パンくず

第13期(2014年2月-3月)

これから先、「私」と「今まで撮ってきた写真」にできることがあるとしたら、
2つ、挙げることができるだろう。

今日はそのうちの1つを。

「良いことも、悪いことも忘れちゃうからなあ。」

一緒に行ったところ、話したこと、思い出を、すぐ忘れる。
だから、いつだって写真だけが頼りなのだと
忘れっぽいあのこが言っていた。

思い返せば、私が写すとりとめもない景色に、
価値のようなものを与えてくれた人がいるとしたら
多分あのこだ。

「パンくず いっぱい 落としておくからさあ、」

なんて。

そんな話をしながらヘラヘラ笑ったのは、どの帰り道だっただろうか。

000035 編集済み
000036編集済

000007

000017

いつも、大体、
隣か正面にいた。

交わす会話は決まって、同じ部の仲間の話。
「この間」や「あの日」や「あの頃」の思い出話。
叶う範囲と叶わないかもしれぬ範囲の
「いつか」や「今度」や「もしも」の話。

カメラを鞄に入れてきたことを思い出すのは
そんな他愛のない会話をしながら、
だらだらと校内を散歩している時とか
美味しそうにものを食べてる時とか
くだらないイベントやサプライズを練っている時とか だった。

パンくず12
000030
パンくず7
パンくず6
パンくず5
パンくず4

アイスを頬張りながら帰った日
春っぽい曲を思いつくだけ歌って散歩した日
天気がいいからって授業をサボった日
夏よ 終わるな、と嘆いた日

劇的に嬉しいことがあったわけでも
劇的に悲しいこともがあったわけでもない、いつもの景色。

「忘れられない時」と「忘れたくない時」があるとして、
「忘れられない時」の前後に散らばった
この なんてことのない時のひとつひとつが
私の「忘れたくない時」なのだろう。

確かにそこにあったよ、と
いつかの自分や誰かに証明したい愛しい時なのだと思う。

たくさん計画していた「いつか」や「今度」を置きざりにして、
ついに 別れ道手前まできてしまった。
隣り合って、寄り道しながら歩いてきた私たちも
いよいよ別々の我が道を歩く。

当たり前に転がっていた 愛着いっぱいの毎日が
いつかは当たり前じゃなくなることを知っていたから、
歩いてきた道には、たくさんパンくずを落としてきた。

000008 3

そうだ、
いつの日か、

なんだか少し疲れちゃったなあ・・・なんて思う日がくるだろう。
どうやって歩いてきたのか分からなくなって、忘れてしまって寂しくなって、
泣き出しそうな時が、いつか来るのだろう きっと。

その時はどうか、
私が落としていったパンくずを辿りながら、
元きた道をあるいてみてほしい。

ゆっくり辿れば、自然と口元がゆるんだり、ぷっと吹き出したりできるはず。
もう一度先に進む元気をもらえるかもしれない。たぶんね。

それでもどうしても前に進めなくなってしまったのなら、
パンくずを辿りきった最後にいる私が、ポンと背中を押しにいこう。

パンくず1

青臭い、と言われてもいいから
そんなパンくずみたいな役をもらえればいいなと思う。

きっとそれは私が残したものだけではなくて、
これを読む誰かが残したものだってそうだ。
残した自分や傍にいる人のための、みちしるべのパンくずになるかもしれない。

人間は、少しずつ忘れてしまう生き物だけれど、同時に
「思い出す」という瞬間も与えられているはずだから。
いつか思い出す時のために、
来た道にはたっぷりの 希望や愛情や思いを残しておきたい。