当番ノート 第9期
おはよう。 こんにちは。 こんばんは。 はじめまして。 お久しぶりです。 お元気ですか? 僕は元気です。 あなたが どんな人で どんな時間に どんな気持ちで この文章を 読んでくれているのか 僕にはわからないから すべての人に向けて まずは ご挨拶。 春の終わりにひょんな出会いから憧れていたこのアパートメントに入居することになり、準備も2週間足らずとドタバ…
当番ノート 第9期
これは、わたしの色。 わたしを、あなたを、色にするなら何色だろ。 色は言葉よりもっと、人の、深くやわらかな腹の底を知ってる。 これがわたし。初めまして。まだ無色透明のあなたへ。 わたしは筆を握ってた。絵の具にさわった一番古いイメージ。 記憶の切れ端、幼稚園で、ちいちゃい手でおえかき道具を散らばした。 うすだいだいのクレヨンがぴりりと青い水彩をはじく。 真っ青な水、泳ぐ人、きみどりの浮きわ。 ちいさ…
当番ノート 第9期
その瞬間に過去になり、今の姿を閉じ込めたまま、未来にのこっていく。 僕は、写真の持つそんな力にとても惹かれる。 写真を通すことで、時間を自由に行き来することができるからだ。 僕が思い出せる最も古い記憶は、30年以上前のことになる。 あの時、どんなふうに光が射していたか、どんな音が聞こえたか、 どんな風が吹いて、どんな匂いがしていたか、今でも鮮明に思い出すことができる。 これは僕が幼稚園だった頃の話…
当番ノート 第9期
一番の深夜というものがあるなら、きっと、この時間のこと。エレベーターは、扉を閉めると音を立てなくなった。照明は落ちていて、私は青ざめた色の廊下を歩いていく。 マンションのドアを後ろ手に閉めると、誰もいない部屋が、暗い青で満たされてそこにある。───この光は、月の横顔でもあるんだろうかね───返事はなく、出窓から月光が流れ込んでいる。水のように。 水のようだ。水のように、青暗い光でいっぱいの水…
当番ノート 第9期
僕らは、単にそれをしている。 僕らは、単にそれをしている。 いろいろなことに気がついて いろいろなことを抱いても 僕らは、単にそれをしているだけなのです。
当番ノート 第9期
ぶらさがっていた。 ぶらさがって暮らしていた。 ずっとこのままだと思った。 あばれたらヒモはちぎれた。 いこう。 海を見にいこう。 みんなで海へ 海へいくんだ。 とおくとおく 僕らのせいで雨が降っても 僕らの海だ。 小さくてもちっぽけでも、僕らの海はきれいだった。 かなしくてもかなしくても、僕らの世界はうつくしかった。 六月がはじまる。
長期滞在者
フランスで私が、美しい、好もしい、と思える男子は、全員ホモセクシュアルなので困っています。 他の日本女子にきいても大抵が同じ感想です。 フランス語部分 「ごめん。もう行かなくちゃ。そういえば僕たち結婚するっていったっけ?」 「ねえ、はやく行こうよジュリアン。劇場に遅れちゃうよ」 広告や人気映画俳優などから推察する、フランスの「男らしい男」は、みんな無精髭を生やしており、類人猿ぽく、髭ばかりでなく体…