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2F/当番ノート

死神のランチ

当番ノート 第9期

やさしい死神は、不器用に人前にあらわれるから
村人たちから嫌われていました。
やさしい死神は、誰も死なせることができないから
死神たちからも嫌われてしまいました。

雨の日、やさしい死神は森の老人の小屋を訪れました。
嘘をついて、迷子の人のふりをして、おじいさんを困らせました。
もうすぐ死ぬ順番の、森のおじいさん。

帰るところがないと告げると
おじいさんは一緒に暮らそうと言ってくれました。
ミルクコーヒーをくれました。

おじいさんが寝ている時も、畑を耕してる時も、
怖くて震えてしまいます。
死なせることが出来ずにいつも
怖くてやめてしまいます。

夏の日、おじいさんは秘密を教えてくれました。
だれにもないしょだが、わたしはサンタさんだ。
こっそり死神に教えてくれました。

自分が誰だか隠して生きて、人から離れて住んでいました。
気付けばサンタは年老いて、一人ぼっちで暮らしていました。
村の人からはこっそりと、いつも怖がられてました。

好きな子からも怖がられたまま、しょんぼり年老いたサンタに
死神は言いました。
「その子にプレゼントを渡しに行こう。」

夏の夜にサンタは、よぼよぼトナカイと死神をつれて
重たいソリを風船で浮かべ、プレゼントを持っていきました。

しぬほどドキドキしながらサンタは
プレゼントを置いていきました。

楽しくて楽しくて
笑い転げたサンタは死神に
そっとたずねました。
「君も何か本当は、隠してることがあるんだろう?」

笑いながら死神は、ぽろぽろ泣いてしまいました。
本当は全部わかっていた、サンタの隣で泣きました。

君のおかげで本当に楽しかった。

いただきます。
ごちそうさま。

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