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2F/当番ノート

降ってわいた ともぐらし

当番ノート 第2期

この原稿を書いているのを二段積みのダンボール箱の上から眺めている黒猫もどきが今日から始まるコラムの主人公の煙(ケムリ)です。煙は私の母が飼っていたのですが手放さざるを得なくなったため二ヶ月前に私の住む東京都谷底へやってきました。私の居ぬ間に行われた母と妹による密談で既に私が引き取ることに決定しており「谷底はペット禁止だから」と言っても聞く耳を持たず「ふきが連れて行かなかったら保健所に……」と半ば脅され詰め寄られ今に至ります。そのため私は煙がニャオンと甘えた声をあげれば心臓が凍りつきフローリングを走れば胃がぎりりとする毎日を送っています。

こう書くと猫嫌いのようですが、幼い時から猫がごろりごろりとしている家で過ごしてきたので(煙で六代目です)接し方は心得ています。一人暮らしを始めてから猫を飼おうかと考えたこともありました。しかし、寿命を考えた時、順当にいけば猫が私より先に死にます。冷たくなった猫の亡骸を持って途方に暮れる私がそこにいます。ペットの死が怖いとかそこから立ち直れないとかではなく、魂の抜けたその物体をどうしていいか分からないのです。今までにも幾度となく動物との別れがありましたが、亡骸はすべて庭の隅に埋葬しました。もし賃貸アパート住まいの私が猫の死を看取ることになったら、保健所に引き取ってもらうかペット霊園で火葬するかのどちらかになるのでしょうが、気が進みません。死後私達は火葬され骨壷に納められ墓に安置されますが、壷の中に閉じ込められたまま自然に還れないのはなんだか窮屈そうだという思いが私にはあり、猫も同様、土に埋めてあげたいのです。そのような理由から、庭がある家に住むまでは命有るものとは共に暮らさないと決めていました。にもかかわらず、今、私の部屋に猫が居る、ごろごろ喉を鳴らしてそこに居る。先が思いやられる初冬です。

=^. .^= 今週の猫本―猫が死んだらどうしよう―

わたしのねこメイベル (おはなしプレゼント) ジャクリーン ウィルソン (小峰書店 )

わたしのねこメイベル (おはなしプレゼント)
ジャクリーン ウィルソン
(小峰書店 )

 先ほど話したように私は猫が死んだら土に埋めたいと思っているのですが、この本の主人公ヴェリティは、暗くて汚い土の中はかわいそうだと考えています。飼い猫メイベルが死んだ時、学校で古代エジプトについて学んでいたヴェリティはメイベルをミイラにすることを思いつきました。ミイラにすれば大好きだった猫とずっと一緒にいることができると考えた女の子のお話です。
ヴェリティがミイラを作ろうと家にある材料で奮闘するくだりに小さい人は大喜びですが、世の母親ならば悲鳴をあげるだろうと、一人にやりとしてしまいます。
死をテーマとして扱っていますがしめっぽくならずユーモアにあふれている魅力的な一冊です。

ふき

ふき

わき道より道さんぽ道 笛を吹いたら風の道

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