夏の終りに

第10期(2013年8月-9月)

鈴虫が鳴いている。
現在は9月23日の18時23分。気付けば日の入りがずいぶん早くなった。朝夕にはひんやりした空気がよぎる。まだ秋のはじまりだけれど、それはずいぶん先にある冬まで感じさせる。夏が終われば、冬まではまっすぐな道を走っていくようなものなのだと思わせる。
そんな夕。僕は明日の当番ノートの最終回になにを書こうか迷っていた。

これまでの住人の方たちはどんな風に終えたのかなあ、と色んな方のページをこっそり見てまわろうとしたところ、木澤さんの当番ノートが更新されていることに気付く。
今回はガソリンスタンドの絵が好きだなあ。タイトルを見なかったら何を描いたものなのか当てられないと思うけど、そう言われるとそう見えてくるし、共感できる。ガソリンのにおいにまみれた、少し柄の悪いあの空気。他にも気になる絵が、タイトルがたくさんある。自動筆記のような、携帯の予測変換の転がりを眺めているようで、無意識の皮がめくれていく。
僕は脳の実物を見たことがなく絵でしか見たことはないのだけど(大抵の人がそうかもしれないが)、どの絵を見ても脳の皺は皺という感じがしなくて、腸みたいに(こちらも実物を見たことはないが)細長いものがうねうねと折り重なっているように見える。
木澤さんの描く「意味のない絵」を見ていると、そんな風にして折り重なっていた脳を、まっすぐに伸ばしてあげているような気分になる。絵に触発されて、僕まで超現実的になる。

思わず最初から見返してしまっていた。そろそろ皆さんの最終回を覗きに行くことにする。
アパートメント、最近はトップ絵が変わったりとどんどん改装しているけれど、こんな風になったのか。当番ノートのページを見ると、誰がどの曜日を担当していたかが見やすくなっていた。
額賀さんも火曜日だったのか。一切面識はないのだけど、少し親近感を覚える。
アパートメントではじめて読んだのは額賀さんの「ジョン・レノンにはなれない」だった。
なにがきっかけで知ったのかは忘れたけれど、とにかくそれが一番最初。だから、僕のなかでアパートメントは額賀さんのイメージが強い。
額賀さんの文を久しぶりに読んだ。厳しくて優しい文章。背筋がぴんとなって、涙が出そうになる。僕もこんな風に真摯に生きていたいと思う。

真摯、と言えば木曜担当の木村さんもそうかもしれない。
木曜担当の木村さんと土曜担当の赤堀さんは僕と年齢が近いみたいなので、勝手に他の方よりも近しく感じていた。
木村さんのひとを、街を見つめる視線の温かさが素敵だ。文章でも、写真でも。彼の写真を見ていると、シャッターを切る時にこぼれる笑い声が聞こえてくるような気がする。

赤堀さんの短い文は言葉の重ね方が強くて、心のなかに入った時に大きくふくらむ。切り傷のようにひりひりとした、それ故に得られる生の実感が時になまなましく、そしてそれを(細い腕で)喜びや強さに変えていこうとするのはいつもとても眩しかった。

日曜日はさかいかささんのイラストにほっとした。
さかいさんの記事を読むたび恋をしている時の、よく晴れた新しい朝の鮮やかでハイパーな気持ちを思い出すことができた。
金曜日は倉田タカシさんの微細なところへとズームしていく解析力に、ふっと跳躍する文章の妙に思わずため息が漏れた。
水曜日は徳明希望さんの紙芝居の勢いとトンデモ展開に毎回爆笑した。
そして火曜日はいつも少し緊張して、誰かに感想をもらえるとすごくうれしかった。

僕は今大学四年生なので、今年の夏が学生として過ごす最後の夏だった。
24日から後期授業がはじまるので、夏休みの終わりと当番ノートの終わりがちょうど重なるわけだ。
最後の夏休みをここで過ごすことができて本当に良かった。
どこの誰ともわからない僕をここに招待してくれた朝弘さん、アパートメントのサイトデザインをより良くするため奮闘している森山さんにまず感謝を。
お二人のユニットTrivaもとてもかっこよかった。躍動するギター、競り合うように熱を帯びていくダンス。いつか実際に見てみたいと思う。どの程度即興なのかとか、あと個人的にダンスは朝弘さんの文章を読んで何と無くもっとゆったりしたものを想像していたのでそのへんのことなども聞いてみたい。

そして最後に、僕の記事を読んでくれた人たちにありがとう。
毎回頑張って書いたので、ひとつでも、一言でも届いていればいいと思う。

当番ノートはこれで終わりですが、そのうちまたひょっこり書くかもしれません。楽しみにしていてください。ここじゃない何処かで出逢っても楽しそうだ。
僕は皆さんのあと一回の更新を、そして10月からの新しいライターさんを楽しみにしながら、一足先に筆を置くことにします。

それでは!