問いかける。

「おじいさんは、『日本は70年間戦争をしていない国だろ!』と言ってくれました。」

私がこう話すと、小学生でも、大人でも、その場の空気が一瞬しんとなる。
誰もがこの答えを予想していなかったのだ。

日本からは遠い国と思われているシリアで、紛争から逃れて難民キャンプで暮らしているおじいさんから、
「日本は70年間戦争をしていない国だろ!」と言われたことは、私の心に深く残っている。
もしも、日本が何らかの争いを起こしたら、彼はどれだけ悲しむだろう。
平和を守らなければいけない。それは、私にとっては、このおじいさんが嘆くようなことはしたくないと同義だ。

2017年12月7日、Zepp DiverCityでのライブで、
MIYAVIは、2017年11月20日に、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)親善大使に就任したことを伝えた。

それはライブの中盤でのMCだった。
この日のライブは、「Dancing With My Fingers」から始まり、
2017年11月8日リリースのアルバム『SAMURAI SESSIONS Vol.2』に収録されたナンバーを立て続けに披露。
始まりからトップギアに入ったライブで、彼の音楽を求めてきた人たちで隙間なくびっしり埋め尽くされた会場は、
踊り、歌い、まるで真夏のフェスのような熱気に包まれていた。

音楽の楽しさが湧き上がっているオーディエンスに向けて、
MIYAVIは、難民支援への想いをストレートに語り、「The Others」を演奏した。
幾度となく聴いてきた「The Others」は、これまでの「The Others」から遥かに進化していて、
ほとばしる生命力と光を感じた。
MIYAVIの確固たる決意と、その想いを広げていく力強さを、私はこの日の演奏から感じずにはいられなかった。
何より、この曲を共に歌うオーディエンスの姿が私にはとても感動的だった。

平和、戦争、難民。
そういう話をすると、相手の空気が変わることは、もう何度も経験してきている。
関心がある人に話す時でさえ、そこには、“構え”を感じる。
ましてや、日常の中でこういった話題を出すと、まず目の前の人の顔がこわばる。空気が変わる。

日本において、日本人ミュージシャンが、これらのことに触れ、
その想いを込めた曲を演奏する時、それまでライブを貫いていた空気がその瞬間だけ変わる。
まるでそこだけが、別の次元であるかのような変化を私は幾度となく見てきた。

しかし、この夜のMIYAVIのライブには、音楽のことも、世界のことも、何もかもが当たり前のようにそこにあった。
私は日本人ミュージシャンでそのような光景をライブで作り上げる瞬間を、この夜、初めてMIYAVIのライブで体験した。

変われるかもしれない、と思った。
世界で起きていることへのメッセージと音楽が共存するライブが、
この日本でも多くの人に、当然のこととして受け止められる空気に、彼の音楽が変えてくれる。
そう信じられる音楽のライブが目の前に広がっていることが、嬉しくてたまらなかった。
何よりも彼のライブは楽しい。その楽しさの中に込められた想いが広がっていくことを、私は願ってやまない。

「The Others」に続けて、彼がレバノンの難民キャンプから帰ってきてから作った曲、「Long Nights」が演奏された。
この2曲が続けて演奏されたことに、私は心を震わさずにはいられなかった。

「Long Nights」は、2016年8月31日にリリースされたアルバム『Firebird』の9曲目に収録され、
2017年4月5日リリースされたベストアルバム『ALL TIME BEST “DAY 2″』でも聴くことが出来る。

さらに、2017年11月8日に発売したニューアルバム『SAMURAI SESSIONS vol.2』の配信版限定のボーナストラックとして、
日本でも公開されているドキュメンタリー映画『ソニータ』の主人公、
Sonitaがフィーチャーされた「Long Nights (feat. Sonita)」が発表されている。

アフガニスタンのタリバンから逃れてきた難民であるSonita。
アフガニスタンからイランに逃れ、女性が歌うことを許されないイランでラッパーになる夢を叶えるために、
懸命に生きる彼女を描いたこの映画を観て、
私は、平和の中で音楽を奏でる自由が、いかに恵まれているかということを痛感した。
全てのミュージシャン、全ての音楽ファンに観て欲しい作品である。
困難の中にあっても、音楽への情熱を決して手放すことなく、自らの力で人生を切り拓いている彼女は、
「Long Nights」という楽曲の世界で、MIYAVIの熱情の音色と共に、揺るぎのない意志を鮮明に告げている。

「Long Nights」は、この夜のライブで、もう一度聴くことが出来た。
アンコールで、アコースティックバージョンで披露されたその曲は、
パープルのライティングの中で、彼の人間性を伝える優しくて温もりのある演奏だった。
同時に私は、響いてくるギターの旋律、その歌声を聴きながら、
2017年11月20日に、彼の間近でインタビューをした時に受け止めた、
話す言葉の全てに込められていた、溢れ出るあの真摯な熱い想いが身体の中に蘇ってきていた。

世界は平和じゃない。
この言葉を聞いたら、不安に感じる人が多いと思う。

けれども、今の私は、現実に起きていることから目をそらしてしまうことの方が怖い。
だから私は、事実を出来る限り知り、理不尽を受け止め、その上で何ができるかを考えている。

テレビのスイッチを消すように、その事実を見ないようにしていても、何も変わらない。

世界は平和じゃない。
そうはっきりと受け止め、言葉にした上で、行動を起こす。
そしてそれを、音楽を通して伝えていこうとするMIYAVIの姿に、私はどうしたって魅力を感じる。
ラジオDJとして「音楽があなたにとっての味方でありますように。」と言い続けてきた私にとって、
こんなに心強いUNHCR親善大使が存在することは、困難を超えられる希望でしかない。

この世界に音楽が鳴り響く限り、
もしも来年が、今よりも平和じゃなくても、私は明日を信じている。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪イントロ✕13秒〜24秒に乗せて)

日本人として初めて、国連の難民支援機関UNHCRの親善大使となったMIYAVI。
この世界で起きている事実と、未来への希望を音楽で伝えていくことは、必ず明日へ光をもたらすことでしょう。

MIYAVI「Long Nights」