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向上心って一種の病気?

はてなを浮かべる

1-8
すべてが等しく切り分けられるべき?
   
   
   
1-6
どうでもいいことをどうでもいいと、思う工夫をしなければ 思考はたやすく連れていかれる?
   
   
   
1-12
向上心って一種の病気?
   
   
   
1-7
柔軟でいようとすることが僕を弱者たらしめている?
   
   
   
1-3
他人にばかり測られすぎて参ってるのかな?
   
   
   
1-5
自分のルールばかり逞しくなっていくのか?
   
   
   
1-9
つねに僕の脳みそ肯定してくれない?
   
   
   
1-2
解決しないものを解決しないまま 抱えていってもいい?
   
   
   
1-11
傷付いてないふうに反射で笑う これはどこで習ってきたんだ?
   
   
   
1-4
囲いの中に収まって いつかもの言わぬ顔をするのか?
   
   
   
1-10
思考にまみれるから呼吸が下手なの?
   
   
   
1
蒸気みたいに漏れでるばかりで はてなは水子になってしまった?
   
   
   
   
   
   
 < つづきのはてな >

わかばやしまりあ

わかばやしまりあ

描いたり食べたり生きたりしている

Reviewed by
さかいかさ

「師匠、ずいぶん静かでゆっくりとした町ですね。それになんだかみんなボクらを見てますよ」
「うむ、きっとワシらの声がうるさいんじゃ」
「でも師匠、ボクらそんな大きな声で喋ってませんよ」
トマト師匠と弟子のタイポがやってきたのは『ハート・ヴォイス・タウン』。心の声で話す町。
「タイポよ、この町の人たちは心の声で話すんじゃ。ほら、町の人を見てみろ。口が動いてないじゃろ」
「あれ、本当だ。口が動いてません。しかも体の動きがすごくスローですね。でも本当に心の声で話せるんですか?眉に唾ですよ。ぺっぺ」
「本当も本当。以心伝心、テレパシー。超感覚的知覚じゃ」
「う〜ん、信じられませんよ〜」
「こらこら、そんなこと言っていても、町の人たちにはおまえの心の声が筒抜けなんじゃからな」
「べ〜ぶぶぶぶぶぶ〜」
「こら!タイポ!!」
トマト師匠は勢いよく口から種を飛ばした。種がタイポの顔を無慈悲に連打した。タイポは泣いた。
「すいましぇんよ〜」
「タイポよ、後学のためにひとつ教えておいてやろう。遠い昔、ワシらも心の声で話すことができたんじゃ。でもワシらはそれを止めた。ワシらの心は複雑過ぎたんじゃ。寄せては返す、まるで波のようなワシらの心では会話なんて到底できなかったのじゃ。それに何よりワシらは心以上にカッコつけたかったんじゃ」
「カッコつけたいですか?」
「つけたい。そう、ワシらは生粋のカッコつけじゃ。心が見られてはカッコがつかない。心意気に心が見えてはいかんのじゃ」
「師匠、ちょっと難しいですよ」
「じゃろじゃろ、だったら試してみるか?」
「試すって?」
「心の声で会話じゃ。試してみるか?」
「できるんですか?」
「できるんじゃ」
「どうやってです?」
「このアメ玉を舐めてみろ」
トマト師匠の手に水色のアメ玉があった。アメ玉の中央に白い小さなハートが浮かんでいる。
「師匠、これは?」
「心の声が聞けて話せるようになるアメ玉じゃ」
「どうしたんですか?これ」
「うむ、町の入口の売店で買ったんだ。旅行者用の土産じゃ」
「そういえばさっき入った店で、なんだかうれしそうに買ってましたね。ひょっとしてこういう風にアメ玉を出そうと、、、最初からすでに考えてました?」
「タイポよ、そんなことは、どうでもイイ!」
「しかしキレイなアメ玉ですね。絶対これソーダ味じゃないですかね?ボク、ソーダ味大好きなんですよ。それじゃ、おひとつ」
「待て待てタイポ、舐める前にひとつ言っておくぞ。心の声で話すのは思うより難しいんじゃ。できるだけ心をシンプルにしないといけないぞ。この町の人のように心静かにシンプルに。それをちゃんと考えるんじゃ」
トマト師匠とタイポは、ぽいぽいとアメ玉を口に放り込んだ。口の中にシュワシュワが広がった。予想通りの甘いソーダ味だった。
「師匠」
(ああ、右手がカユい。カユい。なんでこんなカユいんだろ。うわ、なんかちょっと赤くなってる)
「タイポよ。そんなカユいのか」
(ちょっとワシは腰が痛いな。なんかアメ舐めたら小腹も空いてきた。腰痛空腹。空腹腰痛。腰痛からの空腹。空腹。見上げた空が腹だったらワシ笑うな。たぶん笑うな)
「師匠、何くだらないこと言ってるんですか?」
(それにしても師匠の顔って赤いし変だよな〜それに眉、あの眉、赤で眉で変。赤眉変)
「タイポ、そんな風にワシのことを思っていたのか?」
