猛者との邂逅

長期滞在者

「1億出資したいから、5分以内に返事くれへんか」

 

2週間ドバイに出張してきた。

ドバイは自国民(通称:エミラティ)が10%しかおらず、大多数が海外からの労働者。
若い男性が占める割合がとにかく高いいびつな人口構造で、街を歩いていてもそれを感じる。

そして、次々に高層ビルが建てられる環境下で暮らしてきたエミラティにとって、”成長”は当たり前。現状維持なんて、貯金なんて彼らの選択肢にない。黙って目減りするのを放っておくなんてバカなことはしない。

現状維持が嫌いじゃない私とはマインドがまるで違う。

そんな猛者達との会話はべらぼうに疲れ、やり合わなくてはいけない。

さらに、一見猛者のように見える人達の中にも、一定数はただのホラ吹きも混ざった玉石混淆状態なので余計に神経擦り減る。

こうした人々との面談が終わり、高層ビル街の影に隠れたインド人街で売られている30円のチャイを飲むとき、やっと落ち着いた気持ちになる。

その後、電車に乗ってホテルに帰る。電車内でエミラティを見かけることはほぼない。

隣に立っていたインドかパキスタンからの出稼ぎと思われる若者のスマホが目に入る。
待ち受け画面は、ドバイにある世界一高い建物、ブルジュ・ハリファだった。
故郷でなくとも誇りなんやろう。

ドバイ1
ホテルに帰るとゴロゴロしてしまう。

出張前は「毎日アポ終わったら、夜はシーシャ燻らせて、夜の異文化交流しまくろか」と思っていたが、一度も行かなかった。

翌日またあの猛者たちと対等にやり合わないといけないかと考えると寝つけられなくなる。

朝に入るホテルのプールが大きな救いだった。日焼けするために洋書片手にカウチに座っている西欧人のおばさんがひくくらいに、朝の30分間ただただ全力で泳ぎまくる。「なんでわざわざゴーグルまでつけて泳いでんねん、あいつ」と思われてたかなぁ。

泳いだ後は、いつもホテルのブッフェで朝食をとっていたので(焼きトマトが絶品)、次第にスタッフも「Hi,REONA !」と声を掛けてくれるようになる。

レストランのウェイターの左手の中指に彫られている動物のタトゥー。いつもコーヒーを淹れてくれるとき、中指が曲がり、まるで動物がお辞儀しているようになり可愛かった。

「やっぱりタリンバビに行ったときにBobにタトゥーを入れてもらえばよかったかなぁ」とそのタトゥーを見て思う。

帰国する数日前、テレビをつけると、BBCのトップニュースは日本に上陸する超大型台風についてだった。台風の進路予想、被害予想よりも、F1は鈴鹿で無事に開催されるか、ラグビーの予選最終戦は無事開催されるかについて長々とリポーターは話していた。

ドバイ2

 

2週間の滞在の後、日本に帰ると、最寄駅の隣駅がラグビーW杯の会場になってることから、家の徒歩圏内に各国からラガーファンが集い、試合が始まる前から終わった後までビールを㍑単位で水のように飲んでいる。

すっかり涼しくなった日本の、いつもはほとんど人通りの無い飛田給駅のセブンイレブン前の広場で、大量のビールがアイルランドやニュージーランドやオーストラリアの人達の喉や胃に流し込まれる姿を眺めていると、秋の風を感じた。そして、どこか微笑ましい気分になると同時に、何に対してかは分からないが満足感を覚え、最終的に「今年はもう山登らなくてええか」という気分になった。