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3F/長期滞在者&more

福岡にて

長期滞在者

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少し前に福岡のホテルフェアに参加してきました。ホテルのワンフロアーを貸し切りにして、ひとつひとつの客室に各地から集まってきたギャラリーがそれぞれの部屋の中で自分たちの扱っている作品を展示します。お客様にとっては、一度に沢山のギャラリーを回ることができますので、アートには関心があっても、どこのギャラリーに行けば良いのか全然わからない人でも、このイベントに来れば、一度に沢山のギャラリーと作品に出会うことができますので、お気に入りの作品を見つけやすいという利点があります。ぼくたちにとっても、九州に深い繋がりがないため、うちが関心を持っている作家さんのことを理解してくださるお客様と出会って行くには、良いチャンスではないかと思って参加してみました。

ギャラリーがフェアに参加する理由はひとつではありません。そのお店によって関わり方も大きく違います。年間にいくつも各地のフェアを回りながら、年間の売り上げの相当をフェア期間中に賭けているという人もいますし、「有力な」フェアと言われるものにチャレンジを重ねることで、ギャラリーとしてのステイタスを向上させたいと考えている人もいます。取り扱う作品のジャンルも、価格帯も様々で、数百万円クラスの作品をずらりと並べるところもあれば、そういうギャラリーごとの考え方の違いを見ることで、自分のギャラリーの方向性なども明確になり、また多くのお客様との出会いを通じて、ぼくたちのやり方に対してさらに自信を深めることにも繋がりました。

ギャラリーとして、主に誰に向かってメッセージを届けたいと思うのか?とにかく広くたくさんの人たちに思いを伝えたい、という漠然とした考えはとっくの昔に通用しなくなっています。作家さんとお客様を繋ぐのがぼくの仕事であるならば、「誰に?」はとても大切なキーワードになります。うちは、街の中にある小さなギャラリーであって、これからも普通の街中にあるギャラリーとしてのスタンスは崩したくはありません。とびっきりのエクゼクティブクラスに訴えかけるような作品ではなく、日々の生活の中に取り込めるような作品を毎日コンスタントに売っていきたい。普通の人には、アートは見るだけのもので、コレクションすることは自分には関係ないと、他人事のように感じている大多数の人たちにも、実は簡単に手に届く領域があったり、ちょっと背伸びして頑張れば、こんな作品も自分のものになるのか、ということを感じてもらえる場でありたいと思うならば、自ずと社会の中で向き合うべき人々のレイヤーは限られてきます。

ため息をつくばかりの金額の作品を沢山見続けたあとに、うちの部屋を覗いてくれたお客様が、
「ここはとてもホッとする、私のような人は来ちゃ行けないイベントなのかと思っていたら、こういうギャラリーもあるんですね。」といって、楽しそうに作品を選んで買ってくださったお客様が何人かいました。いまのスタンスでもう少し頑張れそうだ、という実感を強く持てたとても実りのある滞在でした。

篠原 俊之

篠原 俊之

1972年東京生まれ 大阪芸術大学写真学科卒業 在学中から写真展を中心とした創作活動を行う。1996年〜2004年まで東京写真文化館の設立に参画しそのままディレクターとなる。2005年より、ルーニィ247フォトグラフィー設立 2011年 クロスロードギャラリー設立。国内外の著名作家から、新進の作家まで幅広く写真展をコーディネートする。

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