(って、べつに怒ってないけどね。ワシの顔が変なのは知ってるし、何年この顔と付き合ってると思ってるんじゃ。あ、タイポがすまなそうな顔してる。顔がSorryってなってるもん。あ、今度はReally?ってなった。そもそもタイポは顔がタイポグラフィだから、何も言わなくても顔見ればすぐわかる。あ、YESってなった。あ、虫飛んでる。なんだホコリか。虫じゃなくてホコリか。むしろホコリか。これギャグじゃ。ギャグ発見。ただいまギャグ発見。虫ろホコリ)
「師匠、頭痛くなってきました」
(耳栓が欲しい。心、予想以上にうるさい。特に師匠の心うるさい。うるさいそばからすぐうるさい。あ、あの建物すごく変わってるな。でも昔、見た気もする。風だ。あの靴、いいな。うん、オレンジか。待てよ。そうかこの記憶は、その辺りでまとまるのか。これメモだな。あ、メモない。覚えてられるかな)
「タイポよ、会話無理じゃろ」
(タイポ、ワシ無理じゃ。心の声、聞こえるの無理じゃ。偉そうに心シンプルにとか言ったけど無理じゃ。恥ずかしすぎるしうるさすぎる。師匠の貫禄がまずい。安らかになりたい。うん?安らかってどういう気分じゃったか。奥義使ってここから逃げていいかな?あの奥義、何番じゃったかな。奥義沢山あり過ぎて番号忘れてしまうんだな。時々、適当に番号言ってるけど、タイポにはきっとわからんし。右手から上げるんだっけ、あれ左手だっけ)
「師匠、早く奥義使ってください」
(はやく、はやく、はやくからのはやく。是が非でもはやく。あ、師匠のまわりにコバエがたかってる。じゃない。はやく。手で払わなくていいからはやく。むしろはやく。これギャグじゃないし。あ、師匠、にんまりしてる)
「はてな拳奥義!その三万とんで十四!そしてモグラは行進した」
(よし地中深く潜って心の声を遠ざけるんじゃ。ほれ、掘って掘って掘りまくりじゃ。どうじゃ、行ったか。心、遠く行ったか。あ、来てる心。すぐそこ来てる。というかここにあるんじゃ。心すぐそば。すぐそこ。いや、心すぐ底じゃ。掘って掘って、底を目指すんじゃ。そこどけ〜、そこ底。ギャグ発見。ただいまギャグ発見)
「師匠!!!土の中入っても師匠がすぐそばにいたらうるさくてかないません。すぐ、すぐ出てください」
(奥義頼りになんな〜い。ボク、弟子で大丈夫?ボク弟子OK?ボクデシオーケー?ボクデシオ。ちがうちがうボクタイポ。あっぷ、あっぷ、土の中真っ暗だし、さっきから土が顔にかかる。あ〜土臭い。ミミズいっぱい顔につくし、こわい、こわい。暗所閉所が怖くなる。コラショ!ヘイショ!)
「だめじゃ!地中から脱出!そして間髪入れず、次の奥義じゃ。はてな拳奥義!その六千とんで五十八!馬鹿になる無心それは悟りか?」
(これで無心になって、心の声を消すんじゃ。ワシは馬鹿じゃ。馬鹿になったのじゃ。心は無心に無垢に。より無心に無垢に。さらに無心に無垢に。し〜ん。サイレント。そしてサイレントし〜ん。サイレントでサイモンで、サウンド・オブ・サイレンスで、完成。イッツ・ア・サイレントサイモン!イエー!)
「師匠!!!無心の馬鹿になってるの顔だけですよ」
(あぁぁ、師匠、ほんと馬鹿顔。バカモンのバガボンドのバカモンドだ。家帰りたい。ふいに家帰りたい。まず肉じゃが。やっぱシチュー。シチューそしてチュー。彼女欲しい…)
「よし!タイポ。良く聞け!とりあえずこの町から脱出じゃ。アメ玉の効果が切れるまでの辛抱じゃ。今から、こんにちわ、さようならを繰り返すんじゃ。声に出しながら、心も同じように考えるんじゃ。いいな?よしやるぞ」
「こんにちわ、さようなら。こんにちわ、さようなら。こんにちわ、さようなら」
(こんにちわ、さようなら。さようならってなんか子供の頃、思い出すな。なんだろノスタルジーだな。これノスタルジーだ。ノスタルジー、ノスタルジャン。ノスタルジャンのヨコスカジャン。あ、だるい。ちょっと、だるい)
「師匠、無理です」
(ムリ、ムリ、マヤコン。魔法欲しい。奥義より魔法欲しい)
「タイポ、あきらめるな」
(あきらめたらそこで試合終了じゃよ。じゃよ。じゃよ。言いたい。いつか言いたい。師匠っぽく言いたい。むしろ先生っぽく言いたい)
「師匠、アメ玉の効果はいつまで続くんですか?」
(いつまでも〜か〜ぎりなく〜ふり〜つもる、ゆ〜きとあなたへの思い〜。でちゃった。歴史のどっからかでちゃった)
「24時間じゃ」
「ひでぶっ!」
(ひでぶっ!)
「タイポその調子じゃ!声と心が一致したぞ。そら、こんにちわ、さようなら」

「こんにちわ、さようなら。こんにちわ、さようなら。こんにちわ、さようなら」
(こんにちわ、さようなら。こんにちわ、さようなら。こんにちわ、さようなら)
「こんにちわ、さようなら。こんにちわ、さようなら。こんにちわ、さようなら」
(こんにちわ、さようなら。こんにちわ、さようなら。こんにちわ、さようなら)

二人はまるで疾風のように『ハート・ヴォイス・タウン』を走り去っていった。
心をシンプルに穏やかに保てれば、この町には他にはない素晴らしい場所がいくつもあったのに。
(そもそもアメ玉舐めなければ良かったのに)
町の人々は騒がしく去っていく彼らにゆっくりと手を振った。
(心忙しい人たちよ、さようなら、そして、さようなら)

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