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2F/当番ノート

悪たれ三昧猫三昧

当番ノート 第2期

 煙が谷底に来てからというもの、帰宅するとまず部屋の中に変化はないかチェックするくせがつきました。明かりをつけ、恐る恐る首を回し隅々見渡します。倒れているものはないか、壊れているものはないか、引き出しはあいてないか、目を光らせます。それでは数ある煙のいたずらの中からいくつかご紹介しましょう。

 まず、鏡が割れていました。大きな姿見です。煙に問いただしたところ、大運動会をしたときに水泳のクイックターンよろしく後足で思い切り鏡を蹴飛ばした瞬間、ぐわっと前のめりに倒れてきたそうです。

煙:あのターンをふきさんにも見てもらいたかったニャ。ぐっと縮めた体が一気に弾け飛んだ時の気持ちよさはやめられないニャ。あの日の弾丸ターンはここ一番の出来だったのニャ。

 次に、羊の置物がただの綿になっていました。床にふわふわしたものが落ちている。拾ったら綿。綿?視線を先にやるともう少し大きな綿、ぽつんと綿、そして綿。その先には羊頭とだらんと延びた足、それを僅かながらも繋いでいる薄く広がった毛。ドアを開けたらバラバラ殺人(羊)が起きていた、そんな日が来るのだから共暮らしはエキサイティングです。

煙:羊さんはピアノの上でいつもすましているから僕から遊びにいってあげたのニャ。(ふきさんには内緒だけど鍵盤の上歩くのは愉快だしニャ。)軽くご挨拶したらどんどんふくらんでいくから面白かったニャ。ふきさん、お友達の羊さんはいないニャ?

 それから、ゴミ袋が引きちぎられていた事もありました。カッターで切り裂いたのかと見紛うほどに見事にずたずたでしたが中がほとんど空だったのが不幸中の幸い。

煙:昨日ふきさんがねぎの尻尾を袋に入れたのを実は見てたニャ。ふきさん、ねぎに僕がじゃれているのに無視したのニャ。食べちゃいけないのは知っているけどふきさん帰りが遅いからおなかもすいてたのニャ。少しなら平気だニャ。

 そしてつい先日。帰宅した私は煙と遊ぼうと思い、20センチほどの細いリボンを探しました。出かけるときには座布団の上にあったのですが見つかりません。ねずみのおもちゃや荷造り紐など煙の遊び道具は帰ってくる度に場所が違うので今回もそうなのだろう、そのうちにどこからか出てくるに違いないとさほど気にしていなかったのですが事件は翌朝に起きました。煙がえずいている音で目が覚めました。猫が毛玉を吐くのは珍しい事ではないので、はいはいと片づけにいくとそこにはなにやら赤と緑のストライプ模様が見えるではありませんか。ご丁寧に丸まっているそれは昨晩探していたリボンでした。私達がそばを食べるようにすすれるはずもなく、パスタのようにくるっと丸めるフォークがあるわけでもなく、20センチものリボンをいったいどうやって飲み込んだのでしょう。出てきてくれて幸いですが、谷底では出しておけない物がまた一つ増えました。

煙:おいしかったけど、後から気持ち悪くなったのニャ……
私:そもそもリボンは食べものではありません。そんなことばかりしていると煙も『ついでにぺろり※』の猫のようにおなかをポンと割られてしまいますよ。

煙:でもあの話の猫は次から次へといろんなものを食べるのが愉しそうだニャ。僕も「くってやる!」って言いながら食べたいニャ。こんな風にニャ。

「まずは、おかゆをはらいっぱい それからついでに、なべひとつ もひとつ、ついでにばあさんひとり つむじまがりに、へそまがり とりはまとめて五わいちど おどるじょうちゃん、七人いっしょ きれいなおくさんパラソルいっしょ 牧師先生、つえいっしょ ついでに、おまえもくってやる!」

※『ついでにぺろり(愛蔵版おはなしのろうそく3)』(東京子ども図書館)

=^. .^= 今週の猫本―猫なら誰もがいたずら好き―

『グロースターの仕たて屋(ピーターラビットの絵本15)』
ビアトリクスポター作(福音館書店)

 このお話にもいたずら好きの猫が出てきます。
 グロースターに住む仕たて屋は市長がクリスマスの婚礼に着るための衣装を作ることになりました。布を裁ち準備を整えた仕たて屋は、飼い猫に足りない分の穴糸を買ってくるように頼みます。さて、いたずら好きの猫は自分が捕まえたねずみを伏せた茶碗の中に閉じ込めていました。ところが猫が買い物から帰ってくると仕たて屋がねずみを逃がしてしまっていたのです。怒った猫は買ってきた穴糸を隠しました。再び穴糸を買うお金がない仕たて屋は寝込んでしまいます。
 さて、この猫の名はシンプキンといいます。話も最後になるとシンプキンが反省する場面があるのですが、私はこの場面が本当に好きなのです。仕たて屋の寝ている枕元の椅子に乗り首をうなだれ神妙な顔つきで茶碗を持っているシンプキンの絵を見ると、シンプキンと一緒に胸がきゅきゅきゅっとなってしまうのです。そのきゅきゅきゅっとした気持ちのまま、とあるウェブサービスに登録したのが始まりで私のidはそれからsimpkinとなり今でもそれを使っています。

 メリークリスマス!そしてよいお年をお迎えください。

ふき

ふき

わき道より道さんぽ道 笛を吹いたら風の道

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