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夕方のけむり

図書館の中の暴風

「図書館の中の暴風」は、わたし(中田幸乃)と坂中茱萸さんが毎月第二金曜日と第四金曜日に交互に更新する、交換日記のような連載です。

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茱萸さんこんばんは。

庭先に、紫色の花がたくさん咲きました。雪の降る日と、春のような日が交互にやってくるような冬だったので、しばらく疑っていたけれど、いよいよ春がやってきたようです。誰が植えたわけでもないこの花の存在がうれしいよ。春です。

最近は色々と環境の変化があって、まずは、ここでも何度か書いたアルバイト先が、鮮魚売り場から惣菜売り場に異動になりました。毎日落ち込んでいます。もう、マヨネーズをのせた食パンを魚焼きグリルで焼いてみんなで食べたり、チーフ(65歳)がパチンコで得た知識を駆使してエヴァンゲリオンのキャラクターの台詞を言うのを聞いたり、魚の名前を教えてもらったり、食べ方を教えてもらったり、できない!今は、毎日怒られて、しょんぼりしています。自分にできる仕事なんて存在しないような気がしてくる。

でも、毎日、辛いなぁって考えてばかりいたら、できることを増やしてみよう、という気持ちに行き着いたりします。それで、避け続けてきた車の運転も始めました。まだ職場に行くだけで精一杯だけど、「これから、自分の力でどこにでも行けるようになるんだ」と思えることで、ほんの少し、からだが軽くなる。実はまた本の店をやりたいなと考えていて、というか、パートナーがそうできるようにサポートしてくれているので、頑張ってみます。始めるならば、続けたいな。パートナーは佐渡に来て店を始めて、4年…5年目かな、になるのだけど、店を続けてきたということが、彼の大きな芯になってきたように感じています。揺らぐ気持ちを抱えて生きてゆくならば、自分で自分を信じてあげられる何かがあるといいよね。

そうそう、実は家の引っ越しも考えています。今の家は、日当たりが悪い、本がカビる、というかあらゆるものがカビる、外より寒い、という問題点があるのです。あと床に穴が開いた。でも、薪で焚くお風呂は気に入っていて、夕暮れ、煙突から煙が立ち上る様子を眺めていると、なんだか、しみじみとしてしまいます。うまく言葉にできないけれど、とてもいい風景です。それに、越してきてから、かなり掃除・整理整頓をしたので、随分生活しやすくなってきてはいるのです。わたしも茱萸さんと同じく、シンプルで整った部屋で暮らしたい願望がありますが、茱萸さんと同じく、お金がなく、加えてセンスもないので、ただただ殺風景な部屋で暮らしてきました。今の家は、無数のフィギュアやら謎めいた雑貨やら自作の楽器(茱萸さんの同居人おもしろすぎる)はないものの、(整理したとはいえ)物が多く、生活がむき出しになっているような空間で、理想とは違います。でも、違うけれど、これまで暮らしてきた家の中で、一番居心地が良いことには気付いている。日当たりは悪いけど、床にでっかい穴があるけれど。生活をよりよくするために引っ越しを考えてはいるけれど、この家のこと、本当はすごく好きなのです。

さて、先日観た映画「WAVES」のことを書こうと思っていた(佐渡にある映画館で観ました)けれど、気力が尽きたのでここで終わります。ねこが、カメムシを触った自分の手の匂いに驚いて、走り回っています。悲しい声で鳴いているけど、どうにもしてあげられんよ。

それでは、また。

本棚の間を歩きたがる
中田 幸乃

中田 幸乃

1991年、愛媛県生まれ。書店員をしたり、小さな本屋の店長をしたりしていました。

坂中 茱萸

坂中 茱萸

短歌同人「えいしょ」所属の歌人未満です。

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