当番ノート 第9期
先日、蕾みをつけたまま落ちている花を見た。 今日はひどく晴れた。 ゆっくりと自然に形を成して、あるがまま形を変えていく雲をみて 気づくと僕は口を開けながらそれをたどって。 光が射す時もあれば、影にかかる時もあって。 すごく気持ち良かったんだけど、 気づいたら何もなくなっていたよ。 2013年、今年も無事に夏がやってきた。
当番ノート 第9期
「ん、」 「久しぶりのお客さんだな。きみはぼくがこわくないのか。」 「いつも笑ってるんだな。ぼくの傘を貸すよ。」 「めずらしいからつつかれるんだ。ぼくとおんなじだ。」 「きみはちっともにげないんだね。行くところがないのかい。」 「ずっとずっとがまんしてきたんだろう。本当はどこかに行きたいのに。でもみんなをこわがらせちゃうもんな。」 「おんなじだ。」 「すごいな、きみは飛べるのか。」 「だいじょうぶ…
当番ノート 第9期
わたしが今暮らしている家は東京にある。 故郷は九州の大分県にある。 しかし「実家」と聞かれたときに、今のわたしは少し悩んでしまう。 4歳くらいまでは父方の祖父母の家に暮らしていた。 長男である父と結婚した母は、だんだんと祖父母、そしてとても気の強かった曾祖母との同居に耐えきれなくなって、わたしたち家族は隣町へと引っ越した。 そして、わたしが上京する数週間前にずっと5人で住んでいた家から引越しをした…
当番ノート 第9期
夜空に浮かぶ 月を見上げる ふと 不自然さに 気が付いた 2つあるのだ。 というのは 村上春樹の 「1Q84」だけど たまに 頭上にある 大きな物体が はるかかなたで 浮かんでいるのだ と思うことに不自然さを感じる 空に浮かぶ それを見ると 自分の小ささを感じてしまう。 地球の衛星 どっち付かずのそれは 離れることも近づくことも 出来ないで ある一定の距離を保ったまま ぐるぐるぐるぐ…
当番ノート 第9期
目を開けると、ハナミズキがこちらを覗き込んでいた。 いつの間に寝ていたのかしら?わたしは体をおこす。 今が何時だか分からない。 ただ、夏の夜特有の湿った空気が体を生温く包み込み、視界にはまるで牛乳みたいな、白い膜が張っていた。 ふと上を見上げれば、群青色にちいちゃな宝石さながらのお星様が散らばる。 私はフローリングの床にねっころがって天井を見つめた。 底がないふかい井戸のようだ。遠い昔のひかりが遠…
当番ノート 第9期
これは、僕がまだ高校一年だったときの話だ。 つまり今から20年以上前のことになる。 僕は、学園祭の準備委員で一緒になったある女の子に恋をした。 入学してからずっと彼女のことが気になっていたのだと思う。 準備委員になってからは、用事があるわけでもないのに 彼女によく電話をかけたりしていた。 もちろん携帯電話なんて便利なものはない時代だった。 電話をしても本人がでるとは限らない。家族がでるかもという緊…
当番ノート 第9期
挿画:臼井史(アパートメント) 文章:森田れい時 『不確かな私の確かなゆらぎ』 高速バスは時間通りにターミナルを出た。乗車前に買ったサンドウィッチは、お茶のペットボトルと一緒に、バス・ターミナルの待合室に忘れてきた。鞄から取り出した音楽プレイヤーは、電池が切れていた。 感傷に浸るタイミングも逃して、わたしは、窓の外に過ぎ去る建物や、角度だけ変えていく雲をぼんやりと見ていた。 …
長期滞在者
ものすごく久しぶりの投稿です。7ヶ月ぶりです。 何年かに一度やってくる活字拒否期間がしばらく続いていて、読むのも書くのも全く気が進まない時期が続いています。 とは言いながら、そういう時期は大体生活がなんとなく茫漠としてくるのが常なので、 たまには文章にして、身も心も整理整頓する作業は必要であるなあ、とも思うのも確かなのです。 ぼくは一応ダンサーというか振付家というかパフォーマーというかが本業なのだ…