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3F/長期滞在者&more

夢のまた夢、とは

長期滞在者

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友人のひとりが写真館の息子だったらしい。おかげでアルバムにはたくさんの写真が貼られていた。その写真館は夜になると(親には内緒で)ダンスフロアとして開放したりなんかして、当時流行っていたブルースを夜通し踊ったもんだと、愉快そうに話してくれた。

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記憶を遡る。

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仲間たちとドンチャン騒ぎした日々のことだったり

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二十代半ばで恋人と心中してしまった親友のこと

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戦時中、はなればなれになり遂に再会できず終いだった初恋のひと

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クソッタレの戦争

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弟を戦地に送り出したときのことや

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帰ってこなかった友人たちのこと

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今なら簡単に治る病気が原因で八つのときに亡くなった歳の離れた妹のこと

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情け深い母に

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真面目だった父のこと

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今回協力してくださったおじいちゃんは現在九一歳。これらは七十年近く前のこと。写真の中の大部分の人はもうこの世にいないことを、寂しそうに、だけどもその全てを納得したような偉大な眼差しで話してくれた。

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「過ぎ去ってみれば全て夢みたいなもんだ。」

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そう呟き、もう一度、写真に目を落とす。

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そして

「でも、まあ、どうせみるなら愉しい夢のほうがいいやな。」
そう言って、ケラっと笑った。

イガラシ タカヒロ

イガラシ タカヒロ

1977年、新潟生まれ。
東京在住。
写真やら介護やら。

Reviewed by
わかばやしまりあ

積み重ねてきたような感覚で生きている。
今まで自分が撮りためてきた写真を見て、また、祖母の古いアルバムを見たりして。比べるように、今目の前で茶をすする祖母や、祖父の遺影の前に座る自分を宙からぼんやり眺めたとき。「積み重ねて」きたという感覚がある。

でももしこの積み重ねた先に思うことが「それらは夢」なんだとしたら。この、積み上げてきたイメージを眺めるときの、なんとも言えない尊さだって一瞬で波にさらわれて消えちゃうのかもしれない。
「そんなの、あんまりだよ」って今の自分は思うかも。
でも遠い未来のシワシワになった私は「そんなもんさ」って笑うのかもしれない。
そんな風に受け止められるまで、あとどれくらいの時間を生きるんだろう。

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