クルツのこと

第8期(2013年4月-5月)

猫と一緒に暮らしている
毛むくじゃらの相棒がきてから3年
バイクの後ろに乗せられてやってきた

日中はほとんど眠って、起きるとカリカリを食べて、また眠る
時々興奮して走り回るけれど、ちょっとたつと飽きて窓の近くで外を見る

クルツは ニャー と鳴かない
あー と言ったり あうあう と言ったり
時々なにかごにょごにょと喋っている
名前を呼ぶとこちらにきて隣に座る
いつも隣にいるかわいい奴です

猫を見ている時の気持ちは、例えば海を眺めている時間と似ているのかもしれないとある作家はいっていた
恋とか性の感情とは違う
でも愛おしい
猫は人間を見下しているんだよと笑った子もいた
確かに私の顔の上で寝たり、顔を踏んだり、くしゃみを飛ばしたり
でもちょこんと隣にくるクルツを見ると愛情を感じるから、まあいいか、と思ったりする

クルツという名前は内田百閒の「ノラや」からとった
くるひもくるひも愛猫のことを書いた日記で
逃げていったノラの変わりにきたクルツという小さな猫の名前だ
ノラを思うと飯が食べれない、誰それが逢いにきてくれたがノラのことで胸が一杯だと書いている
おかしみがあって愛おしい
この人の場合は限りなく恋の感情に近い

猫と暮らすというのは不思議なものだ
帰ってくると入り口でお出迎えしてくれる
お風呂に入ると姿が見えないからとなあなあ鳴く
ふっと目を上げるとこちらをじいっと見つめている

ことばは交わせないけど、思いがある

疲れて帰る家に猫がいると思うだけで、なんだかうれしいものだ
くたくたでもクルツを触っていれば色々なことはどうでもよくなってしまう
だからクルツはもう無条件に信頼の対象なのだ

長生きしておくれよ、と、そうっと思う