長期滞在者
身近な人と話していたら、外の世界に目が向かなくなるときが往々にしてある。 そんなときでも周りに目が向くのは、奇抜な服を身に纏っている人ではなく、面白いものを運んでる人に出くわしたときが多い。 それは多分、服装はその人の主張があるわけでわざわざ注目したくないときは無視できるが、持ち物についてはどういうシチュエーションでそんな物を持っているのか、そのストーリーが気になって想像力を掻き立てられて、ついつ…
長期滞在者
昔から色々あって僕は両親とは仲が良くないのであるが、その両親が揃って最近大きな病を得、面倒なことになっている。二人とも80歳を越えているので、逆に今までよく元気でいたものだとも思うが、何も揃って調子を崩さなくてもいいものを。仲が悪いとはいえ一応身内なのであるから、まぁ最低限の手助けはせざるを得ない。病院に話を聞きに行ったり、ケアマネージャーと打ち合わせをしたり、なかなかに忙しくなってきた。一緒に住…
長期滞在者
学生時代に知り合った友人から数年ぶりに連絡が来た。 一緒にライブに行かないかというもので、これまた長年会っていなかった友人も誘っているとのことだった。 誘ってくれたライブのアーティストは初めて耳にする名前だったが、ライブを抜きにしても久しぶりに友人達と色んな話がしたく、行きたいと即答して足を運んだ。 その友人達と一番初めに会ったのは15年ほど前で、当時流行っていたmixiで連絡を取り合って音楽のイ…
長期滞在者
負け惜しみでも何でもなく、カメラは中古で買うのが好きである。26歳で写真を始めたのでもう30年以上いろんなカメラをとっかえひっかえ使ってきたのであるが、今まで新品でカメラを買ったのはコンパクトカメラ何台かだけで、一眼レフや中判等の、「自分の写真」を撮るために使うカメラは昔からすべて中古購入だ。もちろん安く買えるから、ではある。お金にはいつも苦労している。だが中古で買うというのは、そもそも最新の機能…
長期滞在者
電車に乗っていると、ベビーカーを引いた女性が乗ってきた。 それを見た優先座席に座っていた全員が立ち上がって、どうぞどうぞと席を譲っていた。 その見知らぬ者同士が譲り合う光景がとても心がすっきりするもので、それはもしかしたらラッシュアワーが過ぎた後の昼前の少し落ち着いた時間帯だったからかもしれないが、なんとなく冬の晴れた空気のおかげな気がし、思えるならそう思ったままでいたい。 今年の冬は晴れが多くて…
長期滞在者
雨の中、道に倒れている人、というのを見たことがあります?中島みゆきの「道に倒れて誰かの名を呼び続けている人」ほどではないにしても、なかなか目撃しないものだと思います。ところが、なぜか僕は今まで何回も見たことがあるのです。何回も。ついこないだも。うちの近所の居酒屋の前で、大雨の日、酔っぱらってうつぶせに昏倒した若い男がそのまま水たまりの中で起き上がれず、水に半分顔をつけて寝たままゲロを吐く、そしてそ…
長期滞在者
何の気無しに立ち飲み屋で黒板の本日のおすすめと記載されていた鳥刺しを注文し、「そういえば鳥刺しって人生でほとんど食べたことないな」と思いTwitterで検索したところ、鳥刺しで食中毒に当たった人のツイートが大量に出てきて途端に怖くなる。 けども、「なんでこいつ注文したのに箸をつけずに残すねん」となりそうなので、食中毒に当たったとしたら人生の勉強と思って食べる。 味よりも謎の緊張感が勝った状態で、全…
長期滞在者
仕事繁忙期で心身腐ってきたので、腐りきらぬうちにと無理矢理休みを取って一日自転車に乗ってきたのである。毎日自転車で片道10kmを通勤しているが、正直なところ気分としては毎日20kmのサイクリングが主であって仕事はそのついでに過ぎない・・・と、思い込もうとして日々頑張っているのであるが、そんな言い訳でも自分を騙せなくなってきたのだった。ついでのはずの仕事に心身削られてどうするのだ。修復するには、もう…
長期滞在者
先日腕時計を買った。 特に狙っていた時計があったわけではなかったが、狙っていたお店はあった。 家から電車で数駅のところにある、六角橋という学生街の商店街の中にその店はあった。 以前から何度か店の前を通ったことがあり、外から見えるお店の狭さと陳列の様子に、なぜか入ったことも無いのに勝手に居心地のよさを想像していた。 休日の夕方、いざ中に入って見ると、陳列されている時計も派手なものは少なくかといってア…
長期滞在者
昔、梅田のインド料理屋で働いていた頃の話である。Bさんというインド人のコックさんと、閉店後の後片付けをしながら話していたのだが、まぁ話していた、と言っても僕は英語が不得手であり、彼は日本語が不得手である。しかもBさん(に限らずインド人コックさんたち)の英語はインド訛りで独特の癖がある。不得手な言語をパズルのように組み合わせながら、なんとか意思の疎通をはかるのだ。BさんはいつもチーフのMさん(いつも…
Do farmers in the dark
チャリス、それはまるでずぶ濡れのハイソックスのように(5) 前回までのあらすじ クァンツ木村(カンツ木村)は郷乃ヒストリアン天狗キヨポン(ごうのヒストリアンテングきよぽん)を無事2番目の客間に案内して、カンツはほら穴の外でウトウトしていた。すると目の前に突然狂老人さまが現れたんだ。カンツはヒストリアンにその旨を伝えて、ほら穴に入ってもいいか尋ねた。 「どうぞ中に入って下さい!まさか狂老人さまなんて…
長期滞在者
会話の中でパンセクシャルという単語が出てきた。 正確に定義を理解しているわけではないが、パン=全体から、なんとなく想像できた。 こうしたなんとなく理解していることが多い。 突き詰めたい欲求が薄いからなのか。 なんとなく理解していることを、あたかも正確に理解している風に答案を書くことで、これまでなんとか切り抜けてこられたからか。 大抵の料理が美味しく感じるのも、食材の味を突き詰めて舌で判断しているの…