当番ノート 第8期
絵を描く時に気になることのひとつは、風、重力、水の流れ、など、画面の中を移動する力のことです。 画面の中を移動する力であれば、それは風のように見えても、もしかしたら別の惑星の引力かもしれないし、必ずしも風でなくてもいいのです。 何の手がかりもない白い紙の上にペンを走らせるのはいつも心細いです。 先の見えない迷路に入っていくような気持ちです。 画面上の流れは、その迷路を解いて、なんとか絵のようなもの…
長期滞在者
満開の桜を見ていると思い出す。 まだ桜がパラパラと咲き始めた頃。 電話を受けて汗だくで走った西新宿の街。 祈りながらずっと俯いていた北九州行きの飛行機の中。 窓から見えるであろう懐かしい風景が歪んで全く見えなかった電車の中。 押し寄せるどうしようもない感情に子どもの頃のようにたくさん泣いたあの日。 父がこの世を去ってから丸一年が過ぎた。 もうあの頃のように悲しみに明け暮れることもない。 時間の経過…
当番ノート 第8期
「ひなたの本当のあたたかさは、いつも日陰のとなりにいること」 仕事場に向かう冷たい風の吹く道で、 たてものの隙間から差し込む光を見ながらそんなことを思った。 その光は、影との柔らかなコントラストの中で自分を含む世界を歓迎し、 自らの存在を誇示することによってではなく、 自分とは異なる存在の隣にただひたすら“居る”ことによって生まれる強さみたいなものを持っている。 ひなたがひなたとして温かみを持つ時…