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風景のある図鑑 28

風景のある図鑑


宇宙背景放射 : cosmic microwave background


宇宙背景放射


宇宙背景放射、宇宙全体から放射されている電波です。

1964年、ペンジアスとウィルソンという二人の科学者が、電波望遠鏡で宇宙を飛んでいる電波を調べました。その時、宇宙のどの方向からも同じ一定の雑音が入ってくることに気がつきました。普通の雑音は、音源からの音が最も大きいものですが、この音は宇宙全体から一定の大きさで聞こえてくるのです。

二人が見つけた電波は、この宇宙の成り立ちにとても関わりの深いものでした。

宇宙は永遠に変わらない静かで安定している存在だと信じられていた時代、星々がすべて遠ざかっている、宇宙全体が膨張していることがわかったのです。宇宙が膨張しているのであれば、かつての宇宙は今よりもっと小さく、密度が高く、高温になっていたのではないか?そう考えたのがロシアの天文物理学者ジョージ・ガモフでした。
たくさんの物質、エネルギーが一箇所に集まり密度が高まると、温度が非常高くなります。その状態では、光もまっすぐには飛びません。しかし徐々に宇宙が広がり、密度が下がっていくと、光がまっすぐ飛ぶようになり、霧が晴れたように宇宙全体を見渡せるようになります。これが「宇宙の晴れ上がり」です。

この「晴れ上がり」の時に自由になった光を、今でも見ることができるのではないか? ペンジアスとウィルソンが捕まえた電波こそ、それは宇宙のもっとも遠いところから現れる、最も古い光だったのです。





和音 : chord


和音


古代ギリシアの数学者、哲学者であるピュタゴラスは、ある日鍛冶屋の前を通りました。

何人かの鍛冶職人が振り下ろすハンマーの音に耳をすませていると、あることに気がつきます。ほとんどのハンマーは同時に打ち鳴らされると調和する音を出すのに、あるハンマーが加わったときだけは必ず不快な音になる。ピュタゴラスは鍛冶屋に飛び込むと、それぞれのハンマーの重さを調べてみました。すると、調和する音を出すハンマー同士の重さは、単純な比になっていることを発見したのです。

「和音」とは、高さの違う2つ以上の音が重なりあってひびく音のことを指します。
和音を数の比で表すことができる。これは大きな発見でした。

ピタゴラスは「自然界のあらゆる構成物は、数から生じるハルモニア(調和)から成り立っている」と考えていました。まさに和音は数から生じる調和そのものだったのです。

coca

coca

1988年、長野県生まれ。
coca、または古河郁という作家名で、絵や文章を書いています。
物理、数学、天文学、鉱物、錬金術を主なテーマとして作成しています。


書籍「風景のある図鑑」 https://minne.com/items/1739054

Reviewed by
中村 梨々

目覚めた時、真っ先に飛び込んでくる音。鳥の声、ざわめき、早起きの足音。夜、静かな耳に聞こえてくる、走る車とアスファルトの摩擦音、川の流れ、自分の脈の音。聞こえてくる音から始まるふたつのお話。

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