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図書館の中の暴風

図書館の中の暴風

はじめまして。「図書館の中の暴風」は、わたし(中田幸乃といいます)と坂中茱萸さんが毎月第二金曜日と第四金曜日に交互に更新する、交換日記のような連載です。

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茱萸さんへ

先日(2月19日は先日とは言えませんかね)は、久しぶりに会えてうれしかったです。そのときも、最後に会ったのはいつだっけ?と話した気がするけれど、記憶があやふやでした。でも、とにかく久しぶりでした。

茱萸さんが撮ってくれた写真じわじわ気に入っています

わたしは今も愛媛の実家にいます。新潟へ帰るには都市部を経由する必要があって、今の状況では、まだ移動ができそうにもありません。佐渡の家では、ねこが一緒に暮らし始めたそうです。床の上で伸びているねこの写真が送られてきた。長かった。ねこをなでたいです。大学の中庭で、木陰のベンチに座ってねこを眺めたねぇ。近くの幼稚園のこどもが遊んでいるのも眺めた。モノレールの最終便が頭上を通り過ぎてゆくのを、茱萸さんが最初に住んでいたマンション(なんで引っ越したんだっけ?)の部屋から見える川を、TSUTAYAで借りてきた映画(「突入せよ!あさま山荘事件」を観たような)を眺めた。一緒に眺めた記憶の集積。なんてぼんやりとした日々。

実は、相変わらず教習所に通っていて、明後日が卒業検定の予定です。路上運転中、教官から「う~ん」とか「そうだな~」とか言われ続けている。運転、絶対に苦手なので一生しないぞ、と強く思って生きてきたけれど、特技がないうえに運転もできない、と自己否定の材料にしたり、そのせいで、車に乗せてもらうことに申し訳なさを感じて委縮したりしていたので、免許を取る状況を作ってもらえてよかった気がします。運転中、教官から「自分がどうしたいか(右左折、停止)を示せば、周りの人(車)が動いてくれる。でも、自分の判断に自信がないからといって行動を示さないまま進むと、結局漫然とした動き(運転)になって、周りを困らせてしまう」と言われて、「それわたしの人生だ」と感じました。仮免前は悲惨だった運転も、少しずつ、できることが増えてきました(明後日の卒検に受かるかどうかは微妙)。自分で自分の変化を認めるのは難しいし、そもそも気付きづらいけれど、何かを学ぶ、人から教わる、という経験の中では、自分ができるようになったことを実感できていいね。

あ、それからもうひとつ。昨日、人生で初めての虫歯を発見しました。親知らずが虫歯になっていました。しかも大きいらしい!来週、早速抜歯します。とっても痛い。虫歯になったことがない、と言うと羨ましがられていたけれど、それももう終わり。分かります。あなたも、あなたも、よく乗り越えてきましたね。とっても痛いんですね。車の運転にしても、虫歯にしても、世の中の多くの人と同じ経験をしている(であろう)ことに少なからずよろこびを感じているみたいです。まともな人間に近づいているようで。

毎日バイトもしています。スーパーでお惣菜を作っているのですが、職場の平均年齢が60歳で、「ゆきのちゃん、シルバー人材センターにようこそ!」と言われています。去年、小豆島で暮らしていたときは、半年ほどマダム(元々、全く知らない人)の家に間借りさせてもらっていたのですが、その人の明るさ、ユーモア、手際の良さを思い出して、なつかしくなります。元気かなぁ。ぷーちゃん(犬)も元気かな。マダムのこと、今度また聞いてください。

わたしの日々は、こんな感じです。

茱萸さんは、最近あたらしく始めたことや、できるようになったことはありますか?

茱萸さんに会ったときに「昔の中田はもっと自分本位だった」と言われて(けっこう衝撃を受けた、というか、あまりにもさらりと言うもんだからおもしろかった)、「自分本位かぁ」と気づいたら考えていたりします。茱萸さんの意図するところと全く違うかもしれないけれど、わたしの世界にはわたししかいなかったな、という感じ。茱萸さんとの共通の知り合いからも、「君が他人の人生について真剣に考えるようになったとはね」と言われたばかりだったので、変化したのだろう、でも、こうやってまた自分のことばかり書いているよわたしは。

自分のことばかり書いてしまうかもしれないけれど、このやりとりが、誰かにとっておもしろいものになるのだろうかと不安だけれど、続けていきたいと思っています。これから、どうぞよろしくおねがいします(茱萸さんも、レビューを書いてくださるののかさんも)。

中田 幸乃

中田 幸乃

1991年、愛媛県生まれ。書店員をしたり、小さな本屋の店長をしたりしていました。

Reviewed by
佐々木ののか

運転免許を取りに行ったり、初めて虫歯になったり 起きたことだけ見ればなんでもないかもしれない日々が水面のようにきらきらしていて、彼女の目を借りて世界を見たいなと思いました

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