音楽のすすめ

第11期(2013年10月-11月)

今日はJohn Lennonの誕生日。

The Beatlesが解散して43年経ち、彼が亡くなってから33年経った今でもビートルズやジョンの楽曲が愛されているのは事実でしょう。その魅力について評論家的な見解でモノを言うことはできませんが、今日は彼の書いた曲について綴ってみようと思います。

彼の曲の最大の特徴は自分自身について多く歌っていることでしょう。実生活や実体験をそのまま生々しい歌詞と共に曲に込めています。きっと天へのぼった彼が最初にしたことも、自身が撃たれたことを題材にした歌かもしれませんね。「Strawberry Fields Forever」、「Mother」などに代表される幼少期の思い出を歌ったものもありますし、「Lucy In The Sky With Diamonds」、「Cold Turkey」など自らのドラッグ中毒時代を歌ったものまであります。また、「Dear Prudence」、「Beautiful Boy」などジョンの周りの身近な人々を歌ったものもあり、特に妻のオノ・ヨーコのことを歌ったであろう「Woman」、「(Just like) Starting Over」はメロディ、歌詞や世界観に至るまで非常に美しい必聴の1曲です。

そんな生々しい彼の曲の中でも大好きなのが「The Beatles(White Album)」のDisc1-B面におさめられた「Julia」というアコースティック曲。Juliaは彼の母親の名前でもあるので、先の特徴に漏れず身近な人について歌っていることが判ります。ただ、曲中に“Ocean Child”(大洋の子)という歌詞があり、これがヨーコ(洋子)のことではないか?という解釈もできるため、この3人の関係を考慮して聴き出すと非常に懐が深い曲として聞こえてくるようになります。

“Half of what I say is meaningless”(僕がしゃべる半分は無意味・意味不明)と歌われる冒頭のメロディラインと歌詞からも判るように、楽観的で快活なポールの楽曲群とは対照的に、ジョン特有の「光と影」があり、いい意味でマイナス方向への展開が見られる秀逸曲だと思います。「Julia」の1曲前にはポールがボーカルをとる、のちの妻リンダへの愛を歌った「I Will」というシンプルな構成のアコースティック曲があり、面白いことに両曲ともキーは違えど最初の2和音は全く同じ進行をしています。ここでも3つ目以降のコード展開にジョンとポールの違いが見てとれるのでギターの音と共に聴き比べてみると面白いでしょう。

更に耳をそばだててもらいたいのが彼のギター。インド瞑想旅行中にドノヴァンから教えてもらったアルペジオ(指弾き)を用いた非常に印象的なギターを「Julia」で聞くことができます。注目して欲しいのは歌のメロディラインとギター音がシンクロしているところで、“Julia, Julia…..Julia”の部分(以下: Aメロ)は計4回登場しますが、ほぼ全てでメロディのキーとなる音とアルペジオの一番高い音(1弦の音)が同じ音程とタイミングで演奏されていることに気付くと思います。僕が想像するに、歌いだしの“Half of what…..Julia”の部分は最初から完成されたアルペジオギターとメロディラインとして彼の中でイメイジが出来ており、その後Aメロ他のメロディを単純なコードで構築して行ったのではないかと思います。そして曲の全体像が大まかに出来上がったところで、アルバム収録テイクのような象徴的なアルペジオ音を追加していったように考えざるを得ません。

{※少し音楽的になりますがコード進行の話をすると、Aメロのコード進行はD-Bm7-Am7-Am9-B7-B7-G9-Gm7-D-Bm7-F#m/A-Dとなります。実際は2カポでCに転調して弾かれていますが、この構成とメロディラインを見る限り最初からAm9とG9などを意識して使う必要はなかったように思うのです。基となるトニック・コード(ここではAmとG)が、追加されたテンション音(アルペジオ音)によって変化したと考えるのがベターでしょう。}

僕の妄察は、彼の最愛の人であった母とヨーコを載せた歌詞・メロディに自分のギターを重ね合わせたかったというものです。本当に勝手な想像ですが、そういう解釈ができてしまうほど彼の楽曲は聴けば聴くほど新たな発見や発想をもたらしてくれるのです。

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さて、生々しいのは彼の実体験が曲になっているからだけではありません。録音されたアルバムにもLive感が溢れていて生々しさが感じられ、いつも聴く耳を非常に楽しませてくれます。

例えば、「All You Need Is Love」。この曲では沢山のノイズ(要らない音)を聴くことができます。イントロ中に“Love”が9回繰り返される場面、2回目と3回目のLoveの間に聞こえてくるノイズは、もしかしたらジョンの喉が鳴っている音なのかも知れませんし、直ぐ後に入ってくるチェロ奏者の弓か何かがどこかに当たった音をマイクが拾ったノイズなのかも知れません。そのチェロの演奏が始まる直前には誰かの掛け声が聞こえてきますし、チェロ演奏の終わりから歌が始まる前では「Check…」的な声が入ってくるので、イントロを聴いただけでも「録音している感」が凄くして微笑ましくニヤリとしてしまいます。

「Come Together」では沢山の“Yeah”が曲中に出てきます。
“Got to be a joker he just do what he please”の後、ポールの指がベースの弦上をすべる音の前に、
間奏が終わって、“He bag production”歌い出しの少し前で、
2回目の間奏直前の“Right!”と叫んでいる後ろで、
“Got to be good-looking”のbeの後ろで、
4回ほどの“Yeah”を聴くことができます。なんとなくリンゴの声なのではないかとも思うのですが、Yeahと叫びながらレコーディングに臨んでいるリンゴの姿が想像できませんか?

このようなノイズが至るところで聞こえてくる彼らのアルバムは、大げさに言えば受動的な鑑賞を能動的なものへと変えさせてくれる力を携えています。拍手は無いですが、クラシックやジャズのLive盤のような臨場感がそこにはあり、聞く側の姿勢に大きな影響を及ぼしてくるのです。録音技術の進んだ現代のレコーディングではノイズが入り込む隙がありませんが、僕の想像が入り込む隙も残念ながらありません。

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ジョンやビートルズの曲は、様々な想像と解釈という名の味わいを与えてくれます。彼らの楽曲がカヴァーされやすいのは、カヴァーする側が感じる曲のイメイジを十人十色にするほどのポテンシャルを楽曲自身が持っているからではないでしょうか。また、料理しやすいのは素材が新鮮(生々しい)だからであり、変な味付けがなされていないからでもあると思うのです。格好つけようとしないで素の自分をさらけ出し歌っているJohnの曲から学ぶものは非常に多いはずです。

今宵、John Lennonを味わいなおしてみてるのも一興だと思いますよ。

09/10/2013 Masa Nakao