夢の中でエレベーターに乗ることによる分岐点の出現について

長期滞在者

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夢の中でエレベーターに乗ってしまうと
いつも強制的に別の夢に連れて行かれてしまう

夢の続きに戻れるだろうかと たまに
階数を思い出したり数えなおしたり
エレベーターを乗り換えたりするけれど
知らない人たちが次々と乗り込んできては
ぎゅうぎゅうと私を奥へ奥へと押し込む

エレベーターが消えると それはもう 
あの夢の終わりでこの夢の始まり

またいつかあの場所に戻ろうと
かろうじて記憶の崖を霞め留めて
落ちていく

日に幾つも夢を見て そして 
夢の途中で夢の世界が変わったことを
自覚することはよくあるけれど
別の夢に転換することを予見できるのは
エレベーターが目の前に現れた時だけだ

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脳はいかづちの巣巣 
悲喜こもごもも刹那に忘却
響き轟き 連々と
永劫無量劫三千塵点劫

錯覚に優劣はあるのか
脳を騙し脳に騙され
視覚を仕舞い
聴覚は狂いをどり
嗅覚も削がれて
触覚に味覚を蝕まれる

紐解き
緩み
散り散り

指先に経験を蓄積し
心臓に判断力を与える
肺胞が知識を包み込み
脂肪が感覚を高める

最早
クローンでも
クローンらしきものでも

その軌跡は暗澹たる奇跡
テロメアの悲劇を知る者よ

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目の前の貴方をただ抱き締めて
雫を飲み干し巡らせよう

エミュの卵は深い闇知る翡翠色