「借景」という名の裏庭で

第7期(2013年2月-3月)

日本には「借景」という素敵な言葉があるの。
だから窓を開けたら琵琶湖っていう風景は、裏庭と呼んでいいのよ。

一言一句、同じではなかったかもしれないけれど
そう教えてくださった方がおられて。
この日から琵琶湖は、我が家の裏庭になりました。

陽が昇れば、部屋がオレンジに染まる部屋。
寝ぼけた頭でそそくさと着替えて、針穴を持って外に出ます。

西側は夜明けが琵琶湖側から昇るので
朝は針穴日和です。

この街が嫌いで、この裏庭も見たくないと思った時期があったけど
今は少しそんな気持ちも和らいで、針穴を向けることが出来ています。

辛い想い出がたくさんあるので、引越したい時期もあったのですが
今の自分が作られたのは、此処に来たからだと知ってるから。

まだしばらくはここで、生きていこうと思っています。

世間とか事情に関係なく、裏庭はいつもと変わらず朝陽が昇ります。
この写真は、東日本大震災翌日の裏庭で撮りました。

ざわざわと眠れない夜を過ごして、そのまま裏庭に。
被災地にも昇っているであろう、いつも通りの朝陽を、複雑な気持ちで眺めながら
「お願いします」と何度か手を合わせました。

何も出来ない自分は、ただ湖を眺めることしかできなくて
だからこそ、この日のことを忘れないようにと、シャッターを開けました。

撮れたのは、この一枚だけ。

あれからもう2年も経ったのに
正しいと思えることは、いつも通り生きることしか浮かばなくて。

時は刻まれ流れ、規則正しく過ぎていってるはずなのに
この日の朝陽が昇ったんじゃないのか?
と思ってしまうほど、時間の進まない想いがここにあります。