友人のひとりが写真館の息子だったらしい。おかげでアルバムにはたくさんの写真が貼られていた。その写真館は夜になると(親には内緒で)ダンスフロアとして開放したりなんかして、当時流行っていたブルースを夜通し踊ったもんだと、愉快そうに話してくれた。
戦時中、はなればなれになり遂に再会できず終いだった初恋のひと
今なら簡単に治る病気が原因で八つのときに亡くなった歳の離れた妹のこと
今回協力してくださったおじいちゃんは現在九一歳。これらは七十年近く前のこと。写真の中の大部分の人はもうこの世にいないことを、寂しそうに、だけどもその全てを納得したような偉大な眼差しで話してくれた。
「でも、まあ、どうせみるなら愉しい夢のほうがいいやな。」
そう言って、ケラっと笑った。