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占い師や探偵という仕事

深夜図書室

最近、ぼくの周囲では占いをはじめようとする人が増えてきたように思う。たまたまかもしれないけれど、友人のうち3人が誰かを占うことへの高い関心を持っているんだ。

占い師ってどんな仕事なのだろうね。
それほど詳しくはないのだけど、想像してみると、まずは相談者の「話を聞くこと」からはじまるのかな。

その人の抱えている悩みや不安を受け止めること。
そして、星占いや動物占いなど、なんらかの占いのロジックを足場にして、その人を応援する言葉を伝えること。

きっと「私はこう思う」ではなくて、「あなたは〜でしょう」と二人称で。

あなたは、きっとこういう気持ちを抱えていたことでしょう。
あなたは、以前からこういうところがあるでしょう。
あなたは、きっと将来はこういう事があるでしょう。

僕もね、毎週しいたけ占いを読んでいるんだ。

VOGUEのLINEアカウントを登録しているから、毎週月曜日の昼12時にしいたけさんからの占いが届く。

ウェブサイトにこちらから訪問するのではなくて、スマホの通知で届く「あなたはよくがんばっていますよ」という事を、手を変え品を変え、毎度新しい表現で伝えてくれるメッセージは、その届け方自体が占いという営みの一部なのだろう。

僕の中で占い師というのが職業として成立しているのを知ったのは、中学生のときに読んだ小説なんだ。

それは所謂ミステリーなのだけど、その主人公である御手洗潔(みたらいきよし)は占星術の使い手だった。

生年月日と生まれた地域、時刻を伝えると、「嗚呼、彼女は暴力により危険死する可能性が高い。気をつけるんだ…!」なんて事まで彼にはわかってしまう。

その御手洗潔がなんでミステリーの主人公である探偵になったのかというと、とある事件に関わった際に、「占いだけをするのではなく、直接誰かを救いたい。僕自身が行動をしたい」と考えたからなんだ。

おぼろげな記憶なのだけど、そう語った御手洗潔はたぶん東京タワーから夜景を見下ろしていた。美しくその夜景のひとつひとつの明かりに、それぞれの暮らしや仕事があり、カメラをズームすると、ただ温かいだけではなく、当たり前のように苦しみや悲しみを抱える人達がいる。

その人達の直接的な力になりたい、と彼は思ったんだ。

数々の事件を解決する名探偵は、日本中を駆け回るのだけど、そこで犯人に告げる言葉はやはり「あなたは〜でしょう」だ。

あなたは、こう考えて犯罪に臨んだのでしょう。
あなたは、こういうトリックを使ったのでしょう。
あなたは、今こういう心境でしょう。

あれ?

なんだか、どこか占い師の人がかける言葉に似ているね。

あなたはよく頑張りましたね。僕にだけはそれがわかっています…さあ警察へ…

占い師が相談する人の理解者として振る舞うように、探偵は犯罪者を一番理解する存在になる。

対象となる人がいなければ占いができないように、犯罪が起きなければ探偵は存在できない。

こういう、目の前のたった1人を理解するお仕事は、それはやりがいがあるだろうね。

100万を超えるユーザーいるけれど ひとりの顔も僕は知らない

このまえこんな短歌をつくった。10年以上前に大きなサイトの運営をしていた当時の僕は、自分の仕事に手触りや実感がほしかったのだ。

とはいえ、僕はこの手の、たった1人を理解するような事が不得手かもしれないと思いはじめている。

いつも頭は抽象的な事をふわふわと考えているし、なんなら脚は地面から3cmほど浮いているんだ。

目の前に大事にしたい人がいてもね。

ベンチャー企業としてプロダクトを作るときには、たった一人の誰かに届ける気持ちで…とよく言われるけど、それもなかなか難しいものだね。

サリンジャーの「フラニーとゾーイー」には、妹の精神的危機を助けようと言葉を尽くし、ついには電話一本で成し遂げるゾーイーという人物が登場する。

中学生の頃に、僕はゾーイーになりたかったのを今思い出したよ

いつか僕も占い師や探偵に、誰かの理解者になれる日が来るだろうか。

ではまた、いつかの夜に。

とうどうやすひろ

とうどうやすひろ

1981年生まれ。自身のうつ経験をもとにした会社「U2plus」を創業、その後株式会社LITALICOへ事業譲渡。株式会社CAMPFIREにて「GoodMorning」をつくる。2020年4月に株式会社かいじゅうカンパニーを創業。

仕事は上手ではないが、仕事を考えるのは好き。

Reviewed by
moto

占い師も探偵も、人の心に憑依して答えを導き出すという意味では、人に向き合うという骨の折れることを生業とする同類の仕事なのだろう。

100万のユーザーを笑顔にしていても、目の前の人の表情は分からない。

誰かを幸せにすること、そのために全身全霊を尽くしているけれど、目の前にいる"誰かではないその人"に寄り添うのは難しい。

一番救いたいのは誰なんだろう。一番知りたいのは誰の心なんだろう。

それが分からないから、今日もまだ見ぬ100万の人達のことを考えるのかも知れない。

いつか誰か目の前の一人を救うために、そのために、闘っているのかも知れない。

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