谷底本箱煙猫―ガブリちゃん

長期滞在者

「ガブリが みかんになったよー ガブリは、くいしんぼうで わるいこで ばかですよー おとうさんに しかられるー おかあさんに しかられるー こまったよー いいこになりますよー みかんいろなんていやだあ。まっしろくなりたいよー」

(『ガブリちゃん』より)

蔵王の麓から東京に越してきた冬、どこかの家の庭先にだいだい色の実がなっていて、それがみかんの仲間だと分かった時の驚きは今でも鮮明に覚えている。あら、みかんさん、なぜ、こんなところに!あなたのいる場所はそこではないでしょ!みかんが冬になるということを知らないわけではなかったが、実際に出くわしてみると、輝く太陽の色の実が寒風のなか木からぶら下がっているのはへんちくりんだし、トーキョーのこじんまりとした庭にすましているのもおかしく思えた。食べられてはたいへんと、こたつの上から逃げたしてころころ転がっているところを私に見られたらさあたいへん、とちょうど近くにあった木にしがみつきました、そんなたたずまい。

さて、小さい頃、みかんを食べすぎて手が黄色くなってしまった記憶があるのですが、大人になってからはどれだけたくさん食べてもそんなことは全くなく、あれは夢だったのではないかと疑っている最近ですが、今日は、大好きなみかんを食べすぎて黄色くなってしまったあひるのおはなしを紹介します。
あひるのガブリちゃんはみかんが大好きです。朝からずっとみかんを食べ続け、さらに寝るときにみかんを枕の下にしまっておいてふとんの中で食べてしまうくらい好きなのです。ある日、友達のたねこちゃんの家の台所にあるダンボールの箱にたくさんのみかんを見つけたガブリちゃんは、1つまた1つと食べ、理由をつけてはまたもらい、7つも一度に食べました。その時、ガブリちゃんの白い羽が黄色くなりはじめます。

でもね、やっぱり、袋いっぱいのみかんを買っても、1箱まるごとみかんを買っても、いつの間にやら空っぽになっているのはたぶん逃げ出しているみかんがいるからに違いありません。

☆今月の一冊:『ガブリちゃん』(中川李枝子 著/福音館書店)
gaburi