谷底本箱煙猫―ジェイミー・オルークとおばけいも

長期滞在者

「せかいいちおおきなイモをねがったらどうです?ふゆじゅうたっぷりたべられるし、このたねをうめて、みずをやって、まっているだけで、ほかにはなにもしなくていいんですから」

『ジェイミー・オルークとおばけいも』より

「お昼ごはんなあに?」「今日のお昼はじゃがいもよ。」じゃがいも?それが献立の名前ではないというごく当たり前のことに気付いたのはだいぶ大きくなってからのことだった。粉吹き芋でもポテトサラダでもなく、“じゃがいも”なのだ。
我が家は農家ではないのだが、蔵王の麓、中山間地域という土地柄もあり、隣近所から採れたての野菜のおすそ分けをいただくことが多かった。「今もいだばかりのとうむぎあっがら、湯がいて、くえ」と手にいっぱいトウモロコシを抱えてきてくれるのは裏のおばちゃん。どこまで遠くへ行けるかと農道をひたすら歩いていたら、畑の中から声がして大きなスイカを丸ごともらってしまい、へとへとになりながら家へ帰った夏の日。留守の間の玄関に、白菜がピラミッドになっていたこともある。そしてある日、玄関には2つの大きな出荷用米袋。口は開いている。はちきれそうなほどぱんぱんだ。中をのぞけば大量のじゃがいも。いったいいくつあるのだろう。豆っこぐらいのものから大人のこぶしよりも大きいものまで、ごつごつの坊主頭がひしめきあっている。これだけあれば、しばらく芋には困らない。じゃがいもに目がない私は、ご機嫌で口ずさむ。「こいつはとってもいいやつで、ながもちするし、どんな飯にもあうときた。」

そこで、今日のお昼はじゃがいも、なのである。食卓には、皮もむかずにただ茹でただけの20はくだらない大量のじゃがいもが、特大ザルにほかほかどんっと山積みになっていて、それをめいめいお皿にとり皮をむきながら、お好みの調味料をつけて食べる。私は塩にかぎると思うけど、醤油もマヨネーズもバターでも。今思えば3個はぺろっと食べていたんじゃないかな。

アイルランドの人たちはじゃがいもをよく食べるのだそうですが、そんなアイルランドに伝わる昔話から『ジェイミー・オルークとおばけイモ』を紹介します。
ジェイミー・オルークはアイルランドいちのなまけもの、代わりにおかみさんが一人で畑をたがやし、じゃがいもを育てています。そんなある日、おかみさんが腰を悪くしてしまい、とほうにくれるジェイミーですが、偶然、妖精レプラコーンを見つけ、世界一大きなイモができる種を手に入れました。さっそく種をうえたらさあ大変!家も傾き、道をふさいでしまうほどのおばけイモになりました。村中の人が、冬の間じゅう、じゃがいもを食べることになってしまい、もう飽き飽き!こりずに種を植えようとするジェイミーにある提案をします。

※アイルランドはたくさんの妖精が住む国として知られています。なかでも、レプラコーンは金貨の入ったつぼを隠し持っているそうですよ。ジェイミーは、つぼを渡す代わりに種をもらいました。
obakeimo
☆今月の一冊 『ジェイミー・オルークとおばけイモ』(トミー・デ・パオラ再話・絵/光村教育出版)